COCOON PRODUCTION 2023『パラサイト』@THEATER MILANO-Za

引用元:古田新太が舞台「パラサイト」に自信、伊藤沙莉は「映画との違いを楽しめる」(取材会レポート / 公演写真10枚あり) - 映画ナタリー

大ヒット韓国映画の舞台化。日本に設定を変えるに当たって関西の高台の豪邸と堤防の下にあるトタン屋根の集落という感じに設定を変えてあります。豪雨の災害の代わりにやってくるのが阪神大震災なので、時代設定は1995年前後に変更してあるよう。金田家が靴を作っているということを考えると神戸市長田区あたりをイメージしてるのでしょうか。

しかし映画と比べると正直かなりキレ味に欠けるというか、格差の描き方がだいぶボヤけちゃってたような印象を受けました。上流家庭と下流家庭の描き方が戯画化されすぎてて解像度が低い気がしましたし、「上流」のほうもなんだか街の中小企業の社長クラスにしか見えないので、庶民の中の上くらいの金持ちという感じで、もうちょっと上の階層にしたほうが良かったんじゃないのかなと思いました。

貧乏なほうの家族の娘が「自分はポケベルしか持ってない、みんなみたいに携帯電話が欲しい」みたいなことを言うのも違和感がありました。あの当時にまさに学生だったのでよく覚えていますが、女子高生や大学生が全員ポケベル持ってたかっていうとそんなことない気がします。高所得層というよりは待ち合わせが必要なリア充層が持っていたイメージで、中流層陰キャ貧困層の学生が一人一台持っているようなものではなかった気がしますね(私個人がようやくPHSを使い始めたのも震災の2年後くらいだったので)。まあ格差を会話の中で表現したいセリフである意図は理解しますし、当時の私が貧乏だったと言われたらそれまでですが…

そして阪神大震災に設定を置き換えたのもちょっと無理を感じましたね。あの日の関西は、いくら高台で自宅に被害がなかったからといって地震の揺れには気づくレベルだったでしょうし、交通機関も停止している中、金持ち一家が予定通り客を招いてパーティに興じるのもリアリティもない感じがしました。神戸で高台に住んでいたらあの激しい火災の煙にも気づきそうなものですが。いくら金持ちたちが公共交通機関を使わず自家用車でやってくるにしても、あの日に…?と。

役者が上手い人ばかりだからつまらなくはないし、キムラ緑子さんはさすがの芝居だったけども、なんだかベタな商業演劇という感じで原作の良さを失ってしまったような気はしました。ただ「THEATER MILANO-Za」という歌舞伎町のど真ん中でしかもトー横キッズを見下ろす劇場というロケーションで12,000円のチケット代を払ってこれを観る人々は、はたしてどっち側に感情移入するんだろう?みたいな気持ちになり、意図的かどうかはともかく皮肉は効いてるなと思いました。