宝塚雪組全国ツアー公演「琥珀色の雨に濡れて/”D”ramatic S!」@相模女子大グリーンホール

行ってきましたー望海風斗さんトップ就任プレお披露目公演全国ツアー! ファンになってまだ2〜3年程度とはいえ、「やっと大羽根背負った贔屓の姿が見られた……!」と感無量でございました。明日海りおさんの時もトップ就任の前から好きだったんですけど、わりと若いうちにトップ就任しちゃったんでここまで感慨は無かったんですよね。主演公演も観ていたとはいえ、やはり「トップ」としてセンターに立つ姿は格別というか、感慨深いものがあります。

さて「琥珀色の雨に濡れて」。1984年初演で4回目の再演でしょうか。1920年代のフランスを舞台にした叙情的な大人の恋物語……といえばまあ聞こえは良いんですが、不倫モノには違いないので、ちょっと感情移入しづらい物語ではあったりします。青年貴族のクロードが美しいマヌカン(今で言うモデル)のシャロンに出会って恋をしてしまい、お互いに想いを寄せつつも、最悪のタイミングでシャロンの婚約者・フランソワーズが現れて一度は絶縁。なんやかやシャロンとフランソワーズは結婚しうまくいってるように見えた一年後、ばったりとクロードとフランソワーズが再会。思わずお互いに盛り上がってしまいオリエント急行に乗ってマジョレ湖を見に行こうと約束するものの、その出発直前にまたしてもフランソワーズ登場により不倫旅行は未遂に終わる……という物語。

トップ娘役がシャロンなのでまあここはクロード&シャロンのふたりに感情移入すべきなんでしょうけれど、フランソワーズには何の非も落ち度もないだけになんとも気の毒な話。クロードは真面目で不器用なタイプ故にシャロンへの思いを上手く処理できずこうなっちゃった、という描き方なのでまあ嫌な感じはないのですが、それでも「婚約者がいるのに他の女のことばっかり考えてる」とか「家に何も言わずに不倫旅行を決行」とか行動そのものは割とクズですし、フランソワーズの前ですら彼女の気持ちを慮りもせずシャロンと会話しちゃったりするので、そりゃフランソワーズも「私の前で私を通り越した言葉を交わすのはやめて!」とキレたくもなるというものです。しかもここでシャロンに去られた後のクロード、フランソワーズにむかって「ひとりに…してくれないか…」の台詞。お前が!言う⁉︎ って心の中でつっこみますよね。傷ついてるのはフランソワーズのほうだっつーの! お前に今傷つく権利はないっつーの!それどころかさらに、ラストは結局クロードがシャロンを忘れられずにマジョレ湖まで行ってますしね……「行くのかよ!?」って思わず全力でツッコみましたよ。フランソワーズ、別れたほうがいい。絶対。クロードは主役だけあってさすがにクズな描かれ方ではないんですが、行動そのものはまあクズで残酷です。まあこれは男性視点で観たら名作なのは分かるんですけどね……フランソワーズの兄で仕事仲間のミッシェルもクロードを責めたりせず一時の浮気として理解を見せたりして全体的にクロードに優しい展開。女性視点で見ると正直どうなんだこの不倫メロドラマ、と思いますよ。これもうクロードは戒めに仕事も恋も友人も何もかも失っていい展開だと思うんですけど……。

まあそんなストーリー面での好き嫌いはあると思いますし、古い作品なので全体的にクラシックな感じではありますが。それでも物語としては特に破綻も少なくしっとりと叙情的な雰囲気で大人の恋が描かれていて、うっかりフランソワーズにさえ感情移入しなければまあ悪くない作品でもありました。望海風斗さんのクロードはさすがの安定感でしたね。シャロン役にはまだ幼すぎるんじゃないの、と心配されていた真彩希帆ちゃんでしたが、なんのなんの、しっとりと大人の色気を醸し出していて何の違和感もありませんでした。これもうちょっと上の学年の娘役がやるともっと玄人感が出るんでしょうけどね。「妖精のように神秘的」というクロードの脳内フィルターがかかった状態のシャロン、ていう感じでこれはこれで説得力あったんじゃないでしょうか。過去作のシャロンと比べるとどう見えるのかわかりませんが、初見で特に役とつりあわない感じはありませんでした。まあそれにトップコンビの歌の巧さよ! 久しぶりの歌ウマトップコンビ爆誕て感じですよ。どんな難メロディも自在に歌いこなせそうな安心感。耳が幸せ! あとね、一夜を過ごした後のクロードが一気にエロくなるのが凄かったです。辛抱たまらんといった風情でシャロンを後ろから抱きしめながら吐息混じりに言う「抱きたい……」のセリフに頭がパーンとなりましたよね。そこまで真面目だっただけに破壊力すごい……(ふらふら)。


さてショー「”D”ramatic S!」は早霧せいなさんサヨナラ公演のショー「Dramatic ”S”!」を改訂したもの。さすがにこないだ観たばかりで早霧さんを思い出してしまいそうだし、全国ツアーの半分のメンバーでは物足りなさもあるのでは……と心配していましたが、なんのなんの! 1/3くらいは曲も変えてあったんでしょうかね、客席降りもたっぷり3回あるし、初めて観るショーのように楽しめましたよ。

サヨナラ公演では早霧さんも涙を浮かべながら歌い上げていてファンの涙を搾り取った「絆」の場面、あまりに印象的だったのでアレどうするんだろうと思っていましたが、今度は「希望」をテーマにした新曲で衣装も変えて新たに生まれ変わっていました。新たな雪組を率いて旅立つというトップさんの決意表明であり、「永遠にお前を愛する」的な歌詞を娘役の目をみて歌いあげるというプロポーズ的な曲でもあり。「みんなでもっともっと高く羽ばたこう」というサビの高揚感あふれるメロディと組子たちの熱いダンスに思わず泣きそうになりましたよね。とてもいい場面でした。中村一徳先生ありがとうありがとう……。

コーヒールンバの場面では男役3人がご当地の名産品などを色気たっぷりに囁くのが恒例となってるようなのですが。仙台では「ずんだァッ…」「ずんだ……ッ」とか「牛タン……!」「牛タン…ッ!」、金沢では「兼六園……!」ってな感じだったらしく。横浜ならともかく相模原はあんまり名産品ないし何ていうのかなー、施設名もアリならJAXAかな? と予想していたら、私がみた回ではまんまと「JAXA……!」って言ってました。予想当たった(笑)。

「俺から目を逸らすな」的な歌詞を歌いながらトップさんが一人で客席に降りて歌うソロ、まあ最前列のお客様には大サービスでしたね。ひとりひとり握手したりウインク飛ばしたりして羨ましい。にこやかな笑顔でひとしきりファンサービスしてたかと思いきや「ドラマティック!!」の歌詞のところではまるで威嚇するかのように振り向いたりしていて、そのたびに上がる嬌声。楽しかった。デュエットダンスでは珍しく歌まじりのダンスでしたね。さすがにバキバキに踊る場面では歌ナシでしたが、歌から始まってのデュエダン、そして望海ソロ、コンビでハモリ、という感じで、歌ウマコンビならではのサービスかなぁとちょっと思いました。

そしていよいよラストのパレード! いやーほんと感慨深い。大羽根背負った望海さんの姿に思わず胸がいっぱいですよ。カーテンコールでは全国ツアー恒例の「ご当地出身者紹介」があるのですが、ファンはもちろん望海さんが神奈川出身だと知ってますからね。待ってました、な雰囲気で歓声。いやーそれにしても楽しかった! 満足! です!