2023年11月に観た舞台

11月4日(土)昼 劇団四季ウィキッド』@JR東日本四季劇場[秋]

引用元:“悪い魔女”と“善い魔女”の前日譚、劇団四季「ウィキッド」10年ぶりの東京公演開幕(舞台写真あり) - ステージナタリー


2007年の初演以来の観劇です。16年ぶり…!?
好きな作品だったのですが「まあ四季だしいつでも観られるだろう」と思っているうちにいつの間にかクローズしてしまい、その後なんと10年間も上演されなくなっており、待ち焦がれていた感じですね。初演で濱田めぐみさんのエルファバを観られのは良かった…

Popularの可愛らしさにニコニコしたり、One Short Dayの多幸感にうっとりしたりするうち、みんなお待ちかねのDefying Gravityですよ…今回ほんとチケットが激戦で客席も「チケット激戦の地獄をくぐり抜けて来た者達だ、面構えが違う」状態ですから、客席が本当にガチ勢しかいないんですよね。もうイントロ始まる前から「来るぞ…来るぞ…」みたいな集中力で観てるのがわかります(私もそうだけど)。もうほんとサビのあたりから息止めて観てるんじゃないかと思うような客席の熱量だったのですが、そんな客席の期待を一心に受け止めるエルファバの小林美沙希さん。パワフルに歌い上げていて「これこれ!これが聞きたかったのよ!」と思いました。いやはやこんな濱田めぐみさんみたいに歌える人が四季にはこんなゴロゴロいるのか…と驚いていたのですが、この週がプリンシパルデビューで今までアンサンブルだった聞いて、さらに驚きました。そういえば幕間に入った瞬間客席がドヨォ…とどよめいていたな…と思い返すなどしました。検索したらTwitterもデビュー初日からめちゃめちゃざわついてましたね。

名指しは避けますが正直ちょっとピンとこないキャストもいらっしゃって、でもその役に関しては初演を観たときも不満だったんですよね。「なんでこんな芝居にしたんだろ?」と疑問に思いつつ脳内で適当に補完したりしていたので、もともとの演出プランがそういう感じなんでしょうか。モヤモヤ。

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11月4日(土)夜 望海風斗Billboard Liveコンサート『MY HOME TOWN』 

素晴らしかった…。チケットの激戦を乗り越えて入手した望海さんのビルボードライブ! 小さいハコで一番安い2階サイド席だったのですがまあ距離が近い…音響がいい…。
ピアノ・ベース・ドラムの3人編成のバンドで、ハコの雰囲気に合わせて、衣装も夜会巻きにシックなロングドレス。前半はしっとりムーディに歌うナンバーが中心で、「ノゾミフウト・クラブ歌手のすがた」という感じでした。いつもと歌い方が違って新鮮〜!
中盤は歌謡曲やJ-POPと来て、圧巻だったのはやはりガイズのナンバーの『Sit Down, You’re Rockin’ The Boat』。JenniferNettlesの女性ボーカルが歌うアレンジの動画を田代万里生さんに薦められたとのことで万里生さんにはお歳暮をお送りしたい…。めちゃめちゃカッコ良かったです! ちょっとガナリもいれつつみんなが大好きなパワフルな望海さん歌唱でしたよね。素敵だった…。
アンコールはジャジーな演奏でムーディに始まったと思ったらなんと横浜市歌でずっこけました(笑)。表拍で手拍子入っちゃってカオスなことに…。横浜きたらどうしても歌いたいんだね横浜市歌…。

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11月11日(土)昼 『マハーバーラタ戦記』@歌舞伎座

引用元:【レポート】人の世を平らかにするのは慈愛か、力か。 「吉例顔見世大歌舞伎」昼の部『極付印度伝 マハーバーラタ戦記』 の画像・写真 - ぴあエンタメ情報


2017年の初演も観ていてとても素晴らしかったので、普段は3階席の住民ですが今回は迷わず1階席のチケットとりました。両花道だものね!

