イントゥ・ザ・ウッズ

ソンドハイム作曲のミュージカルを「シカゴ」のロブ・マーシャルが映画化、ってことで期待して見に行ったんですがね。んー。たしか新国立劇場宮本亜門さんが演出した2004年の日本初演も観てるんですが、「つまらなくはないけど……」くらいの感想で、特に大きなインパクトがある作品ではなかったのか、あまり記憶に残ってないんですよね。まあでも童話を題材にしたわりにはシニカルな話だったような覚えがあるので、ディズニー製作で映画化というニュース記事をみた時は「え?」と二度見したものでした。どっちかというとディズニー的お伽話の世界観を否定したものだったと思うので。

以下、ラストのネタバレあります。
監督のロブ・マーシャルは「舞台版のストーリーをできるだけ変えずに映画を創ろうと考えた」とコメントしているので、たぶん大きな改変はなかったんじゃないかと思うのですが。「赤ずきん」「シンデレラ」「ジャックと豆の木」「ラプンツェル」などのエピソードがからみ合って、魔女の呪いを解こうと奮闘するパン屋夫婦をまじえて「みんなの願いを叶える」ところまではそれなりに面白く見られるのだけど、この作品ではハッピーエンドのその後のエピソードまでが描かれています。ジャックに殺された巨人の妻(女型の巨人!)が復讐に現れたり、魔女は若さを得た代わりに魔力を失ったり、パン屋夫婦の妻が待望の赤ちゃんを残して死んでしまったり、王子がパン屋の嫁と浮気したことを知ったシンデレラは王子と破局したり。最終的に生き残った赤ずきんとジャックとシンデレラはパン屋を手伝うことになって終わり、という夢も希望もカタルシスもない結末を迎えるわけで。

まあ舞台版に準拠してヘタな改変なく作ってくれたことは舞台ファンとしてはありがたいことなのですが、うーんでもやっぱりこのカタルシスの無さね……! 「おとぎばなしを題材にしたディズニーのミュージカル映画」だと思って見に来た人たちは、終盤の展開に( ゚д゚)こんな顔になっちゃうんじゃないかと思うのですが、どうなんでしょう。まあブラックな物語なのはそれはそれでいいんですが、なにせ致命的に終盤の物語のテンポが悪い。楽曲があるからスピーディに展開するといっても無理があるのはわかりますが、よりによって終盤で猛烈な眠気に襲われてしまうのはいただけない。レビューサイトで酷評が多いのもわかります。

ソンドハイムのミュージカルってロイド・ウェバーやワイルドホーンみたいに俗っぽくないというか、ちょっと通ウケなイメージがあるんですけれども。「うん、まあ、安定のソンドハイム節だね……」というモヤーっとした顔で映画館を後にすることになりました。まあところどころキャッチーなナンバーもあるし、楽曲をサントラで聴いてる分には楽しいんですが。

まあしかしモヤーっとした後味のこの作品の中、シンデレラに惚れた王子兄とラプンツェルに惚れた王子弟が歌い上げる「Agony」のナンバーだけは傑作でした。「俺のほうがつらい」「いや俺のほうが」と勝負するように歌うバカ兄弟のこのシーンだけはちょっと楽しかったです。動画で見られるとはありがたい!

INTO THE WOODS
【スタッフ】
監督:ロブ・マーシャル
原作ミュージカル:スティーヴン・ソンドハイム AND ジェームズ・ラパイン
作詞・作曲:スティーヴン・ソンドハイム
脚本:ジェームズ・ラパイン
製作:ジョン・デルーカ, p.g.a./ロブ・マーシャル, p.g.a./マーク・プラット, p.g.a./カラム・マクドゥガル
撮影:ディオン・ビーブ, ACS, ASC
プロダクションデザイン:デニス・ガスナー
編集:ワイアット・スミス
衣裳デザイン:コリーン・アトウッド
音楽監修:ポール・ジャミニャーニ AND マイク・ハイアム
音楽プロデュース:マイク・ハイアム

【配役】
魔女:メリル・ストリープ
パン屋の妻:エミリー・ブラント
パン屋の主人:ジェームズ・コーデン
シンデレラ:アナ・ケンドリック
シンデレラの王子:クリス・パイン
ジャックの母親:トレイシー・ウルマン
シンデレラの継母:クリスティーン・バランスキー
オオカミ:ジョニー・デップ
赤ずきん:リラ・クロフォード
ジャック:ダニエル・ハットルストーン
ジャックの母親:トレイシー・ウルマン
継母の娘・姉フロリンダ:タミー・ブランチャード
継母の娘・妹ルシンダ:ルーシー・パンチ
ラプンツェル:マッケンジーマウジー
ラプンツェルの王子:ビリー・マグヌッセン