宝塚星組『1789ーバスティーユの恋人たちー』@東京宝塚劇場

引用元:宝塚星組トップ礼真琴&舞空瞳「熱い舞台、そして暑苦しい舞台に」ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』22日開幕:中日スポーツ・東京中日スポーツ


フレンチロックミュージカルの申し子・礼真琴さんが主役なので悪いわけがないとは思っていたけれど、いや素晴らしかった…。

星組の熱さがフランス革命で立ち上がる民衆の熱さに重なって見応えありました。月組版ではマリー・アントワネットをトップ娘役の愛希れいかさんが演じていましたが、今回はロナンと恋に落ちるオランプがトップ娘役の舞空瞳さんだったので、やはり恋物語としてはこちらの組み合わせのほうがしっくり来ますね。月組版とのキャラ造形の違いも面白く観ました。ロベスピエールの極美くんが路線男役として男を上げた感がありますね、かっこよかった!

娘の頼みだからって囚人を勝手に脱獄させていいのかオランプ父よ、とか、「助けてくれたお礼だ」で強引にキスして許されるのは宝塚男役だけだよ…あんなんやったら通報モノだよ…とか、ちょっとロベスピエール誰よその女(突然彼女連れで現れた)、とか、ところどころツッコミどころはあるものの、「理不尽に投獄される礼真琴」「同期の輝月ゆうまに拷問される礼真琴」「蹴り、拘束、ムチ打ちに焼きごて、の拷問フルコース」とかファンが大好きなやつも出てきて楽しいですね、「あの程度の拷問で死ぬものか」を礼真琴さんが言う説得力よ…。

20年以上前にレミゼを見た時は「一日の終わりに」で「パンも買えないなんてこんなに生活の苦しい時代があったんだなあ」くらいの別世界感があったのに、今1789の作品内で「これ以上増税されても払えない」ってなってるの観て「ああもう今の日本てフランス革命期の庶民並みに貧しいじゃん…」って思いましてね。無邪気に「金がないなら増税すればいい」というルイ16世に本気でイラァ…ッとしました。まさかこんなに感情移入しながら1789を見る日がくるとは…

小池先生演出あるあるではあるのですが、フィナーレでタイトル字が虹色に光って「ゲーミング1789」になったのが地味にツボでした。血なまぐさい革命の年号をそんな楽しげに彩っていいの…?という気持ちに。

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COCOON PRODUCTION 2023『パラサイト』@THEATER MILANO-Za

引用元:古田新太が舞台「パラサイト」に自信、伊藤沙莉は「映画との違いを楽しめる」(取材会レポート / 公演写真10枚あり) - 映画ナタリー

大ヒット韓国映画の舞台化。日本に設定を変えるに当たって関西の高台の豪邸と堤防の下にあるトタン屋根の集落という感じに設定を変えてあります。豪雨の災害の代わりにやってくるのが阪神大震災なので、時代設定は1995年前後に変更してあるよう。金田家が靴を作っているということを考えると神戸市長田区あたりをイメージしてるのでしょうか。

しかし映画と比べると正直かなりキレ味に欠けるというか、格差の描き方がだいぶボヤけちゃってたような印象を受けました。上流家庭と下流家庭の描き方が戯画化されすぎてて解像度が低い気がしましたし、「上流」のほうもなんだか街の中小企業の社長クラスにしか見えないので、庶民の中の上くらいの金持ちという感じで、もうちょっと上の階層にしたほうが良かったんじゃないのかなと思いました。

貧乏なほうの家族の娘が「自分はポケベルしか持ってない、みんなみたいに携帯電話が欲しい」みたいなことを言うのも違和感がありました。あの当時にまさに学生だったのでよく覚えていますが、女子高生や大学生が全員ポケベル持ってたかっていうとそんなことない気がします。高所得層というよりは待ち合わせが必要なリア充層が持っていたイメージで、中流層陰キャ貧困層の学生が一人一台持っているようなものではなかった気がしますね(私個人がようやくPHSを使い始めたのも震災の2年後くらいだったので)。まあ格差を会話の中で表現したいセリフである意図は理解しますし、当時の私が貧乏だったと言われたらそれまでですが…