今回、鶴妖朶役は初演の七之助くんに変わって芝のぶさん。芝のぶさんが歌舞伎座のセンターでほぼ主演級のお役を堂々と演じてらして、「成駒屋!」の大向こうかかっててもう感無量です。研辰の金魚ちゃんで「なんかすごく上手い女の人いたよね?」ってみんなで話題にしてからもう22年ですよ!胸熱!大詰の赤い鎧見たらなんかもう胸熱すぎて前のめりかけてしまいました。

七之助くんの鶴妖朶もすごく良かったのですが、芝のぶさんのもまた印象が違っててすごく良かったです。七之助くんは割と「悪女」に振った芝居をしていたと思うのだけど、芝のぶさんはそこまでヴィランみはなくて、女性としての生存戦略の結果こうなったというか、すごく感情移入できる感じの鶴妖朶でした。あの声の艶、ほんともう最高。すっごい悪い台詞言ってるのに聞き惚れてしまいます。前はどちらかというと五人兄弟のほうが正義寄りな印象で鶴妖朶側はヴィランなイメージだったんだけど、今回はどっちともいえない印象になっていましたね。

立ち回りの場面の速さを七之助くんと比べるのはさすがに酷なのだけど(女形さんだし年齢も違いますしねぇ)、まさか階段落ちまでやるとは思わなくてちょっとびっくりしました。

先日SPACのマハーバーラタをみたところなので、同じ宮城聰さんの演出でも共通する部分や違いが色々と感じられて興味深かったです。今回も下座音楽にうっとり。SPACの演奏も素敵でしたがこちらもまた劇場内ということで打楽器の響き方も違っていて耳にも楽しい作品でした。

とても良かったのですがひとつだけ不満が…筋書きの舞台写真の扱い…!せっかく舞台写真入るまで待ってから筋書き買ったのに、芝のぶさんが大きく写ったピンの写真がはいってないんですよね。舞台では鶴妖朶は迦楼奈や阿龍樹雷とほぼ同格くらいの役だと思うのですが…。場面ごとの写真にはもちろん写ってはいるんですけど。まあ格付け的な問題とかあるんでしょうけど、ほとんど主演級のお役なのだから単独映りの写真入れて欲しいな…と思いました。(これは12月の筋書きの超歌舞伎の國矢さんの扱いについてもまた同じことを言いたいわけですが…)

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11月11日(土)夜 『無駄な抵抗』@世田谷パブリックシアター

引用元:https://twitter.com/muda_na_teikou/status/1727631172526809561


初日に観劇。池谷のぶえさんと同級生という設定の松雪泰子さんのふたりを中心に据えた布陣で、このキャラ配置でどうしてオイディプス王…?と冒頭では思ったけど、終盤はなるほどオイディプスみのあるエピソードでした。ギリシャ悲劇のようであり黙示録的でもあり。

池谷さんの声の良さと芝居の上手さは毎度のことなのだけど、本来は物語の核心部分である「彼女の語る過去のエピソード」よりも個人的には「半年前から電車が止まらなくなった駅の駅前広場」という設定のほうが興味深くて、そちらのほうに意識が行ってしまいました。(性暴力を受けていた、というのが舞台作品の中で「登場人物のトラウマを表現する記号」として出てくるのがあまり好みではないのもありますが)

駅に電車が止まらなくなったらその街に住む人にとっては大事件なはずなんだけど、いつのまにかその状況にも慣れて諦めとともに受け入れてしまっている人々の様子が、なんだかだんだん衰退していく日本の社会の未来のように思えました。主人公の物語には最終的に希望があったかもしれないのだけど、この世界観そのものが「ゆっくりと少しずつ死んでいく世界」を描いているようで、なんとなく黙示録的だな…とそんなことを思いました。駅メロが何度か鳴っていたのが天使のラッパを想起させたせいでしょうか。

割と繊細なやりとりの積み重ねで空気感も変わりそうな公演だけに、回を重ねるごとに少しずつ変化しそうな気もしました。終盤にもう一回くらい観てもうちょっと丁寧に読み解きたいなあと思う芝居でしたね。

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