子供のためのシェイクスピア「ハムレット」@KAAT大スタジオ


出典:北九州芸術劇場ホームページ

このシリーズももう20周年なんですね。97年の「リア王」を見た時になんて素敵な舞台だろうと印象に残り、その後もグローブ座でやってた頃に何本か見ています。当時「いつか子どもができたら連れてきたいなあ」とぼんやり思っていました。「ハムレット」の初演は見逃していたので、この演目は今回が初見。KAATの公演は高校生以下1000円というリーズナブルなチケットがあるので、試しに4歳の娘を連れて行ってみました。KAATの大スタジオも初めて入ったのですが、シアタートラムに近いサイズ感ですね。

セリフの枝葉の装飾を落としていたり、墓掘りのシーンもなくなっていたりと、かなりコンパクトに刈りこんで2時間にまとめていました。冒頭に有名な「このままでいいのか、いけないのか、それが問題だ(To be, or not to be.)」の長台詞の部分を持ってきて、ハムレットの心の中の自問自答を警察の取調室風に演出するなどの遊びもあります。セリフも時々語尾が「〜っス」になったり、返事が「うぃっす」だったりと、若者言葉風にアレンジした部分もアリ。が、同シリーズの他の演目に比べると全体的に遊びの場面が少なく、基本的に9割がたシリアスな進行だったと思います。
今回の作品は子供向けというよりは、シェイクスピア初心者の大人向けに最適な感じの舞台だと思いました。基本は悲劇でシリアスな場面が多いので、子供といっても小学校高学年くらいからが適正年齢かなーと思います。同シリーズの喜劇作品なら低学年から行けるかな、と思いますが。4歳児を連れて行ってはみたものの、正直、「早すぎたんだ……」感がありましたねえ。アニメ映画なんかだと割と集中して90分見る子なんで、「大丈夫かな?」と思ってしまったんですが、さすがにストレートプレイはまだ早かったようです。考えてみればまだ映画ですら「連れて行っても大丈夫かな?」と迷う人もいる年齢の子に、子供向けとはいえ休憩無し2時間のセリフ劇を見せるのは無謀でした。中盤でかなり飽きてだいぶモゾモゾ動いていましたし、もってきたオモチャ触って遊びだす時間もあったり。周りに人がいない席だったのでそれほど迷惑をかけてはいなかった、とは思うのですが……。ていうか暗転の瞬間に「あ、そういえばこの子、暗闇苦手だった」ということを思い出して(←母親しっかりしろ)、ちょっと焦りましたよね。幸い泣くことはありませんでしたけど。まあ案の定というか、チャンバラシーンになると途端に集中して舞台みたりするんで、やはり未就学児にはストレートプレイよりもアクションや歌や踊りのある華やかな舞台のほうが目を引くんだろうなと思いました。

平日ソワレは子供が1割くらいしかいなかったのでやや肩身が狭かったのですが、土日マチネでは子供が多く「うるさい」「集中できない」といった声もTwitterにチラホラみかけました。このシリーズでは子どもの反応も芝居の一部だとは思うのですが、でも子どもの声って確かに集中力をそぐので芝居好きとしてすごく気持はわかるだけに……うーん。平日19時公演とかに「大人限定デー」とかあればいいんでしょうね。

ちなみに終演後に娘に感想を聞くと、一言、「こわかったー」でした。ああ、デンマーク王の亡霊のシーンとか、硬直して見てたもんね……。


「子供のためのシェイクスピアハムレット』」
http://www.kaat.jp/d/hamlet
http://kodomohamlet.jimdo.com
出演:伊沢磨紀、福井貴一、山口雅義、戸谷昌弘、佐藤あかり、若松 力、宮下今日子、斉藤 悠、長谷川祐之、山崎清

作:W.シェイクスピア小田島雄志翻訳による)
脚本・演出:山崎清
照明:山口 暁
音響:角張正雄
衣裳:三大寺志保美
演出補:小笠原 響
舞台監督:堀 吉行
宣伝美術:市川きよあき
イラスト:100%オレンジ
プロデューサー:峰岸直子
制作:千葉乃梨子・福本悠美
  
子どもも大人も夢中になる“子供のためのシェイクスピア”シリーズ

劇作家シェイクスピアは2014年に生誕450周年を迎えます。
450年もの間、多くの人々を魅了し続けたシェイクスピアは、人間の様々な面を描いています。人とはこんなにひどい意地悪なものか、と見せつける半面、人の温かさや優しさもまた示してくれます。だからこそ今の私たちにも共感でき、大人はもちろん子どもたちにも観てもらいたい作品なのです。
そして、「子供のためのシェイクスピア」シリーズは、観客の想像力をかきたてるシンプルな舞台装置、悲劇喜劇を問わず遊び心あふれる演出で、演劇を初めて観る人から、演劇への造詣が深い人まで、幅広い層の観客を魅了し続けています。何よりも年齢を問わず同じ舞台という空間を共有できる、一緒に観られるという本シリーズの特徴は他にはないもので、観劇後の親子、友人との会話のきっかけともなる作品です。

遊び心あふれる、子供のための『ハムレット』 | チケットぴあ[演劇 演劇]
子供のためのシェイクスピア 20周年記念公演「ハムレット」 | 北九州芸術劇場 (舞台写真あり)