プレーンズ

4歳の娘連れて見に行ってきました。が、うーん、どうなんだ、これは。
「カーズ」の二番煎じとは言われてるものの、製作総指揮はジョン・ラセターだし、ストーリー原案にもラセターの名前入ってるし、ピクサー作品じゃないけどまあディズニーだしそんなにヒドイことにはならないんじゃないか……最近のディズニーアニメ映画はシュガー・ラッシュやらラプンツェルやらどれもワタシ好みだったし期待してもいいんじゃないか……と思いながら観に行きましたが。
うーん。どうなんだ。これは。
4歳の娘はそれなりに楽しんではいましたが、私は「ラセターさん……本当にこの脚本でゴーサイン出したの……」とモヤモヤしっぱなしでした。


何がつまらないって、脚本がなんのヒネリもない。個人的には「カーズ(第一作)」もピクサーにしてはひねりがねえなと思いながら見ていたのですが、この「プレーンズ」に比べたらそれでもまだストーリーに起伏があってそれなりに見ていられた。「高所恐怖症の農薬散布飛行機が世界一周レースに出る」っていう設定そのものだけ聞けばちょっと面白そうで、一体どんなウルトラCを使って無理な設定を可能にするのかと思いきや、「ちょっと努力したらなんとなく可能になりました」というレベル。ダスティは初期設定の時点でもう「5位以上が通過できる予選で6位にはランクインできる実力」を持ってて、それにちょっとスキッパーがアドバイスして訓練したら世界一周レースで戦えましたよ……ちょっと気合いれたら高所恐怖症も克服できましたね……という状態なので、まったく「おお! そんなアイデアでこの苦境を突破!」みたいなサプライズが無いのです。

主人公はもともと割と善人で、ディズニー/ピクサー作品にありがちな「最初はちょっと傲慢で嫌味な主人公が、色々あって挫折して改心し成長してみんなに愛される」といったこともない。「トイ・ストーリー」のバズも「カーズ」のマックイーンも、一度価値観を完全に破壊されてそこから成長するのですが、「プレーンズ」のダスティは最初からまあいい奴だしちょっとしか成長しかしてない。そもそも農薬散布用の飛行機ってそんなに長距離飛べるのとかスピード出せるのとかそういう物理的な問題はもう最初から障害として機能していません。あまりに順当にレースで勝ち進んでしまうものだから、克服するべき障害や壁のレベルがあまりに低すぎるというか。

まあ脚本のことは一旦おいといて。レースや訓練時の飛行シーンは大画面でみると迫力あるスピード感と景色の美しさで楽しめます。子供向けアニメとしてTV放映で見る分にはまあアリだな、とは思いますが、ピクサーの優れた作品や「シュガー・ラッシュ」などのように「大人が見ても面白い、泣ける」といったタイプの作品ではなかったなー、という感想でした。

あとエル・チュパカブラの吹替が俳優の井上芳雄さんなんですが、どうなんでしょうねこれも。いやまあ知らずに見ていればたぶん気にならないと思うんですが、明らかに彼のキャラクターじゃない役柄なので、なぜこのキャスティング……という疑問が拭えません……。歌える若手ミュージカル俳優にしたかったのなら、StarSのメンバーでもむしろ浦井健治くんのほうがこういうおバカキャラは似合ってるはずなのになぜ、と。バカを演じる浦井くんは本当に輝いていてこういう役は得意でしょうに、真面目な好青年か不幸を背負った皇太子役か悲運の天才か、といった役柄の井上さんがエルチューやってるの聞くとなんかもう「キャラにあわない軽妙な役を無理にやってる感」がファンの耳には感じられて、なんかもう心配で落ち着きません……! 「が、がんばって……!」とつい母親視点でハラハラしながら観てしまいますよ……。まあアレですかね、ディズニー次回作の「アナと雪の女王」ががっつり歌のあるミュージカル的な作品だから、ヒロインの相手役候補という意図のあるのかもしれませんが。それにしても、なー。

http://www.disney.co.jp/planes/home.html

【あらすじ】農場で働く農薬散布機のダスティは、大空の世界一周レースで優勝するという“かなわぬ夢”を抱いていた。彼はスピードを競うために作られたレース用飛行機ではなく、おまけに高所恐怖症のため低空飛行しかできないのだ。それでも夢を諦められないダスティは、猛特訓と仲間のサポートによって世界一周レースへの出場権を手に入れる。トップ・レーサーたちが集結する中、様々なハンディを負ったダスティに勝ち目はあるのか?

監督:クレイ・ホール
製作:トレイシー・バルサザール=フリン, p.g.a.
製作総指揮:ジョン・ラセター
ストーリー原案:ジョン・ラセター/クレイ・ホール/ジェフリー・M. ハワード
脚本:ジェフリー・M. ハワード
作曲:マーク・マンシーナ

【日本語キャスト】
ダスティ・クロップホッパー:瑛太
エル・チュパカブラ井上芳雄
ブラボー:山口智充
スキッパー:石田太郎
チャグ:天田益男
ドッティ:甲斐田裕子
イシャーニ:小林沙苗
ブルドッグ:白熊寛嗣
レッドボトム:塾一久
リップスリンガー森田順平
エコー:中田隼人
ローバー:大川透
ネッド/ゼッド:我孫子
ブレント・マスタングバーガー:中村秀利
コリン・カウリング:花輪英司
スパーキー:河本邦弘
フランツ:林勇
フリーゲンホーセン:間宮康弘