劇団☆新感線「けむりの軍団」@赤坂ACTシアター

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出典:ステージナタリー

 

久しぶりの!回らない劇場の!新感線です!豊洲までいかなくていい!しかも上演時間が3時間5分!っていうそのスペック値だけでもはやうっかり満点つけたい気分になってしまっていましたが、落ち着いて私。いやまあセンターは古田さん成志さんだし、ゲスト数名出てるとはいえかなり純度の高い劇団公演だった気がしますね。

 

ストーリーは事前情報通り「隠し砦の三悪人」「走れメロス」をベースにした感じの物語。目良家・厚見家・夭願寺の三勢力が三すくみ状態の戦国時代。真中十兵衛(古田新太)は、賭場で騒ぎを起こした美山輝親(池田成志)のせいで子分たちを人質に取られてしまう。輝親を捕らえて戻らないと子分たちの命はないと脅されて賭場を出るが、政略結婚で目良家に嫁いでいた厚見家の紗々姫(清野菜名)&源七(須賀健太)を、成り行きで厚見家の城まで送り届けることになる。はたして無事紗々姫を厚見家まで連れていき、輝親を捕らえて賭場へ戻れるのか……というのが主なストーリーライン。

基本的によく出来た舞台だとは思いつつも、うまく気持ちを乗せることができなかったなあー、というのが個人的な感想です。何でこんなに気持ちがアガらなかったのかって、場面転換のたびに幕を下ろす演出があまり好きではないのですよぅ……。ついこないだ宝塚での転換幕前芝居に渋い顔をしたところだったので、「新感線よまさかお前もか……!」という気持ちになってしまいました。特に気になるのは、まだ役者のセリフが続いてるのに幕が降り始めてしまう場面もあって、「この方がセリフの後の切れ味がよくなる転換タイミングなんだろうけど、まだ芝居が続いてるのに幕を下ろすのはどうなんだ……」と思ってしまうんですよね(せめてキレのいいところで暗転させてから幕をおろして欲しい)。いのうえさんがどこかのインタビューで「ステージアラウンド東京でさんざん回ったから、もう盆も回したくはない」といった内容のことを話していたので、完全に意図的な演出であることはわかるのですが。私は新感線のあの盆や装置をうまく移動させてスピーディーに転換してくれる演出を愛していたのになあ、どうしてもこの転換だと気持ちが途切れてしまうなあ、とちょっと思ってしまいましたねえ。

しかし今までは常に「敵役」または「裏切り者」のポジションで登場していた池田成志さんが、がっつりと自身のドラマを背負ってセンターにいたのはちょっとうれしかったです。古田さんとのバディもの、って本当に新鮮でそれだけで楽しいです。劇団員の皆さんも今回はかなり登場場面が多く、久々にがっつりと「劇団公演を!観た!」という気持ちになれました。そのぶん山本カナコさんの怪我による休演がちょっとさみしかったですね。代役の宮下今日子さん、決して悪くなかったですが、それでも「ああカナコさんならこういう言い回しをするだろうなあ」という声が脳裏に浮かんで仕方なかったです。はやく回復してまた舞台で元気な姿が見せてほしいですね。

早乙女太一くんの飛沢莉左衛門、いやー相変わらず殺陣が速い!美しい!古田さんとのがっつり一騎打ち、さすがに見応えがありました。しかしこの一騎打ちをクライマックスにもってくるためなのか、あれだけ出自についてのドラマを与えられていた莉左衛門のその後がやや雑に放り投げられていた(映像でのその後のエピソード紹介で終わり)のが、ちょっとモヤッとしたりもしつつ。そもそもポジション的にはラスボス扱いではない「権力者の部下」の莉左衛門と最終決戦なのが作劇的にどうなのかなあというところもありますが、ただまあアクションの見応えという意味では大正解だけになんともかんとも。うーん。

まあそんなこんなで多少煮え切らない感想にはなってますが、なにより3時間というキレのいい上演時間のおかげで、どっちかといえば気持ちよく劇場を出られたような気がします。平日マチネに見に行っても帰りに子供のお迎え間に合う、って、ほんとありがたいんですよ……!