バーフバリ 王の凱旋


バーフバリ! バーフバリ! 王を讃えよ!

感想を簡単に言うなら上の1行です。Twitterで少しずつこの作品の感想が流れてきて、「どうやらパシリムやマッドマックス怒りのデスロードの系統の『映画館で観た方がいい映画』っぽいぞ」というのは薄々思ってたのですが、決め手となったのは「たわませたヤシの木に6人の兵士が登って、ヤシをたわませていたロープを切り落とし、6人がひとつの弾丸のように固まって高い砦を越えていく」という謎の動画でした。他にも「『マッドマックス 怒りのデス・ロード』と『ロードオブザリング』と『ラ・ラ・ランド』を足して3で割らずにカレーで煮込んだのが『バーフバリ』」というツイートがあり、「なるほどこれは……」と思い映画館に足を運びました。

正直最初は「ムトゥ 踊るマハラジャ」的な「すぐ踊る」「事あるごとに踊る」「ツッコミどころ満載」な映画なのかな、と思いながら観始めたのですが。どっちかというと王位継承争いを扱った超王道の歴史モノでしたね。ストーリーを50字くらいでまとめると多分「ライオンキング」とそんなに変わらないと思います。私に言わせると「シェイクスピアと歌舞伎と宝塚と新感線と蜷川幸雄大河ドラママハーバーラタとライオンキングとロード・オブ・ザ・リングとマイティソー3とアイーダを大鍋にぶちこんで芋煮にしたような映画だな」という印象でした。見せ方の演出がとても蜷川イズムやいのうえイズムを感じるやつでしたね。つまり歌舞伎っぽいってことでもあるんですが。美しい風景美や人海戦術アクション、王の帰還というテーマはまんまロード・オブ・ザ・リングだし、無双アクションや兄弟の確執はマイティソーバトルロイヤルを思い出すし……という感じでした。まあなんというか王道エンタメ全部乗せ感のある映画でしたね。アクションの派手な大河ドラマというか。

前作「バーフバリ 伝説誕生」はWOWOWで録画したもののまだ観てないんですが、映画冒頭で「3分でわかる前作バーフバリ」みたいなまとめ映像があるので、いきなりこの作品から見ても大丈夫だと思います。父バーフバリと子バーフバリが同じ俳優さんなので、最初しばらくのあいだ「あれっ今やってるのは前作と同じストーリー? 父のエピソード?」みたいな混乱は正直ちょっとありましたが、まあ大丈夫です。

父バーフバリと美しい女戦士デーヴァセーナの戦闘シーン、あれもう最っ高ですよね。狭い廊下で遅いかかる敵に矢を射るデーヴァセーナ、そこへ現れて三本の矢をまとめて引くバーフバリ、デーヴァセーナのイヤリングをかすめて揺らした矢が敵に刺さる……! って、この「戦闘の中でお互いに気持ちを通わせる男と女」っていう絵ヅラ、ほんといのうえひでのりさんが大好きなやつじゃないですか? 絶対にこれいつかネタものでバーフバリのパロディやるよね?って思いましたもんね。その後に白鳥の船に乗ってふたりが出港する群舞の場面なんかはまんまミュージカルで、「このまま宝塚に移植したい」と思わせるほどファンタジックでドリーミーでしたねえ。

まあそれにしても王宮のシーンの壮大さとかもそうなんだけど、戦闘シーンの派手さときたら。「国家予算でもかけましたか?」というほどのスケール感。まあ大部分はCGなんでしょうけれどそれでも相当お金かかってるんでしょうね。クライマックスの戦闘シーンなんかはもうほんと前述のヤシの木による砦越えからはじまって次から次へと畳み掛けるようなアクションアクションアクションなので、だんだん脳みそが麻痺してきますね。すごいんだかすごくないんだかわからなくなってくるほど。まあ確かにこれは大画面で見たほうがいいです。情報量の多さがダイレクトに伝わってくるというか。小さい画面だとありがたみが薄れるというか。

色々ぐっとくる場面があったんですがちょっと情報量が多すぎてひとつひとつ挙げるのが難しいですね。絶叫上映向きの映画です。もう、とにかくカッタッパを応援したい。カッタッパ大好き。そして一緒に拳をふりあげながらバーフバリ!バーフバリ!って王を称えたい。終盤、「これ本当に140分で終わるの? なんかもっと長い気がするけど」と思いながら見ていたらエンドロールがまるっとなくて本編終了のあとすぐに客電がつくという荒っぽい編集でした。インド映画だからって! それでいいの!