「Singin’ in the Rain ー雨に唄えばー」@東急シアターオーブ

Twitterのキャンペーンで公開舞台稽古にご招待いただいたので、ひとあし先に初日開幕直前のゲネプロをみてきました。「映画版もヅカ版も見てるし、まあ知ってる作品だしなあ」「ゲネプロだと関係者がほとんどで、そんなに客席も盛り上がらないだろうなー」とテンション低めな感じで観に行ったのですが。蓋を開けてみれば、これがまあ楽しくて楽しくて。水を使った演出のせいもあるかとは思いますが大いに盛り上がり、ゲネプロだというのに一部スタンディングオベーションとなっておりました。
キャンペーン当選の一般客に用意されたの下手ブロックの1〜3列目。すべての席にビニールシートが用意されていました。開演前にもスタッフさんから「水が出てくる場面ではこのシートでガードしてください」「休憩中はシートは座席に置いてロビーへ」などの説明がありました。「言うても、せいぜい濡れるのは1列目くらいで、3列目までは行かないんじゃ……?」と2列目の私は思っていましたが、甘い考えであったことは後でわかります。

物語は1920年のハリウッド、サイレント映画からトーキー映画への移行期のゴタゴタの中で、映画スター俳優と駆け出しの舞台女優の恋物語を描いたもの。クラシカルでカラフルな衣装も目の保養だし、オケも当然生演奏、そして何より嬉しいのが群舞シーンが多いこと。耳慣れた軽快なナンバーにのせて、ダイナミックなダンスを繰り広げるアンサンブル。ああこれぞまさにミュージカルの楽しさの王道……! と幸せな気分になれます。うっとり。

そして一幕最後、あの名ナンバー「Singin’ in the Rain」で、一気に舞台に降り注ぐ雨。最初は「ああ、結構降ってるなー」くらいだったけれど、アダム・クーパーがこれを楽しそうにターンしながら客席へと蹴散らしてくる。観客は嬉しそうに悲鳴を上げながらビニールシートで防ぐという有り様。いや、楽しい、楽しいけど! 冷たい! でも楽しい! ビニールシートを顔まで上げると膝から下が濡れるし、足をガードすれば頭が濡れるという塩梅。2列目でも相当な水かぶり席だったので、最前列の方はもう、カッパ着てたほうが良いんじゃないかと思うくらいでした。初日に最前列センターで観た友人は「バケツで水をかぶったようにずぶ濡れ」と言ってましたね。キャストの気分によっても濡れ具合は変わるでしょうが、これから1〜3列目で見る予定のある方は、甘く見ないほうがいいと思います。

主役ドン・ロックウッド役のアダム・クーパーの歌声はダンサー出身とは思えないほど余裕たっぷりで伸びやか、ドヤ感もなく軽快なミュージカルにすごくあってました。相棒のコズモ役、ステファン・アネッリは主役をたてて一歩引いてる感はあるものの、コミカルな動きや表情ですごく可愛かった。主演よりもテクニック的には難しそうな役なのになあ。もっと前に出てもいいのに! キャシー役エイミー・エレン・リチャードソンも愛嬌あって可愛らしかった。歌も聴かせる。そしてリナ役のオリヴィア・ファインズ、綺麗。敵役でバカでムカつく役なのに、ギリギリ愛せるラインの演じ方、上手い。

本編もとても楽しかったのですが、さらに楽しかったのがカーテンコール。白シャツ・ベスト・帽子のスタイルのキャスト全員が、降り注ぐ雨の中、水を派手に跳ね上げながらカラフルな傘を持って踊るという素敵な演出。ドラマgleeの「Singing In The Rain/Umbrella」のマッシュアップを思い出しました。どっちが先にやったのかはわかりませんが、カッコよくて盛り上がりましたねえ。一般招待客枠の観客からは自然に歓声が上がり、立ち上がってスタンディングオベーションになってました。ゲネプロでは珍しい光景ではないでしょうか。ゲネプロでこれだけ盛り上がったということは、客席が埋まってる初日はもっとすごかったでしょうねえ。

もともと知ってる物語、おなじみの楽曲なのに、演出の素晴らしさと役者のパフォーマンスで期待値をはるかに上回ってきたので、とても嬉しい驚きでした。いや楽しかった。これはリピート鑑賞に耐える内容ですね。幸せ。


「Singin’ in the Rain ー雨に唄えばー」
http://singinintherain.jp/

【スタッフ】
作詞・作曲:ナシオ・ハーブ・ブラウンアーサー・フリード
演出:ジョナサン・チャーチ
振付:アンドリュー・ライト
美術:サイモン・ヒグレット
照明デザイン:ティム・ミッチェル
音響デザイン:ガレス・オーウェン
音楽監督:ロバート・スコット
映像デザイン:イアン・ウィリアム・ギャロウェイ
編曲:ラリー・ウィルコックス、ラリー・ブランク
共同演出:キャメロン・ウェン
キャスティング・ディレクター:ジル・グリーン・CDG

【キャスト】
ドン・ロックウッド :アダム・クーパー
キャシー・セルダン :エイミー・エレン・リチャードソン
コズモ・ブラウン  :ステファン・アネッリ
シンプソン     :マックスウェル・コールフィールド
ドラ・ベイリー   :ジャクリーン・クラーク
ロスコー・デクスター:ポール・グルナート
リナ・ラモント   :オリヴィア・ファインズ

【ストーリー】
舞台は1920年代、サイレント映画全盛期のハリウッド。映画スターのドン・ロックウッドと大女優のリナ・ラモントはスター同士のカップルと世間でもてはやされていた。しかし実際はリナが一方的にドンを追いかけているだけで、美人だけれども演技は下手、しかもわがままで思いこみの激しいリナにドンはむしろうんざりしていたのだった。そんな折、ドンはパーティに行く道すがら、駆け出しの女優キャシーと出会い、恋仲に。やがてハリウッドにはトーキー映画の波が押し寄せ、ドンとリナの新作サイレント映画も急遽トーキーにすることになる。だが、リナは大変な悪声であり、トーキー映画には不向きであった。当然ながら試写会は大失敗。そんな映画を公開するわけにはいかないと危機感を抱いたドンとその親友コズモ、そしてキャシーの三人は、映画をミュージカルに作り変えることを思い立つが、リナの声をどうするかが問題となり…