パシフィック・リム

いやーすごかった。
すごすぎて笑えるレベルのすごさでした、パシフィック・リム。なんか書きだすと頭の悪い感想しか出てこなくて、いま冒頭で3〜4回書き直してたんですけど、町山智浩さんの解説(の書き起こし)も「気分が小学校3年生になる」って書いてあってああ、と納得しました。これはね、人を子供に戻す映画ですよ。いい意味で頭が悪い。「みんなでちからをあわせて怪獣をやっつけろ!」っていうシンプル過ぎるくらいシンプルな映画でした。


もう、本当に特撮を見て育った子供の人形遊びがそのまんま高解像度CGになって出てきたような、ひたすら巨大ロボと怪獣がガッシャーンガッシャーンドッカーンと殴り合って戦う、そんな映画です。特撮で育った男子やロボットアニメで育った男子は胸が熱くならずにはいられないんじゃないでしょうか。私なんかは特撮にハマったこともなく、ロボット物もガンダムエヴァパトレイバーグレンラガンあたりを見た程度なのでそんなにこのジャンルに思い入れがある人間ではないのですが、それでも充分に楽しめる映画でしたよ。

もう、なんてったって、巨大ロボが怪獣に出会った瞬間にミサイルとか使わずにいきなりどつきあいに行くのがね。「( ꒪ω꒪) !!!殴るんだ!!!」ってなって、思わず笑いましたよね。どうやら怪獣の体液による汚染を極力避けるために、という理由で銃火器じゃなくて肉弾戦を選択してるという設定はあるようなのだけど(1回しかみてないしパンフも読んでないのであやふやですが)、それにしたってこの重量感たっぷりの巨大ロボがね、宙を舞ってズワッシャーーーーンって殴りにいくの見たらね、それだけで笑いますよ。嬉しくて。エヴァみたいに敏捷で身軽な機体じゃないんだもの。ズシーン、ズシーン、ズシーン、って歩く感じの機体なんだもの。たまりませんよ。

さらに「もうダメだ! ピンチ!」ってなった時に「まだ手がある!」みたいな感じで出てくるのがチェーンソードだったり、必殺技が
「ロケットパーンチ!」
だったりして、もう……デルトロ監督の「わかってらっしゃる」感は異常です。あ、ちなみに「ロケットパンチ」は吹替版で、字幕だと「エルボーロケット」だそうですけど。まさかこの平成も四半世紀をすぎたこの21世紀に、新作映画で「ロケットパンチ」の単語を聞くとは思いませんでした、本当に。

「ストーリー? そんなもんは飾りですよ」といわんばかりに心情描写は最大限カットしてありますし、主役コンビのローリーと森マコ以外の登場人物の過去や背景はまったく語られていないけれど。それでも脇キャラの立て方がうまくて、「ああ、この人はきっとこんな感じのキャラ」ってのがそのスタイリングだけで解るという。漫画読みや小説読みの人なら、もうその見た目だけでバックボーンを過去に読んだ作品からなんとなく類推することができる、そんな雰囲気でした。

ちょっとマッドサイエンティスト気味なオタク博士ふたりや、怪獣の死体を売買する闇商人なんかもう本当にサイドストーリーとして最高なんだけど。チェルノ・アルファのパイロットがロシア人夫婦(しかもなんかすげえ凄みのある姐サン女房)とか、クリムゾン・タイフーンが中国雑技団的な三兄弟とか、なんかもうそれ設定だけで美味しすぎて! 映画本編中ではほとんど描写されてないにもかかわらず、色々おいしいエピソード本当はもってるんやろ、ちょっとここに出せや!(机叩く)みたいな気分になるわけです。もうほんと彼らの物語が知りたくて知りたくて、もう何なら公式でなくても構いません、二次創作でいいから下さい! くらいの気分になるわけです。人が同人誌を欲するのはこんな時なのねと思いました。薄い本を、誰か……!

あ、ちなみにIMAXで初めて3D見たんですが、いやびっくり。ワーナーやTOHOで見た3Dとは桁違いに見やすくてキレイでした。大音響なので小さな子供はちょっと連れていけないなと思いましたけど、今度から3D観るときはちょっと足伸ばしてIMAXで見てやる……と思いましたねえ。


監督/脚本:ギレルモ・デル・トロ 脚本:トラヴィス・ビーチャム 原案:トラヴィス・ビーチャム
出演者 チャーリー・ハナム 菊地凛子 イドリス・エルバ チャーリー・デイ ロバート・カジンスキー マックス・マルティーニ ロン・パールマン

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