War Horse ウォー・ホース〜戦火の馬〜@シアターオーブ

もともとは1982年出版の児童小説、これをロンドンのナショナルシアターで2007年に舞台化、2011年にはトニー賞で5部門制覇したりスピルバーグが映画化したり、というような流れがあっての今回の来日公演ですね。トニー賞授賞式を見ながら「あーコレ観たいなー」などとぼんやり思っていたので、来日公演は早めにチケットをおさえて楽しみにしていました。

この作品では第一次世界大戦に巻き込まれ数奇な運命を歩むことになった狩猟馬のジョーイと、ジョーイを手なづけた農家の少年アルバートの心の交流、そしてジョーイが戦場の行く先々で出会う兵士たちや少女などのエピソードが描かれます。ざっくり言うと一頭の馬を通して戦争の悲惨さを描いている感じですね。映画版とは細かいエピソードが違っていますが、基本的な設定やだいたいのあらすじは同じです。
まあ舞台版のみどころはやはり馬の美術とその演技でしょう。仔馬のジョーイが宙に舞った瞬間、その向こうから大きく成長したジョーイが登場する場面の迫力と高揚感、これが本当に素晴らしくて、もうこの一瞬で「チケット代の元取ったぁー」と思いました。三人の人間が操作する馬の動きが本当に見事だし、鳴き声なんかも本当にリアルで「人間の声?それとも録音?」と思わず耳と目を疑うレベル。まあ日本の舞台でも蜷川さんの演出する馬の演技力とかは結構リアルだったりするんですが、やっぱり細部のレベルが違いますね。メイキング番組でインタビューされた蜷川さんが「負けた!負けた!日本の馬の1.5倍くらいある!」って言ってたのには「そこかい!」ってちょっと笑いましたけれど。まあライオンキングの動物の造形も凄いなあとは思ったんですが、こっちはだいぶリアルな馬に寄せた感じでしたねえ。馬以外にも棒の先に鳥が付いてるのを人間が操作してたりするんですが、コレ見た時はちょっと「歌舞伎か!」と思っちゃいましたね。

物語のエピソードのひとつひとつは正直映画版の方が丁寧に描いてるなあという感じで、舞台は時間と空間の制約もあるのでしょうが映画と比べるとややダイジェストな感じはありました。が、戦争による閉塞感や絶望感は舞台版の方がより強い気もします。舞台版は随所で挿入されるノスタルジックな劇中歌の使い方がとても良かったです。あまり多くをセリフで説明せずに歌に託す演出でしたね。話がわかりやすいのは映画版の方なんでしょうけれど、より心に染みわたるのは舞台版の方というか。まあwikipediaでストーリー知っちゃってたし映画版も見ちゃってたしということで正直号泣するというほどでは無かったですが、それでもよい作品だったと思います。

あとは映画版との違いについて、ちまちました覚書。映画では地主と争って競り落としたエピソードは地主でなく兄。その息子(アルバートの従兄弟)が戦争に行って戦死するエピソードは舞台固有かな。あと農場の少女エミリーの場面、映画では祖父と二人暮らしだったけど舞台では母親。エミリーとドイツの脱走兵の交流エピソードも映画版には無かったけど、これはあの銃殺される若いドイツ兵の兄弟のエピソードとすり替わってるのかな。あとはジョーイとアルバートが再会した後、映画版だとジョーイが競売にかけられたり兵士たちがカンパしてくれたりエミリーの祖父がジョーイを競り落としたりといったエピソードがあるんだけど、舞台版ではすぐにジョーイとアルバートが帰郷したり、といった感じ。


