宝塚雪組全国ツアー公演「誠の群像/SUPER VOYAGER!」

全国ツアー相模原公演、行ってまいりました! 楽しかった!(3/31ソワレ)

「誠の群像」は麻路さきさん時代の1997年初演、土方歳三を主演にした作品で脚本演出は石田昌也先生。この作品はトップの望海風斗さんがトーク番組で「宝塚を観たことない人にどんな作品を薦める?」というような内容のテーマの時に、「他の(初心者向けの)作品を色々見せた上で、もう大丈夫かなと思ったら最後に薦めるのが『誠の群像』!」とおっしゃっていて。「なるほどそういうタイプの作品……」とその時にちょっと思いました。


オープニングは隊士揃い踏みでの歌。これ初演では大階段にズラリと並んでやったんですよねえ、舞台写真はみましたが「あーたしかにこれは大劇場で観たらカッコ良かっただろうなあ!」という感じ。ツアーなので人数も少なく階段も少ないのでそこまでの迫力は出ませんが、望海さん彩風さんのお歌でねじ伏せてる感じ。まあでも曲調もちょっと昭和感ありますし、「新撰組は、今日も行く〜♪」という歌詞も軽いノリの戦隊モノっぽくて、「あっはい、やっぱり1990年代のタカラヅカってこんな感じなんですね」と、この先一時間半の覚悟を決めるオープニングではありました。


暗転の多い繋ぎ方や幕前で芝居してる間に舞台装置を転換、というタイプの「古い演出のお芝居」で、全体的に「やはり20年前のタカラヅカだなー」という印象でした。何かあるたびに「効果音ババーン!」「暗転!」ってなるの、もはやギャグかなと思うほど昭和な演出ですね……。脚本も芹沢鴨がいる時代の新撰組から五稜郭までを1時間半でやるので、ものすごいダイジェスト感も否めなく。 終盤、近藤勇沖田総司も倒れ、ひとり死に場所を探して北へ向かう土方……のあたりからはやはり「古い時代に殉じた最後のサムライ」という哀れさと切なさが滲み出てきてとても良かったんですが、中盤まではブツ切りだったり唐突だったりな展開で、新撰組のことをよく知らないで見てるとどうなのかなあと思う内容でした。まあ大河ドラマ新選組!」の記憶があるので色々頭の中で補完しながら観ましたけれど。新撰組を描く作品って新撰組の立ち位置をどう描くかってとこがポイントかと思うんですけれど、ちょっとその辺は物足りなかったかなあという感じでした。一応中盤に見せ場として池田屋事件も出てはくるんですけど、前半は「局中法度に反したら切腹」ばかりが出てきて、「人斬り集団」というよりは「身内を粛清してばかりのゴタゴタ集団」という描き方に見えてしまったのが物足りなさの原因だったかなあと。


初演では田代彪蔵がオネエっぽい役だったり加納惣三郎との男色を茶化していたりというギャグっぽい場面があったようなのですが、今回はその辺がっさりカットしてますね。初演の映像チラリと見る限り、今の時代あれで笑いを取るのはポリコレ的にどうなんだろうというのがありますので、無くなって正解!大正解!という感じです。笑いを狙った寒い場面はほとんどなかったので(勝海舟を負け海舟と呼ぶシーンくらいでしょうか)、これはいい改編だったかと思います。


ここからちょっと下世話な話するので、すみれコード気にする方はこの段落は飛ばして下さい。ヒロインであるお小夜さんと土方の恋愛、まあ尺が足りないから「いつ惚れた!?」みたいなのがほとんど描写されてないんですよね。鬼の副長・土方の冷静な顔が続いた後でのお小夜さんとの会話で微かに動揺が走る土方の様子とかはかなり萌えどころで楽しく見たんですけれど。死に場所を求める土方とお小夜さんが再会して「ここを去るまであと2日の猶予がある」というこの状況で「私を……はしたない女だと思ってくださっても構いません……」「私はこれから乱心いたします」というお小夜の台詞(←娘役になんという台詞を言わせるんだ……石田先生め……)からのふたりの抱擁、この状況どう考えてもネットスラングで言うところの『このあと滅茶苦茶セッ(以下略)』ですよね!?ってなって、脳内でニコニコ動画弾幕が流れましたよね。しかもこの場面に続いてあじさいの妖精さんたちとふわふわ舞い踊る土方&お小夜……! 二日間……まる二日間に渡って紫陽花が咲き続けちゃったんですね……もうすぐ死ぬって土方の状況考えたら、そらもうめちゃくちゃ咲きますよね……って……///  暗喩! 暗喩〜! と思って腹筋壊れるかと思いました。いやもうホントすみません。もうちょっとここは丁寧にオブラートにくるんで石田先生〜、と思いました。休憩時間にこの話を同行者にしたら「山南さんだって、あのあと明里とまる一日……だよ……? 総司が来たの朝っぽい感じだったのに『明日の朝迎えに来ます』って言ってたじゃん……朝から次の朝まで……」って言うので爆笑。うっかり笑ってしまったけど、あれは山南さんに逃げる猶予を与えるための一日だよー!


