マシュー・ボーンのドリアン・グレイ@オーチャードホール

イギリス初演時の感想を探してみると、いささかマシュー・ボーン作品にしてはパッとしないものが並んでいたので「うーんどうしたものか」とは思ったものの、彼の「スワンレイク」を通うほど見た人間としてはやはり来日公演を見逃すわけにもいかないので、UKキャストで見て来ました。まあUKキャストといっても主演のドリアン・グレイとバジル、ドッペルゲンガーの3人以外はすべて日本人キャストなんですよね。ダンサーだからみんなスタイルはいいんだけど、それでもアジア系と欧州系の見た目の違いは歴然で……うーん、全員UKキャストで見たかった、と思いましたね。

18禁のスキャンダラスなダンスが売りになってたのでどんだけエロいのかと期待していたんですけども(コラ)。確かに男ふたりの濡れ場ダンスなんかもあったりするんだけど正直に言うと「思ってたんと違う……」って感じでした。なんていうかガチムチ坊主とガチムチ髭のふたりが絡みあう演出が直接的過ぎて。下世話な表現で例えるなら、スワンレイクの耽美なBL風ファンタジーを見てマシュー先生の次回作を期待して見に来たら、ガチムチのハードゲイポルノが出て来ました!」みたいな感じです。これ、せめて主演のドリアン・グレイがロン毛だったら。オタク女子受けする中途半端な長さのセクシーなロン毛だったら多少中和されたと思うんですけども。多分多くの日本人女性にとって坊主頭のガチムチダンサーに萌えは無いんです……うん、その筋の男性にはこっちのほうがいいんだと思うんですけども。

終盤、錯乱したドリアン・グレイはセフレを一人殺し、さらにバジルも……という感じで、終盤のダークさはちょっと「Highland Fling」を思い出したり。ドリアンの部屋にあるポートレイトも目を潰したり部屋全体もゴスっぽく変化したりという、この辺のギョッとする感じはまあ嫌いじゃないんだけども、ちょっと全体的には物足りないなあ、そういえばもう一回「Highland Fling」見たいなあ、なんてことを思ったりしました。

http://hpot.jp/dorian_gray/
原作:オスカー・ワイルド「ドリアン・グレイの肖像」
翻案・演出・振付:マシュー・ボーン
音楽:テリー・デイヴィス
美術:レズ・ブラザーストン
照明:ポーリ・コンスタブル
映像:マーク・グリマー

キャスト
ドリアン・グレイ:リチャード・ウィンザー
バジル:クリストファー・マーニー
ドッペルゲンガー:アダム・マスケル
皆川まゆむ、大野幸人、森川次朗、鈴木陽平、木原浩太、原田みのる、矢島みなみ、谷古宇千尋、安村圭太、鎌田真梨

STORY(公式より引用)
若き青年ドリアン・グレイは、ファッションカメラマンのバジルによってその美しさを見出される。カメラを向けられ最初は戸惑うドリアンだが、次第に快感を覚え、自分の美しさに陶酔するようになる。彼に目をつけたファッション誌のカリスマ編集長のレディHにより、ドリアン・グレイは一躍スーパーモデルへと上り詰める。もてはやされ、数々のセレブリティと肉体的関係を持つ。ショー・ビジネスのデカダンスに溺れ、全てを手に入れたかのようなドリアン・グレイ。しかし成功とは裏腹に、彼の心には次第に暗雲がたちこめる。美しくあることにとりつかれ、ドリアン・グレイの魂は退廃していた。カメラを向けられる事を拒むようになり、彼の元から一人、また一人と去って行った。追い詰められたドリアン・グレイの先にあるのは、破滅へと続く暗い道だった―。