「スリル・ミー」@銀河劇場

同性愛者カップルが起こした誘拐殺人事件を描いた男二人芝居ミュージカル、しかもキャスティングを変えながら再演を繰り返してるというので、それだけ人気ならさぞ面白いのであろう、と今回はじめてチケットを取ってみました。3組のキャストがいたわけですが、特に思い入れのある俳優さんはいなかったので「じゃあ、日程もちょうどいいし見たことある人で」と田代万里生&伊礼彼方コンビを選択。
感想を結論から言うと「期待値上げすぎたかなー」「思ったほど萌えなかったなー」という感じでした。ただこれもともとご贔屓の役者さんが出てたらすごく楽しいだろうなあ、通っちゃうよなあ、とも思いましたけれど。

ニーチェの超人思想に傾倒する頭脳明晰な幼なじみ同士が「お互いの要求にはすべて応える」という契約書を作って血でサインをし、放火や盗みなどの犯罪を働き、それがやがて子供の誘拐殺人にまでエスカレートする、といったストーリー。実際にあった事件が元ネタで、映画『ロープ』『完全犯罪クラブ』なんかにもなってるらしいですね。ふたりの関係性が支配と被支配なのか、SとMなのか、それとも対等なのか、というあたりは演じる役者によってだいぶ違うのだろうなあ。見る側が持ってる「私が萌える関係性」ってのも人それぞれだろうから、そこがぴったりマッチするとすごくハマれる作品なんじゃないかと思いました。

正直今回のコンビは私の好みとはちょっとズレてたような。正直あんまりふたりの間に愛情を感じなかったんだよなあ。ちょっとドライな感じに見えたというか、濃い感情があるようには見えなかった。もっと支配と被支配の関係が色濃くて「私」がMっ気たっぷりだと、結末がしびれたんだけど。あとふたりともそこまで頭良く見えないってのがどうにもこうにも。ニーチェ思想を口にしながらもやってることはシケた放火や盗みだったりとかねえ。やっとデカいことやらかしたと思ったら子供殺しとか、いまいちこう感情移入できないっていう。まあ「犯罪を魅力的には描かない」という演出意図もあるのかもしれないけど、でもある程度このふたりの犯罪をカッコよく描かないと作品も成立しないでしょう、とも思って、ちょっとモヤモヤ。「彼」のナルシストっぽい身振りが時々オードリー春日に見えて仕方なかったのもあるけれど。

伴奏はピアノだけ、舞台も階段や小道具がすこしあるくらいで、ほとんど素舞台でもいいようなシンプルなもの。初演はキャパ120のアトリエフォンテーヌだったというから、それくらいのサイズ感で見てたらすごく良かっただろうなと思いました。銀河劇場ではちょっとこういう二人芝居には広いかなという気も。チケット代8000円もこのサイズ感だとちょっと高く感じてしまうし。キャパ300くらいの劇場で4〜5000円くらいがちょうどいい気がするけれど。ホリプロ制作だとそれでは採算とれないのかな。

まあそんなこんなで「期待した割には……」って感じで帰ってきたわけですが、まあリピーター沼にハマるよりは良かったかもしれません。うっかりハマって全キャストコンプリートとか、大変。

「スリル・ミー」
http://hpot.jp/stage/tmjp2014

<出演>
私役 尾上松也  ×  彼役 柿澤勇人
私役 田代万里生 ×  彼役 伊礼彼方
私役 松下洸平  ×  彼役 小西遼生

ピアノ伴奏:朴勝哲

原作・音楽・脚本 Stephen Dolginoff
演出       栗山民也
翻訳・訳詞    松田直行
音楽監督     落合崇史
美術       伊藤雅子
照明       勝柴次朗
音響       山本浩一
衣装       前田文子
メイク      鎌田直樹
歌唱指導     伊藤和美
振付       田井中智子
演出助手     坪井彰宏
舞台監督     田中伸幸 宇佐美雅人

【STORY】
刑務所での囚人の仮釈放審議会。審議官に問われるまま、「私」は37年前に犯した自らの罪を語り始める。
「私」と「彼」二人にいったい何が起きたのか・・・・・・。
頭脳明晰で幼なじみでもある二人。ニーチェを崇拝し、自らを特別な人だと語る「彼」は、『犯罪』をすることでしか自分を満たすことができない。「私」はそんな「彼」を愛するがゆえに、求められるままに犯罪に手を貸して行く。より深い束縛を求める2人は、互いの要求すべてに応えるという契約をつくり、血でサインをする。裏切りが許されない契約書のもと、二人の犯罪は次第にエスカレートしていき・・・。