まあ脚本演出には色々とありますけれど、生徒はみんな良かったです! もう「和物の雪組」は盤石というか、和装の立ち振舞にみんな安定感があって安心して見ていられます。宝塚の和物って基本そんなに好きじゃなかったんですが、雪組のおかげで忌避感がなくなってきました。


土方歳三役の望海風斗さん、かっこよかったー。切れ長のアイメイクは麻路さきさんに寄せたんでしょうかね。沖田総司にお小夜に惚れたことを告白するくだり、唐突ではあるんだけど、鬼の土方とその懐に入り込んだかわいい沖田の関係性が出る場面で良いです。小夜の荷物を「貸しなさい」と持ってあげる場面とかも萌えますよねー。望海さんの土方は禁欲的な雰囲気からにじみ出るエロさ、があってとても良かったと思います。しかしロベスピエールに続いて粛清しまくる役ってどうなんだ、という気も。

山南さんは彩風咲奈さん、こちらも「最初は主人公の友だちだけど主人公のやり方とあわなくなって処刑」というダントンと似たようなポジション。まあでも今の時代からみると一番感情移入しやすい役ですよね。おいしい。山南処刑後は榎本武揚として洋装&ヒゲで登場するので咲ちゃんファンには一粒で二度美味しい感じです。勝海舟の彩凪翔さん、かっこいいー。剣を抜く新撰組隊士たちにむかってまったく動じずに「早くしまえ」という場面、ほんとかっこいい。沖田総司役は綾凰華ちゃん、今回もカワイイ弟分的ポジション。剣の達人なのにまだ幼さの残る感じと、女を斬り殺した後に「かわいそうだったなあ」とボヤく感じ、ほんとこの時代の価値観の怖さを体現してる感じで実に良かったです。


   *   *   *


さてショーはおなじみ「SUPER VOYAGER!」。ショー全体の感想は大劇場の時に書いたので、大劇場バージョンとの違いを中心に書いていきますね。


ツアー公演で人数が半分いないということもあって、冒頭オープニングの歌い継ぎは人員配置に変更が。冒頭のテーマ曲の歌い継ぎは彩海せら&眞ノ宮るいくん→綾凰華ちゃん→彩凪翔さん→彩風咲奈ちゃん→奏乃はるとさんの順。客席降りも大劇場と同じようにありました。ツアー公演だからか客席のポンポン率は2〜3割程度といったところですかね、あんまり多くなかったように思います。関東公演はもうちょっとリピーター多いかな?とも思ってたんですが。


「希望の歌」からロケット、センターのロケットガールは綾凰華ちゃんから潤花ちゃんに変更。やっぱり人数半分だからちょっとロケット少ない感じですね。「海の見える丘」のセンターは彩風咲奈さん&朝月希和さんで大劇場と同じ。彩風さんの後ろふたりの男役が永久輝せあ&縣千コンビから綾凰華&眞ノ宮るいコンビに変更。ここの眞ノ宮くんがまあキラッキラの笑顔でキレッキレに踊るので、まーかわいいったら! 彩風さん見たいのに時々視線を奪われてしまって「ああ〜目が足りない〜」ってなりましたよね。綾凰華ちゃんも好きなのに! ああ!


プロヴァンスの風」は大劇場では銀橋から登場していた望海さんは客席から登場。ねっとりと客席に視線を這わせながら舞台へ。舞台の映像は無かったけどあんまり気にならなかったですね、むしろトップさんに集中できて良かった。ここのコート男役群舞、大劇場でも同じようにやってたとは思うんだけど、ツアー会場の狭い舞台のほうが視線が散らなくて群舞の密度があって良かったです。大劇場で朝美絢さんがやっていた金髪美女はなんと眞ノ宮るいくん。わっかい! あーさの時は望海さんの元カノで今は彩凪さんの女、みたいな設定に見えたんですが、今回は「望海さんのお隣に住んでた顔なじみの10歳くらいの少女が、ムショから出てきたら19歳くらいに成長して現れた」「今は女衒の凪様に売春させられてる」「口紅もハイヒールも背伸びしてやってます」みたいな設定に見えますね……まあコレはコレでストーリーとしては成立してる気がしますが。あーさとは5学年差があるので比べるのは酷ですが、印象違いすぎますねえ。笑顔がワンコのようでたいへんカワイイです。まあしかし今思うと望海&彩凪と対等に渡り合うあーさは凄かったんだなあ……とも。


