宝塚花組「エリザベート」@宝塚大劇場


出展:ニコニコニュース/ちけっとぴあ

兵庫への帰省のタイミングで明日海りおさんのトップお披露目公演が行われるというので、軽い気持ちで宝塚大劇場のチケットを申し込んだら、なんと端っことはいえ2列目が当たりました。わあお、と劇場に入ったところで初めてそれが最前列だということに気づいて(一番端っこのブロックは1列目が無いのですね)、「ギャー! 心の準備ができてない!」ってなりましたよね。なにせエリザベートといえばトート役があまりに美味しい役すぎて、それをご贔屓のトップさんがやるとなれば、萌えること間違い無しの演目なわけで。もうテンションがダダ上がりでした。
正直エリザベートはもう食傷気味かなってくらい見てきた気がするわけですが*1、気がつけば梅田芸術劇場で観たウィーン版以来になりますので、実に7年ぶり。まあ、久しぶりに見たらやはり面白いこと。楽曲が魅力的でアンサンブルの群舞も見応えありますので、やはりこの作品は飽きません。宝塚版は黄泉の帝王を演じるトップ男役の人外のカッコよさへの「萌え」、そしてツッコミどころ満載の「オモシロ」要素(特に振付)が、まあ絶妙なバランスで混在するんですよね。劇団☆新感線でも散々パロディになった*2「闇が広がる」のあの振付で、トートとルドルフが目の前の銀橋をわたっていく瞬間、もう萌えと笑いが沸点に達して腹筋が壊れるかと思いました。まあこの作品を見て笑いをこらえてるのはあの大劇場の中で私くらいだったかと思うんですけど。*3

なんというか、イチ演劇ファン視点でみるとウィーンのオリジナル版のほうがテーマが深くて劇構造としても面白いし演出もスタイリッシュでカッコイイし、なので、「なんだこの宝塚版の改悪は!ひどい!」「エリザベートはこんなに笑える作品じゃねえヨ!」「なんだこのだっさい演出!」とか思ってしまうのですけれど。ただ宝塚ファン視点&少女漫画脳で見ると、「うっわあ超萌える!」「小池先生は本当に女子の萌えツボをわかっていらっしゃる!」「改悪結構大歓迎!小池演出バンザイ!」って思っちゃうんですよね。ウィーン版を観た時も「すごいイイ! でも萌えが……萌えがない!」と思いましたし。宝塚版は「女子のためのエンタメ作品」へと針を振り切って突き抜けた演出なんですよねえ、あざとさもここまでくると潔いというか。もっとも最後の大階段ショーでの編曲があまりにも昭和歌謡ショー過ぎるなのは一体どうなんだ、と思わないでもないですが。オリジナルのファンが観たら卒倒しそうですよ。

今回の花組公演は主要キャストが歌える方ばかりで、とても楽しく観ることができました。不協和音が多くて音程のとりにくそうな難曲が多いミュージカルですが、歌の面でのストレスはまったくなかったです。まあやはり女声のみなので東宝版やウィーン版ほどの音域の厚みは無いのですが、十分聴き応えありました。まだ幕が開いて間もないのと最前列から見てたせいか、装置の動きが若干カクカクしたり、役者を数人でリフトする時に「せーの!」みたいな感じで持ち上げていて滑らかさに欠ける箇所もあったりしましたが、まあそのへんは今後良くなっていくはずでしょう。

明日海りおさんのトートは歌もとても安定感があり良かったです。どちらかといえば弟キャラというか少年的な印象のある男役さんだったんですが、やはりこの役になると男が上がりますね。冷酷で鋭い表情をしていて大変カッコ良かったです。少し怒った表情をするとき、瞬間的に少年ぽいふくれっつらになるのがまたちょっとギャップ萌えでもあったり。際立って個性的な解釈をしたトートというわけではないのですが、従来の宝塚版トートの王道を踏襲したといった印象でした。エリザベート役の蘭乃はなさん、フランツ役の北翔海莉さん、ルキーニ役の望海風斗さん、ゾフィー役の桜一花さんなど、メインキャストもみなハマり役と思える配役でした。ルドルフ役の柚香光さん、お歌はもうひと息という感じなんだけど*4見た目華やかでとてもきれい。

