「エリザベート」プレビュー公演@帝国劇場


出典:東宝公式Facebookより

久しぶりの東宝エリザ観劇でした。初演バージョンに衝撃を受けて(主にツッコミどころ満載の意味で)飽きるほどリピートしたのももう14年前になるのですね。あの狂った大島早紀子振付バージョンが大好きだったので演出改訂後は東宝版から足が遠のいておりました。ウィーン版や宝塚版は時々見ていたのですけどね。5年前に評判の良かった城田優トートを見逃していたので、今回久々に東宝版を観に行ったわけです。
演出は主に装置や衣装など美術面で大きく変わっていましたが、まあ解釈の面では大きな変更はなかったように思います。物語から受ける印象はさほど変わらないですね。トートダンサーズの振付も初演ほどではないものの’04年バージョンに比べると異質感がましており割りと好みでありました(むしろもっと気持ち悪くてもいいくらい)。装置は大きな箱のような可動ブロックが3つあってその上での演技が多いのですが、足を踏み外す事故があったら怖いなーと思わせるような装置でした。ブロックのうちひとつは天板の一部が斜めに持ち上がったりするのですが、これも俳優さんがはさまれたり落ちたりしないだろうかとちょっと不安になる作りでした。多分大丈夫なんでしょうけれど、千秋楽まで事故がないことを祈ります。

トート&トートダンサーズの衣装がまあ厨二病炸裂な雰囲気で、肌の露出部分にはこれまた厨二なタトゥー(シールなのか肌色の衣装なのかはちょっとわかりませんでしたが)があったりして、装置のゴスゴスしさに加えてまあむせ返るような厨二臭さでありました。ゾフィー様の衣装も上半身が軍服っぽい作りのドレスで、ミリタリーゴスというか軍服ワンピースを思い出したりして、「やっべえカッコイイ」とまじまじ眺めてしまいました。もともと少女漫画的な物語に加えてこの厨二臭さ、そして相変わらず空間埋めまくり盛りまくり、群舞シーン満載でどこ観たらいいか迷う小池演出、うん、嫌いじゃないんですけどね!(というか好き!)

しかし出演者の平均年齢がだいぶ下がって世代交代感のあるキャスティングでしたね。初演でルドルフだった井上芳雄がトート役、というのに始まって、ずっと高嶋政宏がひとりで演じていたルキーニ役も山崎育三郎&尾上松也とだいぶ若返りました。タイトルロールも宝塚男役OGだったのが今回初めて娘役OGのWキャストということで、東宝さんも色々思い切ったなあという感じです。私が観たのはプレビュー2日目だったのでこんなキャスティングでした。

エリザベート:蘭乃はな
トート   :城田優
フランツ  :佐藤隆紀
ルドルフ  :京本大我
ゾフィー  :剣幸
ルキーニ  :尾上松也

エリザベート役の蘭乃はなちゃんは宝塚退団後初めての舞台がコレですね。昨年観た宝塚花組エリザベートの時はきっちり歌えてたように思うのですが、この日は緊張もあったのか前半の歌(特に冒頭)がやや不安定でしたね。まだ男役を立てる娘役マインドが抜けてないのか、いささか存在感が薄くトートが主役に見えることもしばしば。東宝版はエリザベートが主役なのだから、もう少し押し出しが強くてもいいような気がしました。


出典:東宝公式Facebookより

お目当てだったトート役の城田優は……いやもうこのビジュアルの説得力半端ない、ほぼ理想のトートと言っても過言ではない感じです。背が高くて舞台映えするのはもちろんのこと、顔立ちもひとり日本人離れして美しくて(ハーフですもんね)ため息モノでした。この日のルキーニやフランツが純然たる日本人体型だったのと対照的だったせいもありますが、ビジュアル面の「人外」っぽさが満点で素晴らしかったです。彼のミュージカルはロミジュリやファントムも観てきましたが、やはりダントツでこのトートはハマり役だと思いました。歌はいわゆるミュージカル歌唱というよりはロック系な雰囲気でしたが、それはそれでトート役には適しているのかなと。ウィーン版に近い雰囲気で良かったと思います。時間と金に余裕があればあと何度かリピートしたい(たぶん独身の頃なら通ってた)、と思わせるほどの魅力的なトートだったなあと。ついついオペラグラス持ち上げてしまいました。

