柿喰う客「世迷言」@本多劇場

Ustreamで女体シェイクスピアシリーズの作品などチラ見したことはありましたが、柿喰う客の舞台は初見です。本多劇場初進出だし、篠井英介さんや富岡晃一郎さんも客演するし、ということで今回こそはとチケット取りました。
人の通る通路と大きなハシゴが配置された抽象美術、これは後方席の上の方からみると「世」の形になっているらしい。衣裳はホストっぽいカラーのスーツと、「姫」はゴシック系のワンピース。(このへんのビジュアル面についてはぴあのニュース記事の舞台写真で確認できます)小道具は鳥かごのみで、鼓や首に見立てるなどの演出が有り。ストーリーは「竹取物語」や「御伽草子」あたりをベースにした、「人」「獣」「鬼」が入り乱れて因果がめぐる血生臭い物語。演出は能や歌舞伎の所作を取り入れた様式的な動きもあり、一時の山の手事情社を思い出させるようなテイストだったり、野田秀樹作品やつかこうへい的な要素もあったり、なんというか80〜90年代小劇場のあれこれに影響を受けた感じの懐かしさ。ちょっと前の世代の小劇場演劇をもうひとつ若い世代がリミックスしたような印象を受けたのですが(毛皮族の旗揚げ公演を見た時にも「若い世代が現代の言語感覚でアングラ演劇に挑戦した」という印象を受けたのだけど、それを思い出したり)、主宰の中屋敷さんは1984年生まれで高校時代からの演劇バカ、というのをあとで知ってちょっと納得。

様式的でケレン味のある演出は好き嫌いがきっぱり別れるだろうけれど、演出家の描きたい世界はこうだ!というのがものすごく明確に伝わってくる感じで、そこはとても好感が持てました。そして篠井英介さんの所作やセリフ回しが完璧すぎて、おそらく演出家が役者に求めるレベルって本来はここなんだろうな、と思いました。そしてまだそこに到達できてない役者が他にいることが気になってしまうという……。名指しは避けますが、あの役とあの役がもう少し観客を圧倒できるだけの魅力があればのめりこめたのになあ、とちょっと残念に思ったのが正直なところです。ただまあ黙阿弥モノの歌舞伎やギリシャ劇を思わせるような古典風の物語はとても演劇的で面白く見ましたし、舞台写真として絵になるような場面も随所に見られ、なかなか刺激的な作品でした。90分という短い上演時間なのも色んな意味で助かります(笑)アフタートークも見たかったけれど娘のお迎えがあるので撤収。次回作も楽しみです。