イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密

いやー面白かった。見応えありました。第二次世界大戦中にドイツ軍の暗号を解読して戦争を2年早く終わらせたといわれる天才数学者アラン・チューリングを描いた作品、というくらいの前知識で見に行ったんですが、彼の同性愛者としての苦悩の部分がテーマとしては大きかったんですね。実話に基づいた物語ということだけれど、ほんといろんな人が言ってるとおり、脚本や構成が実に見事。娯楽作品としても良く出来てる上に、見終えた後にずっしりと重く刺さるテーマもありました。

以下、ネタバレもありますのでこれからご覧になる方はご注意を。
空気が読めない、人の心の機微がわからないゆえに最初は孤立していた主人公が、ジョーンと出会うことによって社会性を身につけ、やがてメンバーにも理解され支持されるようになる……って、チーム物の定番的展開だけどやっぱりグッと来ます。何気ない雑談から暗号解読のヒントをつかんでチームが一体となって動く瞬間、あのシーンの胸熱なことったらない。アランの不遇の最期はすごく物悲しいのだけど、絵的には酒を飲みながらすべての書類を燃やすチームメンバーのキャンプファイヤーのような楽しそうな表情の回想で、これがまた「青春モノの1ページ」って感じですごく爽やかなのが切ない余韻を残します。

暗号解読の主旋律と同時並行して、アランの同性愛者としての副旋律が時間軸を行ったり来たりしながら描かれるのも見事。寄宿舎時代の親友への想い、告白しようとした矢先の親友の死、ジョーンとの婚約とその破棄、男娼を買ったことによる逮捕、そして服役を避けるためのホルモン治療、つまり科学的去勢……と、当時の同性愛者の扱いがほんと酷い物だったことがわかります。暗号解読の功績は機密事項だとしても、なんとも不遇で孤独な最期を迎えてしまったのだなあとずっしり。

メンバーの家族が死ぬことがわかっていても、敵軍に悟られないよう巧みに計算して阻止する作戦と放置する作戦を決める……というあたりのエピソードも、二重スパイを泳がせてるあたりのエピソードも「うわあ……」と思いましたねえ。そりゃ戦争だものキレイ事だけじゃ済まされないけれど、大勢の運命が人為的に操作されることへのなんとも言えない抵抗感。「時に思いも寄らぬ人物が、偉業を成し遂げることがある」といったような親友の台詞が何度か出てくるのだけど、その使い方も上手い。

アスペルガー症候群っぽい感じの天才を演じるベネディクト・カンバーバッチはさすがのハマり役。SHERLOCKとはまた違った雰囲気の天才を演じていました。ヒロイン役のキーラ・ナイトレイ、イイ女過ぎる……。本当の意味で賢いのはアランよりもジョーンなんだろうなーなどと思いながら見ていました。ちょっと魅力的すぎるくらい。

今年のオスカー受賞式の時に脚本のグレアム・ムーアが自殺未遂したことを明かしながら「居場所がないと感じてる子供たち」へのメッセージをスピーチしててすごく感動的だったのだけど、映画を観た上であのスピーチを思い出すとまた改めてグッとくるなあ、と。

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密
http://imitationgame.gaga.ne.jp/

監督 モルテン・ティルドゥム
脚本 グレアム・ムーア
原作 アンドリュー・ホッジス
音楽 アレクサンドル・デスプラ
撮影 オスカル・ファウラ
編集 ウィリアム・ゴールデンバーグ

キャスト:ベネディクト・カンバーバッチキーラ・ナイトレイ、マシュー・グッド、ロリー・キニアチャールズ・ダンスマーク・ストロング ほか