劇団☆新感線「髑髏城の七人 Season 鳥」

劇場柿落としの初日以来、約5ヶ月ぶりのぐるぐる劇場行ってきました。阿部サダヲ池田成志コンビの出演からか「レッツゴー髑髏城」などと呼ばれる今回のSeason鳥、やー面白かった。花髑髏で軽くモニョっていた新感線ファンの皆さんからも好評は聞こえていたので期待していたのですが、確かに「あー新感線観てるー」って気持ちになる公演でした。もちろん細かいことは色々と気になる点もあるんですけれど、そういうの全部「細けえことはいいんだよ!」となぎ倒してくれるパワーがありましたね。
ストーリーの骨格はまあいつも通りなのですが、捨之介(阿部サダヲ)が冒頭ちょっと頭を病んじゃったうつけのふりをして登場するとか、「着流し姿の信長の影武者」ではなく「信長を支えていた忍びの者」のポジションに変わっているとか、キャラ設定ががらっと変わっています。まあ確かに従来の捨之介のキャラは阿部さんの雰囲気とは違いますものね。今までは兄弟だった兵庫と磯平のコンビも、兵庫(=福田転球)の年齢が上がったためか兵庫が父親で磯兵にあたる少吉(少路勇介)が息子という関係に。また天魔王(森山未來)と蘭兵衛(早乙女太一)の関係にも、信長の寵愛を受けていた蘭丸に対して天魔王が激しく嫉妬している、というこれまたその筋向けの設定が強化されていたような。

やはり今回新感線らしくて良かったのは笑いの量が多かった点でしょうかね。花はややシリアスに振っていて贋鉄斎(古田新太)のシーンだけが異常にウケる、というような雰囲気でしたが、今回は小劇場出身なメンバーが多いせいでしょうか、全編にちゃんと笑いが散りばめられていたと思います。冒頭がいきなり右近健一vs粟根まこと、といった劇団員対決なのも嬉しい。森山未來くんの天魔王も「イグザクトリィィィィ!」とか「バーット!」とか英語交じりのセリフでよく笑わせてくれて、だいぶ新感線ナイズされたキャラだったように思いました。

歌と踊りもまあ花に比べればだいぶ増えていてやはりMIKIKOさん振付の場面なんかは見応えあったのですが、それでももうちょっと踊ってくれてもいいんですぜ、と思ったのも確か。せっかくこのメンツならもうちょっとダンスの見せ場があってもいいのに、と。まあそれやっちゃうと3時間半でも時間的にキビシイからなんでしょうけれど。天魔王と蘭丸の絡みの場面、踊るように舞う殺陣とダンスの混ざったシーンに仕上がっていて見応えありましたね、天魔王に絡め取られる蘭丸の心象風景的な手下たちのダンスが「あーヅカっぽい演出!大好き!」と思いました。というか天魔王と蘭丸の殺陣、あの人たちなんなんでしょうね。素人の動体視力じゃ速すぎて見えない! 早乙女太一くんの動きの速さは前々から解ってはいましたが、それでもあの余裕たっぷりに武器をくるくる回しながらぶっ刺していくあたり、お口ポカーンになっちゃいますよ。

初日前、TVの特番でも殺陣に不安を抱える阿部さんの様子が映っていたり、初日近辺ではまだ動きが本調子じゃなかったという評判だった阿部さんの殺陣も、もう終盤戦に観たらもう完璧でしたね。47歳とは思えない軽快な身のこなし! 笑いどころはきっちり笑わせつつ劇場の空気をやすやすとコントロールする主役ぶり、いやもう最高でございました。

名物・百人斬りの場面、正直ちょっとワチャワチャし過ぎかなーという感じでちょっと高揚感に欠けましたかな。贋鉄斎の背中の砥石がくるくる回るのは「レッツゴー忍法帖」オマージュと言う感じで古いファンには嬉しいやつでしたけれど、贋鉄斎以外のメンバーも登場して百人斬りのお手伝いをしていてちょっと情報量多すぎた感が。まあ見せ場だからいろいろ工夫を凝らさなきゃいけないのは分かるんですけどねー、ここはやっぱり阿部&池田コンビだけをがっつり観たかった、というオールドファン心理でございました。

今回はやや後方の一番端っこ、という席だったので「ああーあんまり席よくないな―」と思ったのですが、実際座ってみると客席の外周に近い席なので回転するときのアトラクション感が前回より5割り増しくらいになってる感じでしたね。座る席位置でこんなに違うのか!とちょっと驚きました。普通の劇場ならセンターブロック前方こそ良席、なんですが、この劇場の機構を楽しむなら外周に近いはじっこの席か後方席が楽しいかもしれません。もちろん花から鳥に変わって映像や演出もブラッシュアップした部分もあるんでしょうけれど、「すごい、本当にアトラクションぽい!」「没入感ある!」と2回目にして思いましたからね。

それにしてもやはりちょっと文句があるのは舞台セット。前のシーズンとほとんど変わってないやーん! 無界の里が赤っぽくなったり贋鉄斎の洞窟がリニューアルしたりとかはもちろんあるんですが、マイナーチェンジレベルだったのでがっかりしました。まあ事前に友人に聞いてはいたので当日のショックは少なかったのですが、その話を聞いた時は「えええええええー」「マーーーーージっすかーーーーーー」とショックをうけて5分くらい立ち直れなかった有様で。まあ予算的な問題とか機構的な問題とかいろいろあるだろうからスタッフは責められないのですが、なんかもうちょっとなんとかならなかったのかなーと。せめて無界の里や髑髏城だけでももうちょっとがっつりゴテゴテに作り込めないのかなーとか。この先も風、月、極とまだ3シーズン残ってるのに、このくらいのマイナーチェンジしかされないのかな、と思うとちょっとモチベーション下がる感じは否めません。あたしは!役者だけじゃなくて!総合的なスタッフワークが観たいんだよー!(絶叫)

あと、やはりもともと二人一役の話だったところをちょこちょこ改変していってるので、ちょっと「あれっ?」と思うくだりがあるのも事実なんですが。二人一役でなくなった時点で「髑髏城に捕らえられていた捨之介が薬を盛られて天魔王の姿で沙霧たちに襲いかかる」って場面も無くしたらいいんじゃないのかなーとちょっと思ったりもするんですよね。「捨之介が天魔王の身代わりになって死ぬ」みたいなところもなんかやっぱりモニョモニョはします。ラストも、せっかく髑髏城脱出シーンの逆光シルエットで気持ちよく高揚してからのラスト家康とのやり取りあたりがどうにも冗長に感じられたりとか。あそこはもう天魔王の首を家康に差し出して普通にご褒美もらって解散ー!じゃダメなんですかね……

とかまあいろいろ不満もあるにはあるんですが、それでも冒頭にも書いたように「細けえことはいいんだよ!」と思わせてくれる公演でした。ああー確かにこのシーズンは通えますね、リピートしたかったです。ライビュでもいいからもう一回観たかったー! 早くも円盤待ちの心持ちです。