パレード@東京芸術劇場プレイハウス


出典:SPICE「石丸幹二「今この時代だからこそ観て考えて頂きたい」〜日本初演ミュージカル『パレード』初日観劇レポート」

井上芳雄さんだったかな、このミュージカルの音楽がとてもいいという話をどこかでしていたので興味を持ったのが観に行くきっかけ。ググってみると楽しそうなタイトルとは裏腹に「実際にあった冤罪事件が題材」というヘビーなテーマに思わずひるみましたよね。ミュージカルでパレードってタイトルだったら絶対に楽しそうな作品だと思いますもの。とはいえ1999年のトニー賞脚本賞受賞作だというし、ブロードウェイ版を観た方の「重いだけじゃない」というような感想もみかけたので観に行くことにしました。
以下、ネタバレありますのでご覧になる予定の方はご注意ください。


で、感想。重い。予想以上に重ーーい!
題材になった事件をちゃんと調べずに観に行ったんですが、「私刑による絞首刑」っていうとんでもないバッドエンドだったんですね。スマホでレオ・フランクのwikipediaを見る時はご注意ください、ちょっぴり閲覧注意気味の画像も出てきますのでリンクは貼りません。(グロいというほどではないけれど、実際の死体の写真が出てくるので苦手な方はお気をつけて……PC版だとリンクを踏まなければ表示されません)しかも舞台でもそこをボカさず首に縄をかけられ足元の台を外される瞬間までが描かれていました。うっ……。

いや、芝居としてはとても良くできているんですよ。キャストも脇役までみんな上手いし、演出面でも絵的な美しさもありよく出来ていました。それだけにラストの救いのなさに打ちのめされてしまったというか。元ネタの事件を知っていたらもうちょっと心の準備が出来ていたかもしれませんけどね。ちょうど最近Twitterでも痴漢冤罪問題が話題になっていただけにタイムリーだったというのもあるのですが、終わってすぐに「いい舞台だったね!」「すごくいいからみんな観て!」などとお花畑な気持ちにはとてもなれないヘビーさでした。

演出面で驚いたのは開始5分で大量の紙吹雪が降ってくること。普通舞台では後のシーンに差し支えるからラストか休憩前くらいしか紙吹雪って降らないものですが、その常識を覆す演出。パレードのシーンのたびにかなりの量の紙吹雪が舞うので、舞台にはずっとカラフルな紙吹雪が降り積もったまま進行していました。バミリが見えなくなるけどいいのかな……と変なところが気になってしまいましたよ。カラフルな紙吹雪もそうですが、真っ赤なホリゾンドに大きな木の背景とか、絵的に印象的な場面が多かったです。にぎやかなパレードを背景にすることで登場人物の心情との対比が際立つ手法は「夏祭浪花鑑」みたいだなーとそんなことを思いながら観ていました。

差別や社会背景のせいで無実なのにスケープゴート的に冤罪に追い込まれてしまったという重いテーマは、個人的にはミュージカルよりもストレートプレイで観たい題材だなあという気がしましたね。正直まだ予想外の重さを受け止めてきれてなくて「うへえーっ」てげっそりした気分になっているんです。こういう気持ちになる作品って、観た後しばらくして気持ちが落ち着いたら「あああれやっぱりいい作品だったな、名作だな」って思うやつなんですけどね。今日観て今日感想を書いてるので、ちょっとテンションがダダ下がったままお届けしております。