宝塚花組「メランコリック・ジゴロ/EXCITER 2018」@神奈川県民ホール

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しかしすごいねこのポスターデザイン。稲妻!
 
 
行ってきました花組全国ツアー公演。二番手柚香光ちゃんの主演作! 今回は95期研10の柚香光さん(2番手)と、その同期の水美舞斗さん(5番手)の「れいまい」コンビが1番手2番手のポジションになるという、めったにお目にかかれないものが観られるわけで楽しみにしておりました。芝居「メランコリック・ジゴロ」では悪友同士といった間柄だし、ショー「EXCITER2018」でもシンメになる場面が多く、「ああー劇団さんわかってらっしゃる!」「れいまい尊い」という気持ちでいっぱいになる二本立てでございました。

 

「メランコリック・ジゴロ」は正塚晴彦先生の作品。何度目かの再演ですが私は今回初見です。パトロンの女性にフラれて住む場所すら無くなったジゴロのダニエル(柚香)は、ジゴロ仲間のスタン(水美)にそそのかされて、睡眠口座に眠る遺産を相続者アントワンになりすまして受け取る詐欺の話に乗ります。しかしターゲットの口座にたいした金はなく、アテが外れて酒場でバカ騒ぎしているところへ、アントワンの妹・フェリシア(舞空瞳)がやってきて15年ぶりの再会に感動するので何も言えなくなるダニエル。さらにアントワンの父に大金を貸したという怪しげな男フォンダリ(羽立光来)たちがやってきて、ダニエルに金を返すように迫るからさあ大変……といった物語。
 
おそらくこれまでこの作品を主演してきた安寿ミラさんや真飛聖さんなんかはもっと大人っぽいジゴロだったんじゃないかなーと思うんですが、柚香さん&水美さんのジゴロは若さゆえの傲慢さや危なっかしさがある悪ガキっぷり。ダニエルはただのヒモというよりは女性からせしめた金で大学に通ったりしているあたり、知識や上流階級への憧憬と執着が垣間見えたり。スタンの方は休眠口座に目をつけたりするあたり、もはやジゴロというよりは詐欺師。機を見るに敏というか、危ないと見るやダニエルを見捨てて逃げようとしたりするあたりにこすっからいキャラが出てて可愛かったです。ヒロインのフェリシア・舞空瞳ちゃん、どんくさそうな設定ながらそれをウザく見せない絶妙のさじ加減。苦労人ながら必死に生きようとしている感のあるいじらしさ、とても可愛かったです。演技もいいし歌もうまい。もうひとりのヒロイン、ティーナ役の華優希ちゃんも可愛かった! こちらはスタン=ジゴロの情婦という設定で後先考えずに爆買いしちゃったりするちょっと頭の悪い感じの子なんですが、ショッキングピンクの服を着てもさほど下品な感じはなく可愛らしく仕上がっていました。買ったものを返品しろと言われて泣きながら身ぐるみ剥がされる場面、自業自得なんだけど可哀想でおかしかった。華ちゃんはほんとコメディが似合うなあ!
 
脇キャラもユニーク。ただの浮浪者に組長(高翔みず希)さん?と思っていたらやはりしっかりキーパーソンだったり。しかし「酒をおごってくれたから悪いやつじゃない」って娘に言うけど、よく見て〜彼はジゴロよ〜と思ったり。フォンダリ役の羽立光来さん、専科さんがやりそうな役ですけどね、こんなメインキャストの大きな役をやるの初めて観たような。大柄な体格や迫力で怖さもありつつどこか愛嬌もあり、いい悪役っぷりでした。その息子の飛龍つかささんも頭悪そうなキャラで可愛かったですね。あと「メサイア」の代役でも目を引いた一之瀬航季くん、スタンに凄まれる可哀想な弁護士役マチウ、とても可愛かったですね。最近めきめき目を引く存在になってきたような。花組は顔のわかる生徒さんが多いから目が忙しい〜。
 
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ショー「EXCITER2018」も再演モノですが、楽しいこと間違いなしのショーなので期待して来ました。ちょうど去年の全国ツアーで明日海りおさん主演版「EXCITER2017」を観たばかりですもんね。まあしかし二年連続で同じショーを全国ツアーで主演を変えて再演ってあまりなかったような。それだけ鉄板の演目ということですかね。今回も楽しかったです。体感10分!
 
毎度おなじみチェンジボックスの場面では、バカ社長のレイ(前回から役を引き継いでる!)が壊れたチェンジボックスのせいですっかりダサくなってしまうという従来と逆パターン。そこへやってきた修理工が「ビューティーマイティー」なんですが、まあこの水美舞斗さんのスタイリングが「オールバック・ヒョウ柄のツナギ・開襟・やたらセクシー・筋肉質・修理工」と、なんかもう新宿二丁目テイストはい満貫、という感じで、藤井先生の性癖がダダ漏れな感じなのがツラかったです(笑いをこらえる意味で)。ダサくなってしょぼくれたれいちゃんがでっかい肉とおにぎりをモソモソかじってるのも可愛かった。各キャラにアテガキのシーンなんですね。
 
今回は完全Wヒロインというか、華優希ちゃんと舞空瞳ちゃんが完全に同格ヒロインの扱いだったのが印象的でした。柚香光さんが次期トップになる時にどちらを娘役トップにするか、そのお嫁さん選びのお試しをやってるような印象が強い構成でしたね……。通常はトップコンビが2人で踊る終盤のデュエットダンスも、「柚香・水美×華・舞空」の2組4人で途中お相手をチェンジしながら踊ってたくらいですからね。「はいからさんが通る」「ポーの一族」で柚香さんのお相手役だった華ちゃんでもはや決まりなのかなと思っていましたが、ここへ来ての舞空さん爆上げ状態、もうどっちがトップに来てもおかしくないですね。華ちゃんは柚香さんとの見た目のバランスがすごくいいような気がするし、舞空さんはもうどこに出しても恥ずかしくないほど演技も歌もダンスも仕上がってる感じ。ほんとキレッキレに踊れるのでちょっとびっくりしましたね、あれで入団3年目とは思えない。次期トップであろう柚香さんの相手役でなくても、間違いなくどこかのタイミングでトップになる生徒さんだろうなあ、文句のつけようがないなあと思いながら観ていました。(ああ〜でも城妃美伶ちゃんのトップ娘役も見たいんじゃ〜)
 
花組の顔としてセンターに立つ柚香光さん。やはり全国ツアー主演となると別箱主演とはわけが違うのでしょうね。「はいからさん」の時はキャラのイメージもあってか余裕が感じられたのですが、今回は「すごく一生懸命がんばってる……!」という感じがありありと出ていて胸熱でした。と同時に、同じ演目だけにやはり去年の明日海りおさんの風格と貫禄も思い出してしまい、「ああ、みりおはやっぱり凄いんだなあ」としみじみしてしまう公演でもありました。みりおのあの「脂の乗り切ったトップさん」としての余裕を思い出すと、そりゃあもうどうしようもなく差は歴然とあるんですが、それでも、だからこそ、まだ少し青いれいちゃんのこの一生懸命な姿にもまた胸を打たれるわけで。れいちゃんがいつか花組のトップとして余裕と風格のある姿を見せてくれた時に、今日の公演のことも懐かしく思い出すんだろうなあと、そんなことを思いました。