劇団☆新感線「蒼の乱」@シアターオーブ

天海祐希主演作、といっても平将門をモチーフにした新作ということで天海祐希松山ケンイチのW主演といった内容でしたね。大陸から渡ってきた渡来衆の蒼真と、坂東武者の将門小次郎が関東で朝廷に対して反乱を起こす、といったテーマの物語。そんなに派手なネタバレはしませんが、これからご覧になる方は以下閲覧注意で。

平将門といえばどうしても「帝都物語」のイメージから怨霊のイメージが強くて、さぞドロドロした話に……と思いきや、各種媒体のインタビューなど見ると「久しぶりに爽やかないのうえ歌舞伎」みたいなコメントが多く、「はて?」と思っておりました。蓋を開けてみるとこの将門小次郎はごくごく単純で素直な青年として描かれており、怨霊のエピソードは朝廷からの攻撃を防ぐための関東民の知恵、といった印象のストーリーとなっていて「なるほどなー」と。

まあここ数作のいのうえ歌舞伎から比べれば確かに陰惨さは薄め。とはいえ汚い大人の陰謀や人心操作はけっこうあるし人もバタバタ死ぬので、この話を爽やかと言い切ってしまうのはそれはそれでどうなんだ、逆に新感線の標準値ってそんなに今血生臭いことになってんのか、という気も。ストーリーはそれなりに面白く観たのだけど、やっぱりちょっと気持ちよくカタルシスを得るにはやや冗長というか、せっかく「うぉぉこういう展開きたかあぁぁ」と興奮した後にゆるいシーンが続いてテンションが下がったり、というとこが何箇所かあって、「もうちょっと一気になだれ込んでくれよぉぉう」と思ったりしましたね。そして3時間40分はやっぱりちょっと長い。なんというか、このサイズの上演時間の作品って、こっちもこの長さにあわせて体調と気持ちを作らないと気持よく芝居に乗れないんだなあとちょっと思いました。歌舞伎とか再演モノとかだとどこでどういうシーンが来るかわかるので集中力をうまく配分できるのだけど。

天海祐希さんは前半ちょっと迷いや悩みのあるゆらぎキャラなんだけど、覚醒後のビシっとした姿はさすがのひとこと。「そうよ、この男前な天海姐さんが見たかったのよ!」なカッコよさ。もうなんなら徹頭徹尾迷いの無いキャラがみたいよ。「朧の森に棲む鬼」とかいっそ天海姐さんで再演したらどうなんだろう。リチャード三世やモンテ・クリスト伯でもいいけど。徹底的に悪いキャラとかも観たいなあ。
松山ケンイチさんは二本目の舞台とは思えない安定感。まああて書きでトクしてる部分もあるにはあるだろうけど、しっかりとあの大舞台のセンターに立って見劣りしないのは素晴らしい。天海さんと並んでも主演オーラでてるしなあ。やっぱり大河で主演張ってたのは伊達じゃない。

まあ驚いたのはみんな言ってるけど早乙女太一くんだよね。今までも殺陣の美しさはずば抜けてたけど、これまではやっぱりちょっとセリフ回しが残念で、「セリフが無ければカッコいいのにねー」な感じであった。「無口な暗殺者」ならカッコいいけどそれ以外の役だとなー、という状態だったのが、ここへ来てセリフ回しがうまくなってきていて大変素晴らしかった。うん、これは今後がとても楽しみだね! 弟の早乙女友貴君との一騎打ちもすごい速さの殺陣で美しかったわー(ちょっと息が合いすぎて段取りが見えてしまうところはあったけど)。

平幹二朗さんもまあさすがというかなんというか、80歳とは思えない存在感と威圧感だよなあ。常世王は見た目がまるでガンダルフかダンブルドアだったよね……。最近の中島脚本だとこの「ベテラン俳優枠」ってどうしても悪の親玉、黒幕、みたいな定形ポジションになりつつあったんだけど、今回は常世王と奥の大殿の二役で、どちらも一筋縄じゃいかない曲者な感じがありつつキャラを演じ分けててちょっとお得な感じでした。

高田聖子さんも最近ちょっと悪役が続いてた気がしたけど、今回は蒼真に仕える善良な女性の役で、ちょっと意外。どっかでダークサイドに堕ちる気がしてならなかったけど、そのまま完走したなあ。完全にWarHorseとライオンキングのパクリとしか言いようのないじゅんさんの馬役や、ジャック・スパロウみたいな海賊役の粟根さんは相変わらずの安定感。劇団ファンとしてはもう少し前面に……とも思うけど。パロディといえば一番笑ったのは困窮した農民の歌がまんま「エリザベート」のミルクだったこととか、レミゼのワンデイモア意識したような場面だったりとか、ジーザス・クライスト・スーパースターもあったかな。なんかもっと合ったような気がするけれど。

