シュガー・ラッシュ:オンライン

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前作「シュガーラッシュ(Wreck it Ralgh)」が大好きな作品だったので、今回の続編も楽しみにしておりました! 邦題はシュガー・ラッシュ:オンライン、原題は「Ralph Breaks the Internet」。ラルフ&ヴァネロペのコンビが、インターネットの世界に飛び出すという物語です。

 

以下、ネタバレありで感想書いていきますので、未見の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

ざっくりあらすじ。ヴァネロペは自分の世界「シュガーラッシュ」の展開が読めてしまうことに少し退屈気味。そんなヴァネロペのためにラルフはシュガーラッシュの一部を壊して新しいコースを作ってやるが、それがきっかけでアーケードゲームのハンドルが壊れてしまう。その部品はebayで高値で売られているものしかなく、ゲームセンターのオーナー・リトワクさんはシュガーラッシュの廃棄を決める。ラルフとヴァネロペはシュガーラッシュのハンドルを手に入れるため、Wi-Fiを通ってインターネットの世界に飛び出す。ebayでハンドルを手に入れたものの現金が無いふたりは、ゲームのアイテムを高値で換金できると知る。過激なレースゲーム「スローターレース」で女性レーサー・シャンクの車を盗もうとするが、もう一息というところでシャンクに追いつかれる。シャンクはヴァネロペのレースの腕前に感嘆し、事情を知って「面白動画を作って金にする」ことを提案。二人は動画サイトバズチューブの運営者・イエスの協力もあって無事に目標額を手に入れる。ヴァネロペはスローターレースの興奮が忘れられず、ネットの世界に残ろうとするが、いつもの世界に戻りたくてそれに反対するラルフの気持ちを、ネットに放った凶悪ウィルスが読み取ってしまい、大変なことに……といった展開。

 

前作同様、いやそれ以上にぎゅうぎゅうに小ネタがつまりまくった内容で、大変楽しかったです。ディズニーキャラやマーベルキャラ、スターウォーズの使用は自分のスタジオだからいいとして、ネットサービスの企業ロゴの使用権利の許諾とかもすごい手間かかったんだろうなーと。YouTubeはそのまま使う許可が出なかったからBuzzTubeに変えたんでしょうかね。(「ブンブンハローバズチューブ」のヒカキンの吹き替えに噴いてしまってなんだか悔しい)ディズニープリンセス大集合のくだりはディズニー渾身の自虐ネタという感じで笑ってしまいます。メリダに対して「あの子はスタジオが違うから」っていうの笑っちゃうけどなんか可哀相だろ! アイアンマンとスタンリーが並んで登場したのもちょっと胸熱でした。アイアムグルート! あとレースの女ボス・シャンクのかっこいいことったら! 仕草がイチイチ決まっていて演出最強でした。まあ悪役と見せかけて頼れる味方、になるのが早かったので終盤でもう一回くらい手のひら返すかな? と思ったんですが、そのまま味方キャラで終わりましたね。まあほんとカッコいいキャラだったのでそれでいいんですが。前作のカルホーン軍曹も大好きでしたが、シャンクもほんとカッコいい女キャラでいいですね。好き。

 

ひっきりなしに押し寄せる小ネタに興奮するその一方で、ちょっと物語のテーマが散漫になってしまった印象も正直ありますね。最終的にハンドルを手に入れるまでの冒険譚がメインかと思いきや、それは物語が6割ほど進んだところでクリアしてしまうので、おやっ?と思いました。終盤で「新しい変化を求めて広い世界に出たいヴァネロペ」と「平穏でワンパターンな生活に戻りたいラルフ」が衝突し、ネガティブになったラルフが凶悪ウィルスによってコピーされ増殖しキングコング状態になってヴァネロペを追い詰める……という展開になり、ようやく「友達でも価値観が違うことはある」「お互いの違いを尊重するべきである」という主題が明確になってきて、ああそういう物語だったのか、と腑には落ちたのですが。中盤くらいまではテーマとそのの落とし所が見えなくて落ち着かない感がちょっとありました。脚本の完成度としてはやや物足りない部分があるというか。

 

しかしこの「ラルフの肥大した自意識の具現化」の描写がかなり怖い。もはや「非モテのおっさんにネット上でストーカーされる若い女子」の構図にしか見えなくてほんとちょっとつらかったです。自らの人生を犠牲にしてラルフを止めようとするヴァネロペに「そんなおっさんのために自分を犠牲にするのはやめてぇぇ」と思ってしまいますよ……。ヴァネロペもかわいそうだし、ラルフの痛々しい姿にも「これ以上みっともない姿を大画面にさらすのはやめたげて」と思ってしまいました。あくまで表現上はふたりはバディであり、ふたりの間にあるものは「友情」なんですけれども、ラルフがヴァネロペに執着するところから急激に気持ち悪くなるのはやはり「おっさんと若い女子」のコンビだからなんでしょうね……。このへんはたぶん見る人の年齢や性別によって印象の変わるところだと思います。むしろその辺にフラットな子供たちのほうが余計な感情なしで観られそう。

 

インターネットのコンテンツを擬人化したキャラたちはネット文化にずぶずぶの人間としては大変おもしろく見ることができました。ノウズモアさんの予測変換とか、うっとおしいポップアップ広告の胡散臭さとか、「いいね!」のハートの描写とか、うんうんわかるわかる、と思いながら楽しんでいたのですが、一方で「これ5年後10年後にはどういう風に見えているのかな」というのもちょっと気になったりしました。ただでさえ流行り廃りの激しいインターネットの世界の描写、きっと10年後に初めてこの映画を見る子どもたちには伝わらない部分も多いだろうなと思いました。まあそれはそれでわからないなりに楽しく見るんでしょうけどね。

 

最終的にラルフは自分の世界へ戻り、ヴァネロペはスローターレースという新しい世界で行きていくことを決め、ラルフはその選択を尊重します。この辺の少しほろ苦い感じを残すラストは前作と共通してますかね。前作のときも「最終的に自分の役割を受け入れて生きていく」ラルフにほんの少しほろ苦い気持ちになったものでした。物語内で成長することが、社会と現実を受け入れて納得して元の場所で生きていくこと、に至るのが(アナ雪やモアナもその傾向があったけど)近年のディズニー作品の傾向である気もしてほんの少しほろ苦さを感じております。また前作ではラルフに元の世界に戻って世界の秩序を乱さないことを課しておきながら、ヴァネロペが別世界で生きていくことを良しとするのも(もともとシュガーラッシュの世界ではヴァネロペは不安定な存在であるとはいえ)なんとなくモニョるところがありました。脚本家、シリーズを通してラルフに厳しすぎない?

小ネタが楽しかったのでもう一回じっくり細かいところまで観てみたいですし個人的にはとても楽しんだのですが、前作同様に「みんな観て観て!」とゴリ押しでおすすめできるかどうか、というとちょっと微妙さが残る作品でした。

 

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