ミュージカル「NINE」@赤坂ACTシアター

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出典:ステージナタリー

このミュージカル作品は映画版別所哲也さん主演のデヴィッド・ルヴォー演出版を観ていて割と好きな作品です。城田優さんはちょっとグイド役には若すぎるのではと思いつつも今回も楽しみにしていました。結論から言うととても好きな演出で面白かったです。もともと「グイド・コンティーニの精神世界と現実と映画作品のストーリーが入り混じっていく」みたいな内容で、ストーリーが捉えづらく好みがはっきり分かれる作品ではないかな、と思うのですが、今回の演出はそのへんの「現実」「グイドの脳内」「作品世界」の切り分けもわかりやすく、明確な演出がされていたんじゃないかと思います。コロナのせいか空席がちょっとあったのもったいないですね。時間とお金があればリピートしたかった(円盤は予約しました)

「ファントム」のアーサー・コピット&モーリー・イェストンによる作品ということで、楽曲がとても良いです。映画で印象的だったアゲアゲなナンバー「シネマ・イタリアーノ」が舞台では使われてなかったのがちょっと残念ではありますが、それでも物足りなさは感じないほど見応え・聴き応えのある内容でした。男性ダンスカンパニーのDAZZLEがコンテンポラリーダンスな動きで舞台空間を埋めていたのも好みの演出(ミュージカルは情報量多い演出のほうが好物なタイプです)。大きなイントレ(足場)の装置を動かしていく舞台美術も良かったですねえ。いまクレジット確認したけど松井るみさんの装置に沢田祐二さんの照明かー、納得。手堅い!

城田優さんのグイド、期待以上でした、正直こういう大人の役がハマるとは思ってなかったというか。ヒゲで少し汚してるせいか40代くらいには見えましたし。ちょうど天才と謳われた20〜30代を過ぎてスランプに陥ってる年代感が出てましたもんね。歌声もほんと数年前より太さが出てきた気がしてとてもよかったです。ルイザの咲妃みゆさん、宝塚時代からこういう「押し殺した感情」を表現させたら上手い女優さんだなあと思っていたけれど、カサノヴァとベアトリーチェの劇中劇を観てる場面の怒りの立ち姿、すごく良かったですねえ。動かないのにグイドを殺してやりたいと思うほどの強い怒りが伝わってくるの、そしてその後のガチギレの芝居、本当に良かったです。大好き。グイドの母親役の春野寿美礼さんも相変わらずのお歌の上手さ……難しそうな曲なのに軽々歌ってましたものね。さすが。ラ・フルールの前田美波里さんもあの御年で相変わらずお美しいお御足! 昨年の「ピピン」があったからそんなに驚かなかったけど、そうでなかったらびっくりしただろうなあ。

NINEのグイドって「禁欲的な少年時代にサラギーナと出会って性に目覚めた結果ヤリチンになってしまった」……みたいなイメージだったんですけど、今回の作品みてると「まだ子供のうちにサラギーナにレイプされたことによって、セックスに対する認識がバグった結果、セックス依存症になってしまった男」の話として描かれてる気がして、ちょっと目からウロコでした。愛人カルラに対する態度の二律背反ぶりがエグくて「本心から必要としてるように愛を語る」のに「結婚を迫られるとそんなつもりはなかったと切り捨てる」あたりの無自覚なバグり方がほんと、「作品の登場人物としては魅力的だけど絶対に身の回りにいたら関わりたくないタイプ」の男性でした。ルイザに対してだって愛してるのは本心なんだろうけど浮気はやめられないわけですもんね。彼の中では作品作りのためのインスピレーションなんでしょうけども。女性を愛することはできても大切にはできないあの自分勝手ぶり、ほんと関わったらボロボロになるなさやつだな…と思いました。いやー。

セリフは基本日本語でしたが、歌詞は日本語だったり英語だったりで最初は「おや?」と思いました。もともと英語とイタリア語まじりの作品だったのかな? よくみればダブル(ハーフ)の俳優さんも多くてああなるほどそういう演出意図なのかと納得しました。最初は上半分のスクリーンに映る映像と字幕、演じてる俳優さんの本体とどこを観たらいいのかと戸惑いもありましたけど(この辺の演出もたぶん賛否両論あるだろうなーという感じではありました)、だんだん慣れて気にならなくなりました。リピートすると多分最初からがっつりハマれたんだろうな!

 

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