「映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」

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長女が小説版を発売日に購入してすぐに読み終え、「観たいー」と言っていた映画だったのですが、正直「ゆるキャラの子供向け映画とかちょっと退屈そう……夏休みや冬休みのイベントとしてならいいけど、この時期に子連れで映画館とかたいへん……」と思っていてあまり乗り気ではありませんでした。が。公開されるなりTwitter上に吹き荒れる賛辞。「アンパンマンかと思いきや攻殻機動隊だったくらいの衝撃」「実質Fate」などなど、「本当なの??」と疑うような感想が次々流れてきて、まあそれがネタだとしてもどうやら面白いのは間違いないらしい、ということで家族で観てきました。最初は「行ってきて〜」みたいな反応だった夫も、会社でも話題になってるとかでさすがに興味を持ったらしく、めずらしく家族4人での鑑賞となりました。(家族4人でも合計3600円、こんな時こそイオンオーナーズカードの威力が火を噴くぜ!)

 

話の冒頭こそまったりとしたゆるい展開で、「かわいいのはかわいいけど……このテンポで65分の映画が本当に面白くなるのかな……」と不安に思ったりもしたのですが。喫茶すみっこの地下室で「飛び出す絵本」の世界に吸い込まれたすみっコたちが、おなじみの童話の世界ですったもんだ……と、かわいいとかわいいの相乗効果で次第にもりあがってきます。そして自分が何者かわからず自分探しをしている新キャラ「ひよこ?」の存在の謎が解けるあたりで一気に号泣でした。ダメ押しで最後に訪れる優しい救済。ネタバレになるのでまだ詳しく書かないでおきますが、甘く見ててごめん……いい映画だった……泣いた……というのが第一印象でした。
 
なんというか、SFやファンタジーが大好きなスタッフたちが、いままでにツボに刺さった設定を子供向けにわかりやすくマイルドにした物語だというのがよくわかります。異世界とこの世界の境目(よくあるやつ!)、空の裂け目=絵本のやぶれた箇所から異世界に移動、この世界に異物として生まれてしまった生き物の哀しみ、など、「あっ、この設定進研ゼミでやった……!」って気分になるやつでした。それが攻殻なのかFateなのかはさておいて、私は「これシュガーラッシュで観たやつじゃん……あのひよこヴァネロぺじゃん……バグで生まれたやつじゃん……別の世界に行けないやつじゃん……」となって、ヴァネロぺの哀しみすらもひよこに重ねて泣いてしまいましたよね。なんならクライマックスで必死に絵本のパーツを支えるひよこの姿には、シュガーラッシュでメントスコーラに飛び込んでいくラルフの姿すら重ねてしまいましたし。「ヴァネロぺとして生まれてラルフの生き様かよ……やめてよ泣いちゃう……」と思いましたよね。たぶん、オタクであればあるほど「これ○○でみたやつ」となって、これまで履習してきた物語の背負う哀しみや切なさを思わずこの映画に重ねてしまうのでしょう。異世界ファンタジーとか、異端者であることの哀しみとか、そういうのが好きな人はもれなくいろんなことを思い出してしまうと思います。
 
すみっコぐらしはこどもたちが好きなので、絵本を眺めていたので主要キャラの設定もなんとなく知っているのですが、「この世で生きづらい人たち」の生きづらさがマイルドに投影されています。自分探し中とか、過去のいろんなことを思い出してわーっとなっちゃうとか、かなわない夢をポジティブに見るキャラの哀れさ、とか、そういうものが詰まっていて、「かわいそう」な感じが心をくすぐる可愛らしさ、なんですよね。そもそもキャラこの設定自体、子供より大人のほうが感情移入しやすいやつという気がしています。映画では冒頭の説明でさらっと流されていますが、この辺もサイトのキャラ紹介や絵本「すみっコぐらし そらいろのまいにち」あたり眺めてみると、映画がより感情移入できるやつになるかもしれません。
 
まあしかし、正直このゆるいキャラの映画といったらなにかこうほのぼのした日常描写系の物語が出てくるとしか思えないのに、まさかの異世界冒険譚が出てきて驚いた、というのは確かです。とはいえ子供にもわかりやすいシンプルな物語で、これはよくできているなあ!と感心してしまいました。映画館もイオンシネマ系列がほとんどで、TOHOや109、ユナイテッドなどのシネコンでほとんど上映してないのにすでに興収4億超え。まだまだこれから口コミで伸びるでしょうし、まさかの大ヒットになりそうですね。脚本がヨーロッパ企画の角田さんなのもちょっと驚きました。アイデア自体はスタッフで出し合ったもの、ということですが、今後は脚本家としても脚光が当たりそうですね。すばらしい。