「オーシャンズ11」

ジョージ・クルーニー主演映画を宝塚歌劇がミュージカル化し、今回はそれを香取慎吾主演で上演するという企画。キャストがジャニーズやらヅカやら東宝ミュージカルやらテニミュやらお笑い芸人やら、各ジャンルから集まっていて「チケット取れるのかコレ」と心配しましたが、電話予約のみだったおかげでなんとか確保できました。やれやれ。この手の「あっちこっちからとにかく人気のある人集めてきましたー!」的なプロデュース公演って、実際見てみるとがっかりすることが多い気がするのですが、意外にうまいことまとまってたような気がします。

まあ舞台は難解さのかけらもなくベッタベタな商業演劇なんですが、完全に「娯楽作品」に徹していて潔いほどです。映画ではメインとなる金庫破りのアレコレはさすがに舞台では見せ方が難しいのでしょう、だいぶシンプルな見せ方になってました。どちらかといえばダニー・テス・ベネディクトの三角関係のドラマを中心にしたストーリー構成になっていたのは、ヅカ版を踏襲してるからなんでしょうね。まあさすが小池先生、大劇場には慣れてるだけあってシアターオーブの大空間も難なくゴージャスに埋めておりました。群舞シーンも多く満足。
バラエティ番組ではわりとコミカルなイメージのある香取慎吾くんが三の線を封じ、センターにどんと立って「ダンディな大人の男」に徹していました。そして二番手ポジションの山本耕史くんがチョロチョロとコミカルに動きながらそれをサポートする、という構図は、ドラマ「新選組!」のファンならもうそれだけで涙せずにはいられないのではないでしょうか。あの時の近藤勇土方歳三の関係性をそのまんまトレースした上に、こちらは悲劇では終わらない怪盗モノですからね。

ミュージカルだけに随所にダンスシーンがあるわけですが、まあ香取くんのSMAP仕込みのジャケットプレイがサマになること! 歌だけならそりゃあミュージカルチームのキャストの方が上手いのは上手いのですが、舞台上での華はさすがSMAP。バッキバキに踊るシーンではスターオーラを放ってましたねえ。群舞の中をゆっくり歩きまわってタメてからセンターで踊り始めるシーンのカッコよさには不覚にも萌えてしまったんですが、後でパンフみたらここでタメるの香取くんのアイデアだったらしく、やっぱりトップアイドルは違うな!と感心した次第。フィナーレではラスベガスシート(ステージに最も近い位置に設置されたテーブル席。特典付きで39000円)のお客さんたちの方を見ながらジャケットチラッで挨拶してたのがツボでした。香取くんのファンだったらアレだけのために高いチケット代払っても後悔しなかったでしょうね。あの目線ひとつで腰砕けになって帰れなくなってたかもしれません。

山本ラスティが完全に香取ダニーを立てる演技をしてるので、「山本くん本当はもっとできる子なのに!」「もっと前面に出てきて!」と思う一方で「だけどこの香取くんを立てる山本くんの構図、この関係性はこれはこれで美味しい」「気楽なポジションで楽しそうにやってるなー」などと思ったりするわけですが。一方でベネディクト役の橋本さとしさんは、さすがに11人チームの敵役というポジションだけあって、遠慮のないゴリ押し感。まあこちらは主役を立てたりしたらラスボス感なくなるので、これくらいのオレオレっぷりでちょうどいいですね。「夢を売る男」のナンバーでの声量はまあさすが東宝ミュージカルでセンター張ってるだけのことはある!という迫力でした。素晴らしい。

ダイアナはオペラ座の怪人でいえばカルロッタ的なポジションなので、宝塚のトップさんがやる役としてはどうなんだ、きりやん(霧矢大夢)の無駄遣いじゃないのか、と正直ちょっと思いましたけれど。まあでもラストでベネディクトを捨てていくあたりの爽快感はさすが。そしてどうでもいいんですが「きりやんが登場した瞬間」ではなく「ピンスポが当たった瞬間」に一部の客席から大きな拍手が沸き起こり、「よく訓練されたヅカファンの存在感すごい」と感心しました。

中国雑技団役は誰がやるのかと思ったら坂元健児さん。椅子を組み上げた上に立つ雑技とか、見事にこなしてて感心。ラスティの彼女とその父親、脇役の割にうまいなー、あれ誰かなーと思ってキャストチェックしたらフランク莉奈さん&井之上隆志さんでした。ははあなるほど。ライナスやバージル&ターク兄弟あたりのジャニーズJr.勢、「俺!俺を見て!」とステージから全身で猛アピールするオーラが出てて眩しいですね。日替りアドリブシーンなどもあって(楽日前まで来てるせいか正直やややり過ぎ感はありましたが)まあファンは楽しかったでしょう。逆にあれだけ抑えた演技でも主役オーラ撒き散らす香取くんさすが、という結論になってしまうのですが。

