ゴーゴーボーイズ ゴーゴーヘブン


出典:ステージナタリー

大人計画を何本か観られずにいたので私にとっては久しぶりの松尾さんの新作。中東あたりの政情不安定な地域にある架空の国、ISを思わせる過激派組織、人質になったジャーナリストを助けに向かう作家・永野とその妻の女優ミツコ、男娼ダンサーのトーイを中心とした混沌とした物語。かなり面白く観たんだけど、情報量の多さに咀嚼しそこねた部分もあり、たぶんこれはもう一回観たほうが面白さが増すヤツだなーと思いましたねえ。たぶんWOWOW放送あるだろう(と期待してる)から、もう一度ちゃんとストーリー把握したうえで細部を追っかけて観てみたいところ。

(以下、ネタバレありますので要注意)

吹越満さん演じるジャーナリストが人質になって銃をつきつけられている場面が、モロに去年の湯川氏・後藤氏がISに拘束された時の動画を思い出させるもので、ちょっと背中がヒヤリとするような気分でした。また物語の鍵となる「アンディ・ジャーがデザインした椅子」の素材が人間の皮を丁寧に剥いだもの、というのがわかった時もうわぁ……と思いましたけれど。大人計画ではおなじみ(?)の失禁シーンもあり、ああなんだか松尾さんらしさ満点だな!と思いました。女義太夫と女性の演奏する下座音楽が効果音をつけるというこれまた珍しいタイプの演出で、無国籍感や混沌感が増していたのが印象的。これは面白い演出だなあと思いましたね。

一方で松尾さんにしては珍しい、と思ったのは岡田将生くん演じるトーイとゴーゴーボーイズの設定ですかね。トーイの尻に埋め込まれたGPS発信機を永野がナイフで取り出す場面なんか完全にセックスを思わせる演出をしてたし、男同士の性愛をがっつり描くというのはちょっとめずらしいなあと思ったりしました。岡田将生くんは蜷川さんの「皆既食」でのランボー役もあったけれど、なんかこう「男の人生を狂わせる魔性の美少年」的な役をさせたくなる俳優なんでしょうかね。そういう役が似合いすぎるほど似合うんだけれど! 寺島しのぶさんはパブリックイメージを逆手にとった感じの役だけれどそれはそれで開き直って演じてる感がまた面白かったり。「肛門さえ見せなければいくら脱いでもいい」みたいなセリフがあっておかしかった。

役者といえば大人計画の役者さんたちはみんなさすがの適材適所感だったのだけど、ハイバイの岩井秀人さんが現地コーディネーターの役で「すぐに仕事のモチベーションが落ちる」役なのがすごいおかしかった。みるみるダメになっていく時の仕草がとてもおもしろくてついそっちを観ちゃうんだよなあ。