【ストーリー】
イギリスの貧しい小作農家に生まれたアルバートは、父親が叔父と争って競り落とした立派な狩猟馬にジョーイと名付け、苦労して手懐ける。荒れた土地を耕す農耕馬の仕事を覚えさせたものの、第一次世界大戦でフランスへ向かう騎兵部隊にジョーイを売り渡すことになってしまった。騎兵部隊の大尉はジョーイを大切にすると約束したものの、フランスで戦死。ジョーイと、ジョーイと同じ部隊にいた名馬トップソーンはドイツ軍の手に渡る。ドイツ軍の兵士は二匹の馬と軍から脱走して農場のエミリーという少女とその母親と逃げ出すが、やがてかつての部下に見つかってしまう。やがてトップソーンは足を悪くして死んでしまい、逃げ出したジョーイはドイツ軍とイギリス軍の中間地点で有刺鉄線に絡まって動けなくなる。それを見た両軍の兵士は白旗を上げて一時停戦し、ジョーイを助けコイントスで所有者を決め、イギリス兵がジョーイを連れて帰ることになった。一方、アルバートジョーイを探すために年齢を偽って戦地へ赴いていた。命の危機に陥ることもあったが、そこでかけがえのない親友ができる。ある時、アルバート催涙ガスで目をやられ前線から撤退していた。そこに「奇跡の馬」と呼ばれながらも「もう治療ができない」と銃殺されかけていた馬がいた。アルバートはかつてジョーイを呼ぶ時に使っていた指笛を吹き、それにジョーイが反応したことでふたりはやっと再会できた。そして終戦。「奇跡の馬」と呼ばれたジョーイとアルバートは農場へ戻り、両親との再会を喜ぶのだった。


War Horse ウォー・ホース〜戦火の馬〜
http://warhorse.jp/index.html

【クリエイティブチーム】
原作:マイケル・モーパーゴ(Michael Morpurgo)
オリジナル共同演出:マリアン・エリオット(Marianne Elliot)。トム・モリス(Tom Morris)
パペットデザイン、制作、演出:エイドリアン・コーラー(Adrian Kohler)、バズル・ジョーンズ(Basil Jones)、ハンドスプリング・パペットカンパニー
(Handspring Puppet Company)
ムーブメントと馬の振付演出:トビー・セドウィック(Toby Sedgwick)
ソングメーカー:ジョン・タムス(John Tams)
音楽監督:グレッグ・プリスカ(Greg Pliska)
パペット演出アソシエイト:マシュー・エイチソン(Matthew Acheson)
方言コーチ:ジリアン・レーン=プレシャ(Gillian Lane-Plescia)
ステージ・マネージャー:シェリー・B・テイ(Cherie B.Tay)
脚色:ニック・スタフォード(Nick Stafford)
USツアー版演出:ビジャン・シェバーニ(Bijan Sheibani)
照明デザイン:ポール・コンスタブル(Paule Constable)
プロジェクション、アニメーションデザイン:59プロダクションズ(59 Productions)
クリエイティブ・アソシエイト:マーヴィン・ミラー(Marvyn Millar)
音響デザイン:クリストファー・シュート:(Christopher Shutt)
キャスティング:ダニエル・スウィー(Daniel Swee)
ムーブメントと馬の振付演出アソシエイト:エイドリアン・カプスティーン(Adrienne Kapstein)
ボーカルコーチ:シェイン・アン・ヨーンツ(Shane Ann Younts)
アシスタント・ステージ・マネージャー:マルゴット・ホイットニー(Margot Whitney)
共同制作:ハンドスプリング・パペット・カンパニー(Handspring Puppet Company)
セット、衣装、デッサン:レイ・スミス(Rae Smith)
追加照明・アダプテーション:カレン・スパーン(Karen Spahn)
アーティスティック・アソシエイト:サミュエル・アダムソン(Samuel Adamson)
音楽:エイドリアン・サットン(Adrian Sutton)
追加音響・アダプテーション:ジョン・オーウェンズ(John Owens)
演出アソシエイト:サーナ・ラピーン(Sarna Lapine)
ファイト演出:トム・シャール(Tom Schall)
プロダクション・ステージ・マネージャー:ペイジ・グラント(Paige Grant)
プロデューサー:ボブ・ボイェット(Bob Boyett)、ナショナル・シアター・オブ・グレイト・ブリテン(National Theatre of Great Britain)

【キャスト】

ハンドスプリング・パペット・カンパニー: 『戦火の馬』偉業の背景 | TED Talk
「WarHorse(ウォー・ホース)~戦火の馬~」TCKコラボイベント 第1弾 - YouTube
「WarHorse(ウォー・ホース)~戦火の馬~」TCKコラボイベント 第2弾 - YouTube