今回初めてシアターオーブの三階席最後列というポジションから見てたのですが、もっと遠いかと思いきや意外にちゃんと見えるなーと思いました。まあステージ奥のスクリーンに映像投射されると1/3〜1/2くらいは見えないんですけれど。あとステージがせり出してると椅子前の手すりで一部見えなくなりますね。せり出し無しの通常ステージのみだったらギリ見えるんですが。あと私は座高高めの人間なので問題無いんですが、座高の低い人だとやはり手すりが邪魔で視界が悪いような気がしました。上からみているとルーレットの舞台セットの使い方が面白かったですね。美術誰だろうとチェックしたら松井るみさんでした。納得。


オーシャンズ11
http://www.oceanseleven.jp/

脚本・演出:小池修一郎(宝塚歌劇団)
作曲・編曲・音楽監督:太田 健
指揮:上垣 聡
美術:松井るみ
照明:勝柴次朗
音響:大坪正仁
振付:桜木涼介 YUSUKE
オープニング振付:TETSUHARU(増田哲治)
衣裳:有村 淳
ヘアメイク:宮内宏明
映像:奥秀太郎
イリュージョン:北見 伸
歌唱指導:山口正義
稽古ピアノ:宇賀村直佳、中野裕子
演出助手:伴・眞里子
舞台監督:二瓶剛雄

主要キャスト比較表

【作品について】
2001年の世界的大ヒット作 痛快アクションムービー「オーシャンズ11」の世界初ミュージカル化作品に香取慎吾が挑む!

2011年の宝塚版と同じく小池修一郎の脚本・演出によるNewバージョン!
2000年に「エリン・ブロコビッチ」「トラフィック」でアカデミー監督賞ダブルノミネートの快挙を果たしたスティーブン・ソダーバーグ監督が、ジョージ・クルーニーブラッド・ピットジュリア・ロバーツ他の華々しい顔ぶれで撮った「オーシャンズ11」。ラスヴェガスの地下金庫に眠る莫大な現金を狙って、ダニー・オーシャンの元に犯罪プロフェッショナル10名のドリームチームが集結、前代未聞の強盗計画が繰り広げられる娯楽大作となりました。 この作品を2011年に、ワーナー エンターテイメント ジャパン株式会社 ワーナー・ブラザース コンシューマープロダクツより舞台化の権利を取得し、世界で初めて小池修一郎の脚本・演出により宝塚歌劇団星組がミュージカル化。映画同様のテンポの良いストーリー展開に加え、書き下ろされた珠玉のミュージカルナンバー、映画でも話題となった華やかなラスヴェガスのショー、イリュージョンシーンなど、映像を凌駕するスタイリッシュな演出が話題となり大成功を収めました。初演時にはアメリカからソダーバーグ監督も来日し観劇したことも話題となりました。(13年には花組で再演)
そして2014年6月、宝塚を飛び出し、世界初演となるNewバージョンの主演に香取慎吾を迎えての上演が決定したのです!

香取慎吾がスゴイ奴らと、前代未聞の大博打を打つ!!

映画でジョージ・クルーニーが演じた天才詐欺師ダニー・オーシャンは、初ミュージカルでオフ・ブロードウェイデビューを飾り、日本でも約6万人を動員した「TALK LIKE SINGING」(09-10)以来の舞台出演となる香取慎吾が務めます。「TALK〜」では生まれた時から普通に話すことができず、言葉が全て歌になってしまうという難役を演じた香取。今回は、男っぷりの良さと色っぽさを併せ持つダニーをどのように舞台上で演じるのか期待が高まります。
そして、ダニーの妻テスには今作が初ミュージカルとなる観月ありさ、ダニーの昔馴染みラスティー・ライアンには、今やミュージカル界を牽引する山本耕史、ダニー達が挑む冷酷なホテル王テリー・ベネディクトにはベテラン橋本さとし、ベネディクトの元愛人でカジノのショースター・ダイアナに元宝塚トップスターの霧矢大夢と、映画に負けない豪華なキャストが顔を揃えました。更に真田祐馬、安井謙太郎萩谷慧悟水田航生、坂元健児、角川裕明、芋洗坂係長ラッキィ池田斉藤暁と、若手からベテラン、一癖も二癖もあるバラエティに富んだキャストが結集し、男同士の戦い、友情、そして男女間の愛憎が、複雑に絡み合いながら描かれていく物語に挑みます。

香取慎吾主演『オーシャンズ11』ゴージャスに開幕 | チケットぴあ[演劇 ミュージカル・ショー] (舞台写真あり)
香取慎吾「ぜひとも僕の120%を」 Jrの真田、安井、萩谷と舞台『オーシャンズ11』 - News Lounge(ニュースラウンジ) (舞台写真あり)