ベイビー・ドライバー

ツイッター上で「こんなにいい映画なのに上映館少なすぎる!」という悲鳴があちこちで聞かれた映画、せっかく市内でレディースデーにやってるんなら、と観に行きました。音楽でノリノリのクライム・アクション、という評判だったのでもっと能天気なカーチェイス作品かと思ってたんですけど、案外悲壮感漂ってましたね。想像してたのとはちょっと違いましたが、それでも見ごたえのある面白い作品でした!

子供の頃の交通事故で両親を失い、その事故の影響で耳鳴りがとまらず常にiPodで音楽を聴き続けている少年・ベイビー。天才的なドライビングテクニックで強盗グループの運転手役を務めている。借金返済のため心ならずも犯罪に手は染めているものの根は優しく、いまは車椅子生活で聾唖の里親・ジョーの面倒を見ている。あと2回仕事を済ませれば足を洗える、というタイミングで出会ったウエイトレスのデボラといい雰囲気に。ふたりで遠くへ、という夢を抱きながら最後の仕事へ向かうが、チームのメンバーがたまたま通りかかったデボラの店へ行こうと言い出して……といったあらすじ。

借金返済のために悪事に加担しているけど本当は心根の優しい少年が、恋人と出会って足を洗おうとするけど悪い人たちがそれを許してくれなくて、さあどうなる……という大枠では定番すぎるほど定番な物語なんだけど、終盤は先が読めなくてハラハラ。ラストの一番の大仕事の場面でカーチェイスじゃなくて生身で走って逃走、の展開も意外過ぎて笑っちゃったけど、ボス役のケヴィン・スペイシーが悪い人と見せかけていい人、と見せかけてやっぱ悪い人で、とみせかけて……などっちに振れるのかわかんない感じも最後までハラハラ。チームのメンバーのバディ(ジョン・ハム)のイケオジっぷりもかっこよかったー。デボラの店で待ち構えてた時のあの凄みと色気ね!濡れたおっさんのエロさったら無かった。

そんでもってベイビー役アンセル・エルゴートの可愛さったらね。血を見るとちょっと動揺しちゃってるのが分かったり、素人の車を奪う時にちゃんと同乗の赤ちゃんをおろしてあげたりとか鞄を渡してあげたりとか優しいところがかわいくてほんと感情移入半端ない。あんなんもうベイビーを好きにならずにいられないものね。だからこそ「ラストの大仕事」で失敗するフラグがビンビンに立ってるのハラハラするし、実際にどんどん悪い方に転がっていくの「ああーどうなんのー」ってドキドキしちゃう。ベイビーとデボラを「ボニーとクライド」に例える場面もあるから「ああーこのままふたり死んじゃうラストなのー!?イヤー!」って思ったんだけど、いい子たちだったからあの終わり方で良かった。ほんとホッとした……!

映画は本当におもしろくてオススメ!なんですけど、「カーチェイス版ララランド」とか「まるでミュージカル」っていう宣伝文句やキャッチコピーがついてるの、ちょっとモニョっとするんですよねー。MV的に「音楽と映像がカッコイイ」気持ちよさはあるんですけど、ミュージカルのエモさとはまたそれって別の物であって。ミュージカル好きがこのキャッチコピーをみてミュージカル感を求めていくとそこは満たされないよ?ってミューオタとしてはちょっと思いました。音楽の使い方が絶妙だからそう言いたくなる気持ちは分からんではないんですけどねー。しかしこれ音楽に造形の深い人はもっと楽しい映画なのでしょうね、「ここでこの曲!」みたいな楽しさがきっとあるんだと思います。

冒頭6分が公開されてるので気になる方はぜひ!↓