宝塚歌劇花組「マスカレード・ホテル」@日本青年館

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出典:日刊スポーツ

 

東野圭吾作品で映画化もされた小説を舞台化。なんというか「宝塚歌劇仕様に魔改造された本格ミステリ」という感じで、実にトンチk……げふんげふん、もとい、別の意味で面白い作品に仕上がっていました。宝塚作品にも「いいトンチキ作品」と「駄目なトンチキ作品(=駄作)」がありまして、そういう意味では大変に「いいトンチキ作品」だったと個人的には思っております。

ミステリ展開なんだけどミュージカルにするために無理やりお歌をぶっこんでる感があって、しかも脚本の流れと少し離れた場面や状況に曲がワープするものだから、まあまあベテランの主役コンビですら歌い出しのところは雰囲気を変えるのに苦戦してる感があったように思いました。これはタモリさんに文句を言われても仕方ないレベルの唐突なお歌……と。ミステリの謎解き部分については原作があるだけに凝った仕掛けになってたと思います。そこは良かった。でも謎を説明するための状況解説がホワイトボードに書いてある状況にはちょっと笑ってしまいましたね。本多劇場くらいならそれでもいいだろうけど、ドラマシティや青年館の最後列ではそのホワイトボード読めませんから……(まあ客の8割はオペラグラス持ってるから読む気になれば読めるけど……)。あと原作がどうなってるのかわからないけれど、なんだか怪しいと睨んだ宿泊客の連絡先をあんなにかんたんに捜査員に横流ししてしまうの、高級ホテルなのにコンプライアンスがガバガバ過ぎないかと心配になったり。まあとにかくツッコミどころは満載ではありました。

 

正直なところ途中まで乗り切れなかったんですけれど、音くり寿ちゃん演じる長倉さんの「アレ」が始まったあたりで猛烈に面白くなってきてしまいましたね。(以下、犯人のネタバレありますので、未見の方はご注意下さい)いや、音くり寿ちゃんを北島マヤにしてガラスの仮面を舞台化しようという声があちこちで上がるのがよくわかります。完全に舞台あらしですよあれは。終演するなり後ろの席の人たちも「最後ながくらさんが全部もってっちゃったよね……」と口々にいいながら笑ってましたし。老女の扮装を外しながら犯行の動機を歌に乗せて語り始める犯人の若い女のほぼ一人芝居、という状況に「そこをミュージカルにする??」となって面白すぎて、オペラグラスで彼女をロックオンして笑いをこらえておりました。お腹に赤ちゃんがいたのにあなたのせいで流産してしまってぺしゃんこになったお腹が云々、みたいな動機をめちゃめちゃドラマチックに歌い上げるの、トゥーマッチすぎて(しかもお歌が最高に上手すぎて)申し訳ないんだけど最高に面白かったです。仕事して私の腹筋。あと出産したり流産したりしてもそんなに即座にお腹ぺしゃんこにならないから谷先生。しかし「花より男子」のときも音くりちゃんこんな役で「ハイパー北島マヤタイム」があった気がするんですけれど。劇団は一体彼女をどう育てていきたいんだろう……もう完全に宝塚娘役の枠をはみ出してしまってるじゃないか……

 

犯人を確保したあとのエピローグ、新田さんの妹に片思いしてた能勢くん(飛龍つかさ)がまんまと新田さんを出し抜いて妹の連絡先を入手していたくだりも笑ってしまったし、あんなにいがみ合ってた新田さんと山岸さんがすっかりいい雰囲気になっちゃって「どうしてあの部屋に私がいたのがわかったんですか?」の山岸さんの質問に、それまでキムタク風にぶっきらぼうだった新田さんが突然ただの色男・瀬戸かずやになって「あなたの匂いがしました」って真顔でいうもんだから「っっっっかーーーーーーーーーーーーー!」ってなりましたよ。突然の「ザ・タカラヅカ」なロマンス匂わせ場面にニヤニヤが止まりませんでしたよね。なんかこの一連のニヤニヤシーンだけでそれまでのツッコミどころ満載の舞台はこびがどうでもよくなってしまいましたよ。ありがとうございます楽しかった!

 

あと花組ファンとしては「おかえりひらめ(朝月希和)ちゃん!」の気持ちと、雪組ファンとして「ひらめちゃん別箱ヒロインおめでとう……!花組でも大切にされてよかった……!」の気持ちで、フィナーレのデュエットダンスで瀬戸かずやさんにふわりとリフトされてくるくる回った瞬間にちょっと泣いてしまいましたよ。この一年で上級生娘役がごっそり抜けてしまった花組なので、ひらめちゃんにはがんばって活躍してほしいものです。