ハイバイ「霊感少女ヒドミ」@アトリエヘリコプター


出典:ハイバイ公式ホームページより

この作品は再演を重ねてきたもののようですが、私は初見です。ハイバイを観るのは「て」に続いて2作目ですね。アトリエヘリコプターも実は初めて行きました。五反田団の前田さんが自宅を改装して作った劇場だというから、もっと狭い小屋を想像してたのですが、アゴラ劇場より少し広い気がしましたね……。いい意味で小劇場らしい無骨さを感じる小屋でした。

まあそれはさておき、作品のざっくりしたあらすじを。舞台はある少女の部屋、少女は恋人の男を部屋に招いていて、部屋に住み着いているふたりの幽霊(ゾンビたち)に「今日は出て来ないでよね」と言い放つ。ふたりのゾンビは少女に惚れているようだけど、その想いは届かない。恋人の男は少女のパンティを触って弄ぶような変態で、どうも少女を本当に大切にしてるようには見えない。それでも少女には恋人の男しか見えてなくて……。
そんな一方通行の片思いが連鎖する人間関係を、プロジェクションマッピングの映像を使った演出で描いてました。終盤のクライマックスでキリンジの「エイリアンズ」のナンバーに乗せて描かれる映像は、いい意味で青臭く、ちょっと気恥ずかしく、心の柔らかい部分に触れるものでした。リピートされる「私もです」の言葉、そして「信用できるのは『私がどうするか』ただそれだけのこと」のあたり、すごく良かった。この場面は、もうこの年になってしまうと心を大きく揺さぶられるというよりは「ああ、これ、懐かしい感情だなあ」という視点になってしまうのだけど、二十歳前後くらいの若い頃にコレを見ていたら、感情移入しすぎてもう目の幅の涙でおいおいと泣いていたかもしれないなあ、とも思いました。ここでキリンジを使うのはズルい。

テーマとして言いたいことはすごく伝わってきたし、この作品を好きだという方の気持もすごくよく分かります。でも正直なところ、作品における映像の力が強すぎて、特にクライマックスの一番いいところは映像でしか語られていない、というのがちょっとどうなんだろうなあと思ったりもしました。これでは「映像詩」だなあ、と。初演が9年前だからまあそれを考えたら仕方ないのかなあとも思うのですが、もうちょっと「舞台で人間が演じる意味」を強く感じられる舞台だったら良かったなあ、というのが正直な感想です。特にこの2日後にみた「ポリグラフ」が、まさにその完成形とでもいうような映像の使い方だったので、なおさらそんな風に思いましたねえ。


ハイバイ「霊感少女ヒドミ」
http://hi-bye.net/2014/10/13/4211

出演:石橋菜津美、富川一人、用松亮、平原テツ

作・演出:岩井秀人
映像:ムーチョ村松

舞台監督/谷澤拓巳・上嶋倫子
舞台美術・宣伝美術/土谷朋子(citron works)
音響/中村嘉宏 音響操作/平井隆史
映像編集/トーキョースタイル 映像操作/富所浩一
衣裳プラン/土谷朋子(citron works) 衣裳協力/中西瑞美(ひなぎく
宣伝写真/平岩享 WEB/斎藤拓