宝塚歌劇 花組「A Fairy Tale -青い薔薇の精-/シャルム!」
明日海りおさんの退団公演。「A Fairy Tale -青い薔薇の精-」はイギリスを舞台にしたファンタジーもの。ある庭に住む薔薇の精が、お屋敷の女の子・シャーロットと恋に落ちる。だけど成長した彼女に忘却の粉をふりかけることができなかったがために、シャーロットは薔薇の精を忘れられず、屋敷の売却によって離れ離れになったふたりはそれぞれに切ない思いを抱えたまま。そして何年かが流れた後、その庭を訪れた植物学者のハーヴィーと出会った薔薇の精は、シャーロットを探し出すようハーヴィーに頼んで……といった物語。いかにも英国ファンタジーといったビジュアルの装置などメルヘンチックで美しく、これは好きな人はハマるだろうなーと思いました。個人的には、あのストーリーならもう少しスチームパンク味があればビジュアルが楽しいのに、惜しいな……、という感じでした。
続きを読む宝塚歌劇雪組「ハリウッド・ゴシップ」@KAAT
出典:論座
雪組の二番手・彩風咲奈さんの別箱主演作二作目!
一言で感想を言うなら「脚本が惜しい」作品でした。テーマもプロットもすごくいいのですが、展開に対して描写がやや雑と思える部分が多く、「いまの展開ちょっと突然すぎたけど、あとで補足するセリフとかあるのかな?」「えっ、これだけふたりのライバル関係を煽ってきたのにジェリーが自滅?」とか、気になるところが多くてちょっとモヤモヤする脚本でした。つまらなくはないんです、が、骨格が悪くないだけに「惜しい」という気持ちになりました。また、前半と後半で物語の進行方向が違うというか、なにかテーマがねじれていくような印象も受けましたし。なんというか、「物語のプロットは決まってるんだけど、前半と後半で別の人間がそれぞれの解釈で勝手に脚本を書いた」みたいな印象なんですよね……広げた風呂敷をうまくたためなかった、という気もしますし……。まあ正直脚本に関してはモヤモヤする内容ではありました。ただまぁ、1920年代のハリウッドが舞台だけあってお衣装は華やかで美しく目の保養になりますし、組子たちのキャラもたってて組ファンとしてはそれなりに見応えがありました。
宝塚歌劇雪組「はばたけ黄金の翼よ/Music Revolution!」@カルッツかわさき
「はばたけ黄金の翼よ」の初演といえば「麻実れいさんの宝塚時代のヤバさ」が語られるときに登場する作品として記憶にあるやつですね。実際にみたことはないのですが、相手役(娘役を演じる一路真輝さん)に迫るベッドシーンのエロさとか、拷問で鞭打たれる場面の倒錯感とか、断片的に解像度の低い動画で観たことはある程度の知識しかないですが、「なんだかヤバそうな演目が全国ツアーにまわってきたぞ……?」という雰囲気でした。望海さんをムチ打つ二番手枠・ファルコ役は誰がキャスティングされるのか、順当に番手通り朝美さんなのか、それとも組替え前の餞で永久輝さんなのか、とファンの間でもやいのやいのと話題にしておりましたが、発表されたキャストは「ファルコ=朝美絢」「ジュリオ=永久輝せあ」と順当に番手通りの結果となりました。原作を参照するなら、「望海さんを鞭打つのが朝美さん、左目を焼きごてで焼くのが永久輝さん」になるだろうなと。
続きを読む「ジョーカー」
宝塚星組『GOD OF STARS-食聖-/Éclair Brillant(エクレール ブリアン)』
出典:宝塚公式ホームページ
星組のトップコンビ、紅ゆずるさん&綺咲愛里さんのサヨナラ公演。現代的で祝祭感あふれるにぎやかなコメディの「GOD OF STARS」と、正統派クラシカルなレビューショー「Eclair Brillant」、とてもバランスの良い組み合わせのサヨナラ公演でしたね。楽しかったです!
まず「GOD OF STARSー食聖ー」。小柳奈穂子先生、原作なしの完全オリジナル作品は久しぶりではないでしょうか(もしかして2011年「アリスの恋人」以来……?)。「シャングリラー水之城ー」「アリスの恋人」とか、小柳先生のオリジナル作品はちょっとライトノベルっぽい雰囲気で好きだったんですよね。ここんとこずっと原作モノの潤色演出ばかり続いていたので楽しみにしていました。しかし「ミュージカル・フルコース」とか「アジアン・クッキング・コメディ」とか、やけにこってりした単語がならぶ公演概要、これが他の組の演目だったら不安しか感じませんが、紅さんならなんとかしてくれるだろうという安心感と信頼感。さすが星組です。
「ロケットマン」
エルトン・ジョンの半生をタロン・エガートンの主演で描いた音楽評伝ミュージカル映画。ノーマークな作品だったのですが、周辺でやたら評判がいいので見てきました。いやーよかった! いい作品でした。どうしてもクイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」と比較して語られることが多い感じはありますが、印象としてはまったく別物ですね。「ボヘミアン~」はどちらかといえばドキュメンタリータッチに寄った感じの映画だと思いますが、「ロケットマン」はエルトンが依存症に陥っていくあたりの酩酊する感じを含めて内面や心情をミュージカルの手法で描いた映画だったと思います。個人的には「ボヘミアン~」よりも「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」を思い出したりもしました。派手な虚飾で自分をガードしていくあたりの心情に共通するものがあったように思います。
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