劇団☆新感線「偽義経冥界歌」@赤坂ACTシアター

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出典:SPICE

いやー中島かずきさんの純然たる新感線の新作っていつ以来ですか、もしかして蒼の乱以来……? 修羅天魔も新作っちゃ新作だけどあれは半分髑髏城だし。やーとにかく「新感線らしい新感線を!観た!」という嬉しい気持ちになりましたね。主役のバカなんだけどカッコいいとこも、悪役のスゴツヨぶりも、キレッキレのアクションも、(そして上演時間の長さも!)「This is 新感線!」という感じで楽しかったです。歌やダンスのミュージカル風シーンはやや少なかったですが、そのぶん殺陣が盛り盛りで「アクション活劇!」といった感じでしたね。歌は物語のキーとなるこの世とあの世をつなぐ静香の歌だけを聴かせる感じで、藤原さくらさんの声が印象に残る作品でした。

物語だけを追うと登場人物と相関図の矢印がやや無駄に多い気がして、終盤が冗長に感じる部分も正直なくはないんですけど。これまで新感線は「前半がキャラ紹介で冗長に感じるけど後半は一気に展開」で帳消しになってた気がするんですが、今回は前半に主要キャラをバタバタ殺していくハードな展開であっという間だった割に、後半が中ボスの早乙女くん戦とラスボスの橋本さとしさん戦で同じ展開を繰り返してるように見えるのがやや冗長にみえる原因だったかもしれません。座付き作家としては「見せ場を与えるべき役者」にそれぞれの個性を与えてうまいこと見せ場を作る脚本だったと思いますし、「興行」としては文句のない内容だったと思いますが、「物語」を観たい人間には後半にやや飽きが来るかな…というのが正直なところでした。まあこれは初見だからの感想かもですね、だいたいこういうのは話を把握した上で二度みるとストンとまとまって見えたりするので。

久しぶりに新感線を観た!と思えたのは、久しぶりに場面転換がスピーディな演出だったからかもしれません。なにしろステアラは場面転換ごとに客席を回さなきゃいけないし。「けむりの軍団」も転換ごとに幕を一度下ろすスタイルの演出だったし。やっぱり今回みたいに場面展開がサクサク進む方が集中して見られますね。あと二幕の「死んだ側の人たち」がひと目でわかるあの白いメイクと衣装がとても良かった!好きでした。映像で見るとやりすぎ感あるかもしれないビジュアルですが、舞台で遠目から観てるととてもかっこよかったです。あと今回2階からの観劇だったんですが照明効果もかっこよかったですねー。これぞザ・新感線!

しかしまあ生田斗真くんと早乙女兄弟はもう正式に劇団員になってくれんかね……という気持ちでしたね。生田くんも「まっすぐで気持ちの良いバカ」という中島脚本にありがちといえばありがちな定番キャラでしたが、これだけの舞台のセンターを背負えるのはほんとさすがとしか。そしてなんといっても早乙女友貴くんの殺陣の速さよ! 前に出たときはまだ太一くんのバーター出演の弟さんねハイハイくらいの気持ちで観ていたのですけれど、あの太一くんと毎日鍛えてるだけあってさすがの動き。太刀筋の早いこと早いこと、見応えありました。

今回最終的に橋本さとしさんがラスボスな感じでしたが、こちらも見事なパワープレイで「ああーさとっさんだぁ!さとっさんを観てる!新感線の!新作で!さとっさんを!」と嬉しくなってしまいましたねえ。あと黄泉津の方のりょうさんもすごく良かった。舞台でも今まで何度か観てる女優さんですが今回がダントツで良かったですね、すごく新感線らしい迫力ある芝居で「かっけえ!」と思いました。カナコさんとの百合百合しい雰囲気も良かった。山内圭哉さん&三宅弘城さんはニコイチの僧兵役。ふたりのいつものキャラを思えばもっと遊びがあっても良さそうですけど割と真面目でしたかね?(当社比)一番感情移入しやすいポジションでした。

 

ここから先は公演の感想というよりは古のファンのボヤきなんですけれどもね。もう新感線があのくらいの動員力になってからというもの、上演時間が3時間半を優に超えるようになってしまって、大きなハコを埋めるためにたくさんの役者さんを呼ぶ、そしてそれに見合った見せ場を作る、というスタイルになっているので、それは興行としては正解なんだけど、気軽にさくっと観られるものではなくなってきたなあ、というのが正直なところです。気持ち的には歌舞伎座や演舞場の二部制の興行を観るのに近い、「今日は半日劇場で過ごす」の覚悟で挑むような気持ちになってきたなあと思うんですよね。正直なところ集中力が保てるのはストレートプレイで2時間、ミュージカルでも休憩込み3時間が限界だなあという気がしています。いや私が歳を取ったのだと言われたらそれまでなんですけれど。3時間半のストプレだって観られなくはないけど、その前後に脳みそ休める時間が必要になってきてしまった気がします……。まあだからといって昔の興行規模に戻れと言いたいわけではないんですけれど、赤坂ACTシアターがしばらく使えなくなる問題もあり、今後どうなっていくのかなあとぼんやり考え込んでしまったものですから。