ルキーニの尾上松也、歌舞伎では何度か観てきましたがミュージカルは初めて観ました。予想外に声量もありなかなか歌えてるなあとは思いましたが、高音のファルセットでガクンと声量が落ちるのがちょっと難といえば難でしょうか。まあプレビューなのでまだ遊びも少なく真面目に段取り通りやってるなーという感じでしたが、ルキーニの下衆い雰囲気は出てましたし、回を重ねて慣れてくれば良くなりそうな感じはありました。

フランツの佐藤隆紀、誰だかまったく知らなかったのですが(ごめんなさい)Le Velvetsの人でしたか。ミュージカル出演はタイタニックにつづいて2作目だそうで。歌は普通に上手かったのでまあ安定感はありましたが、芝居面ではちょっと印象薄かったでしょうかね。

ルドルフ役の京本大我もまったく知らなかったのですが、後からググって「ジャニーズJr.所属、京本政樹の息子、小池徹平の再従兄弟」という情報を知ってほほうと思いました。今までのルドルフの中で一番幼い印象ではありましたが、その分「トートにいいように操られてる」という悲劇感が増しますね。初演の井上芳雄ルドルフがあまりに衝撃的でそれと比べると物足りなさは正直あるのですが、それでも歌もダンスもそつなくこなしていて歴代ルドルフと比べたら決して悪くなかったと思います。

そういえばマイヤーリンクでのルドルフの自殺シーン、今まではトートからルドルフにキスして自殺(あるいは死んでからキス)という流れだったのが、ルドルフからトートにキスして自殺、という演出に変わっていましたね。ちょっと意外といえば意外でした。全体の印象としてはやっぱりトートがルドルフを扇動して……という雰囲気なので大きく作品の印象が変わるものではないのですが、あそこはやっぱりトートからルドルフにキスして自殺のほうがルドルフの悲劇性が強く感じるので旧演出のほうが好きだなーとは思いました。

どうでもいいけど「私だけに」の歌の時にエリザベートが斜めに持ち上がった滑り台のような台に登りかけてズルズル落ちる、というような演出があるのですが、それが映画「幻の湖」のズルズル階段の場面をおもいだすなあ……と思ったのはたぶん私だけでしょうね……。

どうでもいいことといえばもうひとつ、戴冠式のシーンで馬車の装置がなくなったのにトートはなぜか御者の鞭を持ったままなので、はじめて見る人は「なんなの、トート閣下ってサディストなの」「なぜここで突然のSMプレイ」と混乱しないかなーとちょっと思いました。まあそんなドSなトート閣下も大好きなので意味なく鞭持ってるのも大歓迎なんですけれど。

エリザベート
http://www.tohostage.com/elisabeth/

脚本/歌詞:ミヒャエル・クンツェ
音楽/編曲:シルヴェスター・リーヴァイ
演出/訳詞:小池修一郎

音楽監督 :甲斐正人
音楽監督補:太田 健
美術   :二村周作
照明   :笠原俊幸
衣裳   :生澤美子
振付   :小㞍健太/桜木涼介
歌唱指導 :山口正義/ちあきしん
音響   :渡邉邦男
映像   :奥 秀太郎
ヘアメイク:富岡克之(スタジオAD)
演出助手 :小川美也子/末永陽一
舞台監督 :廣田 進
指揮   :上垣 聡
翻訳協力 :迫 光
プロダクション・コーディネーター:小熊節子
プロデューサー:岡本義次/坂本義和/篠崎勇己