鳳凰祭三月大歌舞伎 昼の部

今回の目的はなんといっても玉三郎さんと七之助くんの「二人藤娘」。正月の松竹座で見られなかったのが悔しかったので、早々に東京上演したくれるのはありがたい限りです。他の演目は「壽曽我対面」「身替座禅」「封印切」と割とおなじみのものばかりだったので、3階席からでガマン。


朝バタバタしてて「壽曽我対面」に間に合わなかったので、今回は「身替座禅」から。右京が菊五郎さん、奥方玉の井吉右衛門さんで、同じ孫を持つ「おじいちゃんコンビ」での上演でしたね。どちらも大ベテランだけに面白く観ました。しかしこれ観るとどうしても勘三郎さんの身替座禅を思い出してしまって、「あーコケ方がやっぱり違うんだなー」なんて思ってしんみりしてみたり。ちなみに侍女を演じてたのが壱太郎さんと尾上右近くんという若手コンビでした。右近くん子役の頃からうまかったけど育ったなあ…! そして壱太郎くんもキレイでした。

封印切は藤十郎さんと扇雀さん、こちらも大ベテランですね。若者の若気の至りによる悲劇にはとても見えない……配役となっていますが……二枚目というにはちょっとふっくら……ていうかおじいちゃ……ゲフンゲフン……まあそこはそれ。上方のこの辺の演目は若い役者では出せない味もあるわけで……うん、見た目年齢と技術の兼ね合いは難しい……

で、二人藤娘。待ってました!
完全暗転からパッと舞台全体に照明が当たると、舞台にはクリーム色の衣装の七之助くん、花道には黒い衣装の玉三郎さんが佇んでいるという配置。もうこの瞬間に客席からため息がもれる美しさ。小道具の藤の花の枝も微妙に色合いが変えてあるのですよね。美しい……! 七之助くんの化粧もいつもとちょっと違い、玉三郎さんの指導が入っているのか、ふたりがよく似ています。冒頭は笠があるので三階からだとどっちがどっちだかわからないくらい似ちゃってる。うわあ。きれい。
約20分と短い演目ながら、この後も橙色&若草色のツートンカラー→藤色→赤、と衣装を変えながらの舞踊。どの衣装もうっとりするほどキレイ。藤の精がふたりでお酒を酌み交わしながらきゃっきゃウフフと恋バナに花を咲かせる女子会といった流れで、美しくもフワフワした可愛らしい空気感。この辺の雰囲気は蛇の化身である二人娘道成寺とはまったく違うところ。まったく緊張感を感じさせないトロンとした雰囲気でありながら、完璧に動きが揃っているというこの空気感ときたら……。ふたりが動きを揃えたり、少し高さを変えて同じ動きをしたり、対称にうごいたり、という絶妙のユニゾンが、もう本当に美しくて、ただただ見入っては、ため息。いやはや、眼福ってこういうことを言うのだなあ! テレビ放映で映像は観ていたものの、生の迫力は全然違った。はあ、びっくりするくらいキレイでした……。舞台写真の買える終盤日程でチケットをとらなかったことが悔やまれますね……

二人藤娘はさすがに人気のようで、幕見席も札止めになってるようです。また近いうちに再演があるといいですね……というかシネマ歌舞伎でぜひ収録していただきたい……!

http://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/2014/03/post_73.html

歌舞伎座新開場柿葺落 鳳凰祭三月大歌舞伎

一、壽曽我対面(ことぶきそがのたいめん)
◆歌舞伎の役柄が勢揃いする華麗な舞台
 工藤祐経の館。富士の巻狩りの総奉行に任じられた工藤が祝宴を催し、多くの大名が集っているところへ、曽我十郎と五郎の兄弟が対面を願い出ます。彼らは工藤が討った河津三郎の忘れ形見。今にも父の仇を晴らそうとする五郎を十郎が止めると、工藤が仇討ちよりも源氏の重宝友切丸の探索こそが重要と説きます。そこへ兄弟の家臣である鬼王新左衛門が駆けつけ、行方不明となっていた友切丸を工藤へ差し出します。工藤は兄弟に討たれる覚悟で狩場の通行証を与え、再会を約束して別れるのでした。「曽我狂言」の中でも特に人気の高い、華やかな祝祭劇をご覧ください。

二、新古演劇十種の内 身替座禅(みがわりざぜん)
◆恐妻家の夫と嫉妬深い妻の喜劇性あふれる松羽目舞踊
 大名の山蔭右京は、愛人の花子がはるばる都へやって来たことを知り、なんとか会いに行きたいと思案していますが、奥方の玉の井が片時もそばを離れません。そこで右京は一計を案じます。玉の井に懇願し、仏詣に出かける代わりに持仏堂で一晩座禅をすることを許された右京は家来の太郎冠者に座禅衾を被せ、花子の元へと向かうのですが、それを知った玉の井は…。狂言をもとにしたユーモアあふれる舞踊劇をお楽しみください。

三、玩辞楼十二曲の内 封印切(ふういんきり)
◆恋しい女のために身の破滅をまねく男の悲しい行く末―
 飛脚問屋亀屋の養子忠兵衛は遊女梅川と深い仲。身請けの手付金を払ったものの、後金ができずにいる忠兵衛ですが、井筒屋へ飛脚仲間の丹波屋八右衛門がやってきて自分が梅川を身請けすると言い出します。八右衛門が並べ立てる悪口に耐えかねた忠兵衛は、腹をたてて言い争う内に、武家屋敷へ届けるはずの金三百両の封印を切ってしまいます。公金の封印を切れば、死罪は確実。覚悟をきめた忠兵衛は、その金で梅川を身請けすると、二人で大和国へと落ち延びていくのでした。上方和事の名作をご堪能ください。

四、二人藤娘(ににんふじむすめ)
◆人気舞踊に新たな趣向を凝らした美しい一幕
 藤の花房のもとに美しい娘姿の藤の精たちが現れ、男心のつれなさを嘆きつつ恋する乙女心を踊ります。好きな男を松に喩えて酒を飲むうち、ほろ酔いの姿を見せ、続いて、気分を変えて賑やかな手踊りを踊りはじめますが、やがて日も暮れ、いつしかその姿を消すのでした。二人の藤の精による、華やかで幻想的な舞台にご期待ください。