そして阪神大震災に設定を置き換えたのもちょっと無理を感じましたね。あの日の関西は、いくら高台で自宅に被害がなかったからといって地震の揺れには気づくレベルだったでしょうし、交通機関も停止している中、金持ち一家が予定通り客を招いてパーティに興じるのもリアリティもない感じがしました。神戸で高台に住んでいたらあの激しい火災の煙にも気づきそうなものですが。いくら金持ちたちが公共交通機関を使わず自家用車でやってくるにしても、あの日に…?と。

役者が上手い人ばかりだからつまらなくはないし、キムラ緑子さんはさすがの芝居だったけども、なんだかベタな商業演劇という感じで原作の良さを失ってしまったような気はしました。ただ「THEATER MILANO-Za」という歌舞伎町のど真ん中でしかもトー横キッズを見下ろす劇場というロケーションで12,000円のチケット代を払ってこれを観る人々は、はたしてどっち側に感情移入するんだろう?みたいな気持ちになり、意図的かどうかはともかく皮肉は効いてるなと思いました。

 

『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』@帝国劇場

ムーランルージュ初日!プレビューじゃない方の本公演初日を観てきました!
もう最高に良かったのでひとまずこのパッションのまま感想書きなぐっておきます。

トニー賞授賞式のパフォーマンス見た時から「あーーこれは絶対に好きなやつ!」と観たかった作品で、しかも主演のサティーン役にご贔屓の望海さん!と聞いた時からもう「何回チケット取る????」状態だったわけですが、いやーーーーーー最高でした。もう好きな要素しか詰まってなかったですね。祭りです。これは祭りの開幕です。

BWと同じ美術持ってくるとは聞いていましたが、帝劇の内装がまさに「写真で見た海外公演そのまま」なので、帝劇に入った瞬間に「あーもうこれはチケット代が高くても仕方ない」と納得できるほどでした。オープニングの「Welcome to Moulin Rouge」から断片的に見てきたyoutube動画そのままだ〜と嬉しくなってしまいましたね。

そして煽りに煽って出てくる「ダイヤモンド」のサティーンが我らが望海さんですよ……こんな贅沢すぎるプロダクションのど真ん中に!贔屓が!と登場の空中ブランコだけでもう感涙状態だったんですが。大好きなナンバー、ケイティ・ペリーの「Firework」を望海サティーンがほんと弾ける花火のように歌うものだから、もうほんと興奮と感動でで息が止まるんじゃないかと思いましたよね……

セクシーな衣装のショー場面のダンスがかっこよすぎてワクワクしますし、サティーンとクリスチャンの火花のような恋にもドキドキするし、もうとにかく演出がいちいちにぎやかだわ美しいわで曲もヒット曲ばかりのマッシュアップで気分はアガるしでもうもうもう…とにかく最高でした!!!!

細かい感想は色々あるんですがキリがないのでひとまずここまで、まだまだ見に行くのでひとまず最高だということだけお伝えして今日は寝ます!おやすみなさい!

宝塚月組『DEATH TAKES A HOLIDAY』@東急シアターオーブ

出典:https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2023/deathtakesaholiday/index.html

 

いやーーー楽しかった、とても美しい作品でした。

「死神と人間の恋」というどこかで聴いた設定、というか、もはやミュオタ兼ヅカオタの身では親の顔より見た感のある設定のオブブロードウェイ作品。第一次世界大戦スペイン風邪パンデミックの後、という「多くの人が死んだ時代」に生きることを謳歌する人々の人間讃歌、親友や息子など大切な人を失った人々の思い、が美しいメロディにのせて群像劇的に歌われるので「ああ、これは死神とヒロインは結ばれずに終わる切ない悲恋なんだろうなー」と思いながら見ていたら、最後にあまりにもあっさりとヒロインが死を選ぶのでびっくりしました。

ただまあロマンス至上主義の宝塚だからトップコンビの恋が成就することはすべてに優先しても構わないので、「宝塚だからヨシ!トップコンビのハッピーエンドだからヨシ!」みたいな気持ちでニコニコで終わりましたが、正直宝塚以外のとこでこのストーリー展開みたら「ハァ⁉︎」「ちゃぶ台ひっくり返しすぎでは?」という気持ちになっただろうな…とも思いました。

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2023年5月に観た芝居・映画

 

『THE FIRST SLAM DUNK

評判がいいからかなり期待値上げていったけど、それを上回る良さ…。原作読んでてもあんなに手に汗握れるんだから、原作未読で映画を見る人本当に羨ましい。すばらしかった…(思わず「金払うからスラダン観てきて」って娘に映画館の予約番号握らせた)。帰り際ずっと10-FEETの第ゼロ感歌っちゃうわよね…。

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5月3日(水) 映画「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME3」

引用元:ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー VOLUME 3 : フォトギャラリー 画像(7) - 映画.com


ガーディアンズたちの長い長い旅を見届けた気持ちで、なんかもう胸がいっぱい。終映後あちこちで鼻すすってる音が聞こえて「わかる…」ってなりました。初日に観にくるお客さんだからみんなガーディアンズのメンバーに思い入れ大きいんだろうな…作品には満足してるけどそれはそれとしてやっぱりさみしいよ!