さて中詰のコールポーターメドレーのラテン場面。ここもチラホラ人員配置に変更が。永久輝せあさんが女装して望海さんとふたりで踊る場面は綾凰華さんに変更になってましたね。望海さんのラテンのお衣装も変更アリ。望海さんの日替り掛け声アドリブは厚木名物の「とん漬け! 鮎もなか! シロコロホルモン!……厚木!」だったようです(とん漬けは聞き取れなくて「?」となりました。いささか客席もざわついてたような……)。さすがに相模原だけではネタがなくなると前回気づいたんでしょうか、マチネは鎌倉推しだったそうなので神奈川全般をネタにしていくスタイルにしたようです。中詰後の朝美絢さんのナンバーは煌羽レオさんさんの「Night and Day」に変更。バチコンバチコンと音が聞こえそうなほどのウインク!


望海さんの日記の場面も大劇場であった映像はなくなっていましたが、ここはやっぱり映像あるとそちらに気を取られてしまうので、映像がなくてむしろ歌にしっかり集中できるので良かったです。いい歌……。続いての「Daiamond show time」、大階段でのマスゲームがなくなるだろうけどどうするのかなあと思ったら曲がコーラスライン風のアレンジになっていて、途中でケーン(杖)を離して帽子だけの振付になるので、まるで「One」!ああーいいです最高です。男役が帽子とって髪の毛を見せてくれるのもいい。このツアーバージョンも楽しい!


大劇場ではGenerationsの「Hard Knock Days」を歌っていたアイドルグループ暴風雪は、5人組の「Snow Storm」に変更。曲がわからなかったので調べたら、東海地方のご当地アイドルBOYS AND MENの「Voyager」って曲のようですね。タイトルのVOYAGER繋がりなんでしょうけれど、LDHやジャニーズだけでなくご当地アイドルまでとは野口先生の守備範囲広いですね……


沙央くらまさんのSailing dayから変更になったのは真彩希帆ちゃんメインでの「Diamonds Are A Girl's Best Friends」(紳士は金髪がお好き、とか、ムーラン・ルージュとか)。この曲まえに咲妃みゆさんもショーで歌ってましたかね。赤いパンツスーツで黒燕尾の男役を侍らせて歌うきいちゃん、とてもいいです! 「Diamond だいすき」と歌う場面は「だいもん だいすき」に聞こえるように歌ってますよねー絶対! なかなか難易度の高そうな振付もあったりして、見応えのある場面になってました。娘トップ紅一点で黒燕尾の男役が群れで侍るというこの絵面、とても好みです。良かった!

彩風さんの「情熱の一夜」、望海さんの「アンダルシアに憧れて」あたりは群舞の人数が減ってる程度で大きな変更はナシ。大劇場の時はアンダルシアでスタンバイする大階段の男役って照明暗いからあんまり見えないんですけど、今回は照明の都合で割とよく見えたので、「ああー望海さんと彩風さんどっち見るか迷う!目が足りない!」ってなってしまいましたよね。アンダルシアでは「トニーのやつがしくじった」あたりで望海さんのウィンクが飛んできて心臓が止まるかと思いました。ウワー! 思わず脳内反芻してしまって一瞬記憶が飛んでいます。


デュエットダンスからのエピローグ、今回はエピローグでも客席降りサービスがありましたね、楽しい。私今回前方はじっこ席だったんですけど、ステージで一番近い位置に立っていた彩風さんがこちらの方を見渡してにっこり笑って「うん」って可愛く頷いてくれたので、3時間の記憶がすべて一瞬の咲奈スマイルに上書き消去されてしまうところでした。「今……私に笑ってくれた……はわわ……!」ってなりますねあれは! 笑顔ひとつで彩風さんに落ちそうになるなんて私はなんてチョロい女なんだ! と思ってしまいました。


カーテンコールでは全国ツアー恒例の県内出身者ご紹介あり。横浜市出身望海さんも楽しそうに「神奈川は俺の物だー!」と叫んでくださったので私もどうやら望海さんの物の一部のようです(錯乱)。「途中聞きなれない単語が出てきたかと思いますが(厚木名物のあたりの話ですね)、神奈川には美味しいものがたくさん転がってますので(転がって……!?)ぜひ楽しんでいってください」といったようなご挨拶でした。この若干ゆるゆるな雰囲気もまたツアー公演の良さ。 SUPER VOYAGERはもう映像でも何度も見てしまったのでもうお腹いっぱいかなーと思っていましたが、なんだかんだで体感5分で終わってしまいました。いやー楽しかった!