出典:映画.com
原作を読んだのはもう20年くらい前でしょうか、とても衝撃だったのを覚えています。細部については忘れてしまったのですが、戦争や大人たちの理不尽な扱いの中で生き抜く双子の男の子の日記という体裁の小説で、その淡々とした筆致といい、大人たちや双子の静かな狂気といい、一気に読み終えて「これはなんという傑作だ」と思い慌てて続編を買いに走ったものでした。当時はまだ確か文庫本が出てなかったのですが、学生にはちょっと高いと感じるハードカバーでも躊躇なく買い足した記憶があります。それが映画化というのでまず驚き、宣材写真の双子のビジュアルに「これは観なければ」と思いました。
いやー、しかし、なんというか。映画を観てまる1日たった今でもうまく感想が出てこないというか。なんとも言えない消化しきれない気持をまだ抱えています。感想をひとことでと言われたら「戦争、いくない……」というたいへん頭の悪いコメントしか出てきません。映画のほうも過剰な演出はなく、小説同様に淡々とした描写を積み重ねていて、それがまた戦争という状況下での狂気を伝えています。
原作を読んだ印象では、主人公の双子はもっと冷酷で冷めた目をした大人びた男の子たちというイメージだったのですが、映画版での主演のふたりはどこか深く傷ついた目をしていて、歳相応の子供らしさが残っているのが、痛ましくてつらかったです。すごく整ってキレイな顔してるのに、笑顔が全然出てこないのがまたね……。
原作を読んだ時も思ったのですが、最後の最後まで双子の人格はまったく区別されないものだから、ラストでふたりが選択した行動に「えっ、なんで」「大丈夫なの」と思ってしまうんですよね。そして「もしかしてふたりは双子だったんじゃなくてひとりの男の子で、つらい状況が産んだ多重人格だったんじゃないの?」とも。どうしてふたりで国境を越えなかったのかと思ってずーっとそのことでモヤモヤモヤモヤと。別離を「最後の訓練」と言っていたから、強く生き抜くための選択だったのかもしれないけれど。原作もそうだから別にこれは映画の出来や演出がどうこうっていうんじゃなくて、なんかもうすっかり双子に感情移入してしまった挙句の感想なんですけどもね。
そういえば、コラージュや絵のはいった日記の演出も素敵でした。当時の状況を考えると実際には写真をあんなに入れたりは出来ないだろうけどなーとはちらっと思いましたけど、まあ映画的な演出としてアリだと思います。はあ、しかしほんと気の利いたこと書けてませんけど、なんというか打ちのめされる映画でした。落ち着いて感想がまとまってきたらまた書き足します。