ナイロン100℃「パン屋文六の思案〜続・岸田國士一幕劇コレクション〜」@青山円形劇場

岸田國士の戯曲の中から「ママ先生とその夫」「麺麭屋文六の思案」「かんしゃく玉」「世帯休業」「恋愛恐怖病」「長閑なる半目」「遂に『知らん』文六」をコラージュした短編オムニバス。ほぼ劇場は円形に近いんだけど、正面は1ブロックほど客席を潰して役者が出入りする背景セットがある。 この舞台写真この舞台写真がわかりやすいかな。他にも舞台上や客席上に月や星がモチーフのモビールが吊ってあって、甘すぎなくてほどよい可愛らしさの素敵な空間。客席上には2面の大きなスクリーンもあってタイトル映像など。原稿用紙を切り絵にしたようなオープニング映像はいつもの上田正樹氏のものだけど相変わらずカッコいい。

まあ、とにかく豆千代さんが監修した衣裳がお洒落で素敵だこと。女性は洋装ブラウスの上に着物を着付けたり、襟元にレースがあしらわれていたり。着物自体もモダンで素敵な柄のものが多いけど、帯留めや半襟などの小物使いも素敵。久しぶりに着物を着たくなってしまうなあ。男性もネクタイ+シャツが襟元からのぞいていたり、着物の上からサスペンダーつけたりといった和洋折衷なスタイリング。男性も女性も3割増しでかっこ良く見える不思議。あくまで集団の中のひとり扱いではあったけど、客演の緒川たまきさんの着物姿の殺傷能力の高さとかね……! あの姿でもっと隠微な何かが観たいです先生、と思いましたよ……(表情が見えづらい写真だけど、舞台写真でいうとこんな感じ

戯曲はどの程度いじってるのかはわからないけど、大正〜昭和初期あたりの作品なのかな、その当時の言葉遣いってやっぱり今とちょっと違うんだろうなーという印象。あの言葉遣いもそうだし、着物での身のこなしなんかもそうだけど、不自然に見せないための目に見えない役者の努力が結構大きかったんじゃないのかなーと思わせる舞台でした。人物描写や会話劇としては現代劇なんだけど、言葉遣いや衣裳は一種の時代劇だもんなあ。やっぱりケラさんの戯曲に比べると笑いの要素は少ないし、ちょっと演劇ファン以外に薦めるのはためらわれる内容ではあったけど、戯曲の古さを感じさせない工夫が多くて面白い内容でした。でもやっぱりちょっと3時間強は長いかなあ、オムニバスなんだからあと1〜2本けずって2時間にまとめてほしいなあと思いました。青山円形劇場の椅子はほぼパイプ椅子みたいなもんだから、3時間ではお尻が痛いです……

NYLON100℃  41st SESSION 『パン屋文六の思案〜続・岸田國士一幕劇コレクション〜』

作:岸田國士
潤色・構成・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
衣裳監修:豆千代
振付:井手茂太イデビアン・クルー
音楽:鈴木光介、美術:加藤ちか、照明:関口裕二、音響:水越佳一、映像:上田大樹、ヘアメイク:宮内宏明、演出助手:山田美紀、舞台監督:福澤諭志
出演:みのすけ 松永玲子 村岡希美 長田奈麻 新谷真弓 安澤千草 廣川三憲 藤田秀世 吉増裕士 眼 鏡太郎/猪俣三四郎 水野小論 伊与勢我無 菊池明明 森田甘路 木乃江祐希/萩原聖人 緒川たまき 植本 潤 小野ゆり子 志賀廣太郎

日本現代演劇の父、岸田國士の短編8作をポップに再構築し、大好評を博した『犬は鎖につなぐべからず』から7年。ケラリーノ・サンドロヴィッチナイロン100℃が再び岸田名作群のコラージュに挑む。前作に引き続き、着物監修はモダン着物のカリスマ・豆千代女史、振付は脱力ダンスの名手・井手茂太氏(イデビアン・クルー)。円形劇場を縦横無尽に駆け巡るパノラミックな和装劇。乞、御期待。

http://cubeinc.co.jp/stage/info/nylon41th.html
http://www.sillywalk.com/nylon/info.html