宝塚星組「Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀」「Killer Rouge/星秀☆煌紅」

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宝塚歌劇の台湾公演に持っていく演目として製作されたのが今回の星組公演。「Thunderbolt Fantasy」の原作は日台共同制作の人形演劇TV番組で、詳しくは公式サイト【Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀】をご覧いただければと思いますが、いわゆる「人形劇」から想像するテイストとはだいぶ違いますね。原作のほうはとりあえず三話あたりまでざっと予習のために観たのですが、だいぶ伝記SFっぽい作品で「新感線か!」と何分に一回の割合で心の中で突っ込んでいました。いやーだって伝説の剣を巡る物語って設定だけで「いのうえ歌舞伎だ……」って思いますし、悪い人たちの一団の名前が「玄鬼宗(げんきしゅう)」っていうのも「ネーミングが中島かずきだ……」ってなりますし。主人公がキセルもってて飄々としたキャラなのも「捨之介かよ……」って(もういい)。いや、すいません、初めて観た芝居が新感線だったんでいのうえ歌舞伎を親と思って育ってるんですよ……

 

まあそれはそれとして、テレビシリーズ30分×13話を1時間半に無理やりまとめた手腕はさすが小柳先生というかなんというか。美味しい場面のダイジェストで歌舞伎の見取り狂言的な展開ではありましたが、一応うまいことまとめていたんじゃないかと思います。まあさすがに登場人物の名前や設定が覚えにくい部分はありますので、原作未見で観た方には伝わりにくい部分もあったかもしれないな、とは思いましたが、それでも「ヒロインとそれを助ける男たち」vs「ヒロインの剣を狙う悪者」という構図はわかりやすくできていたんじゃないかと思います。

 

まあ殺陣とかアクションの部分に関しては新感線好き視点で観るともっさり感があるというか、正直物足りない部分はあるんですけど、それでもこのビジュアル再現度は「さすが宝塚!」としか言いようがありません。このお衣装の再現度はもはや異常。ヘアメイクもほんと人形のまんまだし、脇キャラの下級生までお衣装がしっかり再現されていて嬉しくなりますね。立ち姿のキメ絵だともう「ありがとう!満点!」って感じです。

 

男役トップ・紅ゆずるさんの凜雪鴉については「あれ?原作もこんな喋り方だったかな?」と思わないでもないんですが、まあでも舞台で成立させるために多少芝居がかった言い回しにしたんでしょうかね。この凛雪鴉とW主演とも言うべき殤不患の七海ひろきさん、いやーカッコよかったっすねえええ。配役発表になったときに「あれ?二番手の礼真琴さんじゃなくて七海さんが殤不患?」と思ったのですが、確かにこの配役は正解ですね、どちらもそれぞれの持ち味がキャラにはまっていてよかったです。形亥役の夢妃杏瑠さんとか殺無生の麻央侑希さんとか狩雲霄の輝咲玲央さんとか、なによりヒロインの丹翡(=綺咲愛里)ちゃんのビジュアルがほんっとうにキマってて「もう!見た目だけで!満点!完敗!」と思いました。あとどうでもいいんですが悪の親玉・蔑天骸に仕える側近の美女・獵魅(有沙瞳)、あれ新感線だと確実に山本カナコさんの役だなーと思いますよね……(だから髑髏城の見過ぎだと何度言ったら)

 

先日の宙組天は赤い河のほとり」も今回の星組「Thunderbolt Fantasy」もそうなんですが、劇団さんはそろそろ小柳先生にちゃんと一本物の枠を与えて欲しいと思いますね……こういう長い物語を原作にするときはもうちょっと尺を与えてあげて、と思います。今回ももうちょっと歌やダンスの場面が無いと「ミュージカル」「歌劇」としてはちょっと正直物足りないな、と思ってしまいますからね。まあキャラが一通り揃ったところでのテーマ曲「RAIMEI」は大変良かったですが、もうちょっと各キャラに見せ場を、歌とダンスを、と思いました(まあそれやってると新感線みたいに尺がどんどん長くなっていくんでしょうけれど)(それでもヅカは最大3時間ですもんね)

 

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さてショー「Killer Rouge」は大劇場バージョンから3割くらい変更ありましたかね。紅ゆずるさん扮する客席案内係の「紅子」、礼真琴さんの「礼子」、綺咲愛里さんの「愛子」による日替わりアドリブトークの場面が5分くらいあったでしょうか。まあああいうトークで何の心配もないのはさすが紅さんというかなんというか。雪組ファンは30秒もあるかないかの望海風斗さんの日替りアドリブや月城かなとさんのルキーニ登場シーンのアドリブに「全公演アドリブ変えていく気……?大丈夫……?ネタがもつ……?」などと親心で心配してヒヤヒヤする有様なんですが、ほんとあの紅さんの安定のトーク力、みんなに少しわけてあげて……と思いますね……。

 

フィナーレの男役群舞の曲が西城秀樹の「情熱の嵐」から雪組「La Esmeralda」の曲に変更になっていて、「ウノ!ドス!トレス!クワトロ!」って掛け声が来た瞬間に思わずテンションが上がってしまったんですが。台湾では日本の歌謡曲は伝わりにくいって判断だったんでしょうかねー。その割にこれに続く「紅のマスカレード」(及川光博)はそのまま使われてたんで謎ですが。まあ好きなので良しとします。それにしても今回も礼真琴さんのキレッキレのダンスにみとれたショーでした。