猿若祭二月大歌舞伎(夜の部)@歌舞伎座


出典:デイリースポーツ「勘九郎の息子2人が初舞台 父、祖父と同じ 中村屋伝統の「桃太郎」」

七緒八くん&哲之くん、改め、勘太郎くん&長三郎くん兄弟の初舞台を観るために歌舞伎座へ行ってまいりました。やーしかし今月は見事に夜の部だけチケット完売、幕見も毎日すごい行列だったみたいで。中村屋ファンだけじゃなく歌舞伎ファンの多くにお披露目を応援されてる感じがしましたね。
「門出二人桃太郎」、筋立ては昔話そのまんまのシンプルな物語。鬼ヶ島へ向かおうとする兄弟のもとへ吉備津神社神主たちがやってきたところでお披露目の口上が入る趣向のおめでたい舞台でした。勘太郎くんも長三郎くんもしっかりした声でご挨拶。特に勘太郎くんはしっかりとした見得をきって今後が楽しみな役者っぷりでした。長三郎くんも3歳の割に貫禄たっぷりというか、他の俳優さんの口上のあいだ、どっしりと舞台の上で落ち着いて座っていたのがすごいなーと思いました。やはり蛙の子はなんとやら、ですなあ。

それにしても子どもたちふたりの可愛さもさることながら、お父さん勘九郎さんの表情が、もう、完全にただの父親で。TVで初日の様子が放送されてましたけど、ものすごい緊張感でどうにかなりそうな顔してましたものね。徹子の部屋では勘九郎さんと七之助さんお披露目の時の様子も流れてたのですが、十八代目勘三郎さん(当時勘九郎さん)もものすごい親まるだしの緊張感漂う顔してたんですよね。それを観て「すごい顔してますね〜(笑)」って勘九郎さん笑ってたんですが、全っ然人のこといえませんよ、むしろ貴方のほうがすごい顔してますよ、っていう。私が観た日はもう中日も過ぎてたのでだいぶ表情も和らいではいましたが、それでもやっぱり後ろから子どもたちを見守る顔は完全に役を忘れて親の顔になってる瞬間がありましたものね。

おじいさんおばあさんは芝翫さん時蔵さん、犬・猿・雉は染五郎さん・松緑さん・菊之助さん、他にも菊五郎さん梅玉さん雀右衛門さん亀蔵さん彌十郎さんなど豪華な顔ぶれで、でもやってることは桃太郎という学芸会感。しかし客席も客席で完全に親戚のおじちゃんおばちゃんの気持ちで親族のちびっこの門出を応援する気持ち。ほんとこういうとこ歌舞伎らしくておおらかだなーと思いますね。

「梅ごよみ」は染五郎さんの丹次郎、菊之助さんの芸者仇吉、勘九郎さんの芸者米八の三角関係(プラス許嫁のお蝶・児太郎さんもいるから四角関係?)を描いた物語。隅田川の船ですれ違うあたりの絵面とかすごくいいですね、キレイ。菊之助さんvs勘九郎さんの芸者の戦いが観られる作品。ふたりともプライド高そうな芸者っぷりで楽しい。最後に顔を見合わせて「しらけるねぇ〜」と肩を落とすところが好き。楽しく観られる作品でした。