それにしても、今回のエリザはチケットは発売と同時に瞬殺、立ち見席までぎっしり、当日券には平日でも3〜400人が並ぶという超人気公演で、私のような浅くヌルい宝塚ファンがうっかり最前列なんか取ってしまって*5本当に申し訳ない、という感じでした。まあしかし細かい表情や衣装の刺繍や質感までがしっかり確認できる最前列で観る宝塚は本当に別世界ですね……正直「ヤバい、こんな神席でエリザなんか観たら沼に落ちる……!」と思いました。見てる間ほんとうに「zucca☓zucaの銀英伝シリーズ(全4話)」をトレースしてる気分でした。「なんならもう盛り上がりのピークは過ぎた」からの「どっふー!」「もう私の…ライフはゼロよ」「ものすごくエネルギー消耗する」「萌え疲れ」のセリフがずっと頭をよぎっていましたよ……。

三井住友VISAカード ミュージカル『エリザベート−愛と死の輪舞(ロンド)−』
http://kageki.hankyu.co.jp/elisabeth2014/
http://kageki.hankyu.co.jp/revue/399/index.shtml

【スタッフ】
脚本・歌詞/ミヒャエル・クンツェ
音楽/シルヴェスター・リーヴァイ
オリジナル・プロダクション/ウィーン劇場協会
潤色・演出/小池 修一郎

【解説】
 上演回数799回、観客動員数192万3千人――今や、宝塚歌劇を代表する人気ミュージカルとなった『エリザベート』を、宝塚歌劇100周年を記念し上演します。一人の少女がオーストリア皇后になったことから辿る数奇な運命に、黄泉の帝王という抽象的な役を配した独創的なストーリーから成り、美しい旋律で彩られたミュージカル・ナンバーは高い音楽性を持ち、多くの人々を魅了してきました。世界各地での海外上演に先駆け、1996年に宝塚で初演されてから、今回で8度目の上演となります。花組新トップスター明日海りおがトート役を演じる大劇場お披露目公演です。

【配役】
トート      :明日海 りお
エリザベート   :蘭乃 はな
フランツ・ヨーゼフ:北翔 海莉
ルイジ・ルキーニ :望海 風斗
ルドルフ     :柚香 光
マックス     :悠真 倫
ゾフィー     :桜 一花
ヘレネ      :華耀 きらり
リヒテンシュタイン:芽吹 幸奈
エルマー     :瀬戸 かずや
マダム・ヴォルフ :大河 凜
ヴィンディッシュ嬢:仙名 彩世

*1:東宝01年、宝塚02年、東宝04年、宝塚05年、ウィーン来日07年を観劇。他に宝塚初演96年版をDVDで。

*2:ご存知ない方はこのへんの動画をご覧になられるとよろしいかと思います。天海祐希さんと浦井健治さんが曲中で闇広の振付を踊ってます。あともっと昔にはこんなのもありましたね……5:30あたりから闇が広がってます。

*3:東宝エリザベート初見で笑いをこらえた時のレポートは実はこちらに残っています。もう13年前の記事なので今読むと恥ずかしいですが、仲間うちでは今も語り草ですね……

*4:すみません、ここは東宝初演版の井上芳雄ルドルフで曲が刷り込まれているので物足りなく感じました。井上さんの「闇が広がる」はもう奇跡的なまでに高音の伸びが綺麗でしたからねえ。

*5:ちなみにこのチケットはローソンチケットの先行抽選であたりました。前にぴあのプレリザーブ霧矢大夢さんの退団公演も最前列が当たったことがあります。いずれもはじっこのブロックですが、一般プレイガイドも意外に侮れませんね