宝塚宙組「群盗-Die Räuber-」@日本青年館ホール

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出典:【公演評】宙組『群盗-Die Räuber-』 -WEBRONZA 朝日新聞社の言論サイト

 

宙組二番手芹香斗亜さんの主演舞台。近年めきめきと男ぶりの上がってるキキちゃんの主演公演ですし、翻訳戯曲作品とはいえ久々に2.5次元じゃない小柳奈穂子先生の作品が見られる〜、と思ってチケットを取りました。「群盗」はフリードリヒ・フォン・シラーの作品で、18世紀のドイツが舞台。貴族の息子カールは、腹違いの弟・フランツの策略で父から勘当されてしまい、盗賊団の投手となって義賊活動を行う。反体制派の英雄として祭り上がられたカールと仲間たちだったが、やがて貴族であることがバレ民衆からも批判され追い詰められてしまう。逃げ込んだ森で出会った青年から故郷の窮状を聞いたカールは、従姉妹のアマーリアを救うために故郷へと戻る決意をする……といったストーリー。

 

さすがにあまり上演されない古い戯曲だけあってか、荒削り感の否めない感じはあるし、ラストも日本の宗教観や死生観からすると「なんでそこでアマーリア死ななきゃならんのん……?」という気持ちにはなるのですが。そのへんのツッコミどころをねじ伏せてくれるのが芹香斗亜さんの座長力、そして小柳先生の演出力、という感じがしました。今回も耳残りするアニソンばりのキャッチーなテーマソングを要所要所で使い、「青春群像劇」として若手ひとりひとりに個性を与えた小柳先生の手腕はさすが座付き作家!これぞ小柳奈穂子!という気がしました。兄弟の愛憎うずまく確執とかオタクの大好きなやつだと思うんですけど、親世代・子世代のそれぞれの確執にそれぞれドラマがあってその辺とても好みでした。「兄上こそ、一体何人殺してきたんですか!」とかあの表情で言わせるのほんとツボすぎて。

 

 

そして何より座長・芹香斗亜のセンターに立つ求心力ね! 怖いもの知らずのキラキラしたまっすぐな瞳から、追い詰められた窮地で見せる振り向きざまの表情とか……一幕ラストのあの表情最高でしたね。前髪からのぞく暗い目の正義! キキちゃんはほんと花から宙への組替え前後あたりからすごくオトコっぷりが上がったような気がします。組替えをはさんだせいでトップのポジションにたどり着くまでに足止め感もありますが、それでもこうやって別箱主演のアタリ役や美味しい二番手役が色々観られるのはファンにとっても美味しいことなんじゃないかと思ったりします。もうほんとこのセンター力、いつトップになってもなんの不安もない仕上がり具合ですよねー。ヒロインの天彩峰里ちゃんもすごく良かった。凛とした表情が実に美しく、こちらももういつセンターに立ってもおかしくないほどの仕上がり具合。(娘役はほんとどの組も戦国時代だなあ……!)

 

それに今回ほんとほとんど新人公演学年じゃないの?ってくらい若手ばっかりで、群盗メンバーも100期以下の子がゴロゴロしてるような状態だったのですが、その若い生徒たちが本当にキャラが立ってて芝居もしっかり見せてくれたのは、演出家の指導や各生徒のがんばりももちろんあっただろうと思うんですが、キキちゃんの座長力でここまでみんなをひっぱりあげたんだろうな、というのをちょっとカーテンコールの空気感なんかからも感じました。下級生たちが本当に充実感とやりがいに満ちた顔でキラキラしてたのが印象的です。本当にこの若手のひたむきさが戯曲のテーマとうまくリンクしていて、「疾走感と焦燥感に満ちた熱い青春群像劇」として、観客の心を打つ満足感の高い公演になっていたと思います。作品としては不完全な部分もそこかしこにあった気がしますが、それでも「この作品が好き!」「ハマった!」という宙組ファンは多いのではないかな、と思わせる内容でした。

 

宙組公演 『群盗-Die Räuber-』 | 宝塚歌劇公式ホームページ

芹香斗亜率いる若手の力量を感じさせる宝塚宙組公演『群盗─Die Räuber─』 | えんぶの情報サイト 演劇キック