私はエンドゲームでガモーラがああなってしまったのがショックで、自分で思ってた以上にスターロードとガモーラが推しカプだったんだと気づいたし、あの展開に傷つくあまりその後のMCUほぼ脱落してるんだけど、それでも今回のGotG3の展開には納得してます。冒頭のスターロード観てやっと憑き物が落ちました。

今回は割とロケット中心の話で、彼の過去を紐解きながら進む展開でした。ロケットのあの過去泣いちゃう…。やや長尺に感じる部分もあるし、エピソードいくつか削れば2時間でまとめられそうな話ではあるんですが、「最初からディレクターズカットで公開するね!」「劇団解散公演だからみんなに見せ場作るね!」「大送別会だから飲み放題コース2時間じゃなく3時間にしとくね!」という感じなのですべてを許しました…。

 

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5月13日(土)昼 宙組カジノ・ロワイヤル〜我が名はボンド」@東京宝塚劇場

引用元:真風ほどのボンドはいない 涼やかでダンディー、役に説得力 宝塚歌劇宙組公演「カジノ・ロワイヤル」|文化|神戸新聞NEXT

ややトンチキという評判は聞いていたけど、なるほどコメディ仕立ての007でしたね。にぎやかなお祭り公演で1回だけ見る分には楽しみましたし、そらまあ真風さんはかっこよかったですけれども、贔屓の退団公演でこのライトな作りの作品が出てきたらちょっとイケコを恨むな……みたいな気持ちにも正直なりました。まあ真風さんは長期で代表作もすでにあるから、ボーナストラックみたいな扱いでアリなのかな……。

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5月13日(土)『BLUE GIANT

すごいロングランしてて気になってはいたのですが、観たらみんなが「映画館で見るべき」と言う理由がわかりました。正確には「映画館で聴くべき」なんだな、音楽が雄弁で痺れる。原作未読だけど面白かった〜!(旦那に観てきて〜って薦めまくった)

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5月20日(土)昼 イキウメ『人魂を届けに』@シアタートラム

引用元:イキウメ新作「人魂を届けに」開幕に前川知大「この作品が創れたことに驚いています」(舞台写真 / コメントあり) - ステージナタリー


イキウメらしいSFというよりは、詩的な哲学を感じる新作。政治犯の「人魂」を箱に入れて、森の奥深くに住む母親のところに届けに来た刑務官。母親の家には世捨て人のような男たちが暮らしている。自然発生的に生まれた教祖と信者のような関係にも見える共同体の中で、刑務官もまた自分自身の「傷」と向き合って…というお話。刑務官が心を病んだ妻が手帳に書き殴った詩に感動して夫が勝手にコンクールに応募した結果、妻が傷ついて家を出てしまうエピソードが印象的。

「削られた魂に吹くすきま風」の表現がとてもいい。寓話のようなこの作品も、再演でまた新たに見えてくるものや世情とリンクするところがありそうな予知夢なのかも。


それにしてもイキウメの客席はとても集中力のある鍛えられたお客さんがほとんどですばらしいな…と思いました。とらえどころのない序盤でもダレずにがっつり集中してて前川さんの紡ぐ物語への信頼を感じる。客層の良さよ…

 

5月20日(土)夜『ファインディング・ネバーランド』@新国立劇場中劇場

引用元:山崎育三郎「演劇でしか作り出せない奇跡のステージになっています」~ミュージカル『ファインディング・ネバーランド』が開幕 | SPICE - エンタメ特化型情報メディア スパイス


2017年の来日公演版がめちゃくちゃに良くて、1度しか観てないにも関わらず好きなミュージカル作品の5本の指に入れるくらい好きな作品でした。死ぬほどサントラも聴いたので、もうそのメロディが聴こえてくるだけで条件反射的に泣いてしまう部分はありました。作品の骨格と音楽が良いので、チケット代払った分相当くらいの感動はしたと思います。ただクライマックスのシルヴィアの旅立ちのシーンはオリジナルの演出があまりにも美しすぎて印象に残っているので、それと比べるとやはり少々物足りないかな…というのが正直な感想。