そういえば「蝦夷」とか「アラハバキ」とかのキーワードが続々と出てきて、「アテルイ」と地続きの世界観なのがちょっとグッときましたよね。「かつて朝廷に刃を向けた男がいた」みたいなセリフがあるとあの染五郎さんの阿弖流為思い出して「おぉぉ……」ってなりますもんね。はー、アテルイ再演しないかなあ、あれ名作だったのになあ。

劇団☆新感線 いのうえ歌舞伎「蒼の乱」
http://www.aonoran.com/

【スタッフ】脚本:中島かずき、演出:いのうえひでのり
美術:堀尾幸男、照明:原田保、衣裳:小峰リリー、音楽:岡崎司、作詞:森雪之丞いのうえひでのり、振付:川崎悦子、音響:井上哲司、音効:末谷あずさ、殺陣指導:田尻茂一、川原正嗣、ヘアメイク:宮内宏明、小道具:高橋岳蔵、特殊効果:南義明、映像:上田大樹

【キャスト】天海祐希松山ケンイチ早乙女太一平幹二朗梶原善森奈みはる粟根まこと、高田聖子、橋本じゅん、 右近健一、 河野まこと、 逆木圭一郎、 村木よし子、 インディ高橋、 山本カナコ、 礒野慎吾、 吉田メタル、 中谷さとみ、 保坂エマ、 早乙女友貴、 川原正嗣、 武田浩二、 藤家剛、 加藤学、 川島弘之、 安田桃太郎、 井上象策、 菊地雄人、 南誉士広、 熊倉 功、 岩崎祐也、 成田 僚、 穴沢裕介、 安部誠司、 石井雅登、 蝦名孝一、 長内正樹、 熊谷力丸、 常川藍里、 原慎一郎、 生尾佳子、 上田亜希子、 後藤祐香、 齋藤志野、 鈴木奈苗、 中野真那、 森 加織、 吉野有美

【ストーリー】(公式サイトより引用)
時は平安時代。都では中央集権の政のもとに朝廷では貴族たちが贅沢三昧にくらし、地方の民たちには税が重く課され貧しい暮らしを強いられていた。不満のたまる地方の民たちは小さな叛乱を起こしては貴族によって封じられていた。あるとき、左大臣の屋敷で国の行く末を占っていた渡来衆の一団が、国家大乱の卦を出したことを口実に武士たちに襲われた。窮地に追い込まれた彼らの長である蒼真(天海祐希)と蒼真の親友、桔梗(高田聖子)は、坂東から京に出てきていた将門小次郎(松山ケンイチ)に救われる。蒼真と小次郎の運命の出会いである。二人はその運命に導かれ夫婦となり、小次郎の故郷・坂東の地を目指し都を後にする……。
 そこに都を騒がす大盗賊、帳の夜叉丸(早乙女太一)が現れ、蒼真達を海賊・伊予純友(粟根まこと)のもとへと連れていく。純友は、実は蒼真たちにとっては渡来の仲間。彼は小次郎に、国をひっくり返してともに新しい政府を立てようと誘うのだった。その様子を伺っていたかのように、純友の元に現れたのは朝廷に仕える弾正淑人(梶原 善)。何を企んでいるのか、単身、宿敵の海賊の頭領・純友に会いに来たのだった。
一方、坂東に戻った小次郎と蒼真は、彼の叔父と国司、その妻・邦香(森奈みはる)らの蛮行に坂東の民は苦しめられ続けていたことを目の当たりにし、小次郎の“生涯の友”である相棒・黒馬鬼(橋本じゅん)と一緒に彼らを一気に蹴散らす。そこに再び夜叉丸が現れて今度は小次郎を蝦夷の大王・常世王(平 幹二朗)に会わせたいという。常世王の隠れ住む山奥で、王は小次郎に「この東国に小次郎が望む国を作ってほしい」と語る。
 その話に共感した小次郎は純友と常世王と共に反乱軍を組織し長となり“将門新皇”として朝廷と戦うが、ある出来事をきっかけに行方をくらましてしまう。そこで妻である蒼真が小次郎の意志を継ぐ者として、“将門御前”と名乗り、反乱軍を率いていくことになるが……。