「スカーレット・ピンパーネル」@赤坂ACTシアター


出典:エンタステージ

宝塚版の「スカーレット・ピンパーネル」は星組版も月組版も見ていて好きな作品でした。「ああ、これ東宝あたりで男女でやってくれたら面白いのになあ」と思っていたのですが、念願かなってやっと男女混合版(?)の上演。しかも石丸幹二安蘭けい石井一孝とばりばりにミュージカルファン向けのキャスティングで鉄板の座組でございました。
幕開けから「あれっ」と思ったのですが、ヅカ版と曲順が違う。話も大枠のあらすじは同じように進むのですがところどころエピソードが違っていて驚きました。ヅカ版ではシャルル王子救出が後半のメインエピソードなのですが、ここがマルグリットの弟アルマンの救出になってるのですね。ヅカ版にはないロベスピエールのソロナンバーもあったりしてちょっと驚きました。ヅカだと荒唐無稽な展開でも「まあヅカだしな……」で済ませられたりするんですが、通常のミュージカルだと「おいおいいくらなんでも今のその状況で相手に気づかないのは一体どうなんだい?」とツッコミを入れたくなったりもしますね。そしてパーシーの本当の姿に気づくまでの流れもなんとなく雑な感じがして、シャルル王子の子供らしい発言で自然に見られたヅカ版のアレンジは良い仕事してたんだな……と思ったりしました。

極めつけはクライマックスの海辺のシーン、パーシーとショーヴランの一騎打ち……のその前で、両手に持った剣を華麗に振り回し、二刀流で雑魚兵を一手に引き受け蹴散らしていくのがなんとマルグリット! この展開にはさすがにしばらく爆笑して腹を抱えてしまいました。いや、たしかに安蘭けいさんだもの、そりゃあ強かろうとは思うし、誰よりも男前だったりもするけれど。こんなにドタバタコメディでいいのかよ……と思ってたら、そもそも作曲家のワイルドホーンさん自身が「この作品はコメディだよ」と言ってたらしいので、そうか喜劇ならしょうがない……と思いましたけれども。

やっぱりこの作品の曲はいいなあ好きだなあ、と思う一方で脚本の雑なところも気になったりして、ヅカ版のほうが全体的にまとまりがよかったんじゃないかと思ったりもしました。それと、やっぱり主要キャストがベテラン勢なのがちょっと気になったりしましたね。三角関係とか、革命家とか、正義感から隣国の貴族を救おうとするピンパーネル団とか、こういう血気にはやった人たちってもう少し若い世代で演じたほうがその危うさが出るんじゃないかと思ったんですよね。そりゃあ石丸さんも石井さんも悪くはなかったけどどこか落ち着きがあるもんだから、浦井くん山崎くん柿澤くんあたりの世代のほうがスリリングだったんじゃないかなーとそんなことを思いました。