あとなんというか…個々のキャストはみんな素晴らしいし歌声も聴き応えあって文句なしなのだけど、致命的に作品との相性が悪いキャスティングというか…。だって、「病弱で死にゆく濱田めぐみと、それを支える山崎育三郎との不倫ラブストーリーを観たいか?」と聞かれたら、答えは全力で「否!」なんですよ。ぶっちゃけ濱田めぐみさんにはシングルマザーのままひとり強く生き抜いてほしいし、山崎育三郎さんみたいな甘いマスクの色気あるイケメンによろめいてほしくない…みたいな気持ちがありましてね。相手役が咲妃みゆちゃんとか昆夏美ちゃんとか悲劇系ヒロイン似合うタイプの女優さんならまだアリだったのでは…という気もするんですけれども…ねえ。バリには妻もいるしどうしても状況的には「不倫」になってしまうカップルでただでさえ薄目で観ないとモヤる部分なので、バリ役はもうちょっと色気控えめ誠実さ強めの堅物な印象の俳優さんのほうが良かったんじゃないかなーーーみたいな気持ちにもなりました。

宝塚は割と「トップコンビの並びの絵面が似合っているかどうか」「作品にトップコンビのカラーがあっているかどうか」でキャスティングしてくれるのでこういうミスマッチがないんですけれど、ホリプロさんはどうにも「役に見合う実力があって集客力もあるキャストは選んでくれるが、その組み合わせによって起こる食い合わせの悪さを全く考慮しない」みたいなところがありますよね…。

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大人計画「もうがまんできない」@下北沢本多劇場

本多劇場で見る宮藤官九郎作品。阿部サダヲ皆川猿時荒川良々、平山紙などの手練メンバーに加えて仲野太賀、永山絢斗漫才コンビの様子も面白く、役者さんたちの芝居は楽しく見ることができました。

だけど、たくさん笑ったその一方で、同時にここんとこうっすら宮藤官九郎作品に対して抱えてたモヤモヤもやはり感じてしまったので、一応覚書として言語化してメモしておきます。ややとりとめない文章ですが、ご興味ある方だけお付き合いいただければと。

(舞台が100%面白かった!笑った!という方はここでお引取りいただいたほうがいいかと思います)

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2023年4月に観た芝居

4月15日(土)夜『ラビット・ホール』@PARCO劇場

引用元:「ラビット・ホール」開幕に宮澤エマ「この作品のパワーを感じて欲しい」(舞台写真 / コメントあり) - ステージナタリー


『きっと重すぎるしんどい描写があるに違いねぇ』と思って覚悟して観に行ったらそこまで酷い場面はなくて、ほどほどの重さもありつつもちゃんと後味の良い話だった『ラビットホール』。…だって宮澤エマさん成河さんみたいな演劇おばけ連れて来て「一人息子を事故で亡くした夫婦」の話って、さぞ過酷な話が…って覚悟すんじゃん…なんなら復讐劇はじまりそうな予感すらするじゃん…。


実際には「悲しみへの向き合い方、処理の仕方がそれぞれ違うからすれ違ってしまう夫婦」の日常を丁寧に描いていて、見ごたえありました。亡くなった子どもの写っているビデオテープを大切に何度も何度も観ている夫と、それを妻が間違って上書きしてしまった、の悲劇がウワァ…と思いました。

 

4月25日(火)夜『ザ・ミュージック・マン』@日生劇場

引用元:坂本昌行「心温まり、目頭が熱くなる作品」 主演ミュージカル「ザ・ミュージック・マン」開幕:時事ドットコム


1957年初演というだけあってクラシカルなミュージカル。リバイバル版がヒットしたのはヒュー・ジャックマンの人気ありきだったのかな。物語は正直あまり刺さらなかったのだけど、それでもラストで子役も含めて全員がマーチングバンドになって演奏するところ観たら「もう満点!最高!」みたいな気分にはなりますね(子役の演技に弱いから…)
しかしマチルダやらファインディング・ネバーランドやら、あっちこっちに子役が駆り出されてる3〜5月のミュージカル界で、楽器演奏できる子役集めるの大変だったのでは…?みたいな制作さんの苦労のほうが気になりましたわね…。

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