NTLive「リア王」

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出典:NTLive 日本公式Twitter

 

あのサー・イアン・マッケランの「リア王」をNTLiveで映画館上映、というからとるものもとりあえずというかんじで無理やり映画館に駆け込んできました。(川崎で終映23:50て!終電一歩手前だよ!)

作品の始まる前に今回のプロダクションについての解説があるのですが、劇場のキャパが300席程度という説明にまずしびれますよね。私でも知ってるようなベテラン俳優が出演するというのにキャパ300て! 東京芸術劇場のシアターイーストでやるようなものでしょう? あのサイズ感でイアン・マッケラン様を拝めるとか、ほんと贅沢にもほどがある。チケット取れた人がうらやましくなるやつです。

衣装は完全に現代的な洋装で目にも楽しい。老いたリア王が領地を3人の娘に分け与えようとする場面で、イギリスの地図にハサミをジャキジャキ入れてしまう演出にちょっと笑ってしまいました。今に置き換えてああやって見るとほんとちょっとおじいちゃん頭大丈夫かな、って思ってしまいます。姉娘に北部のスコットランド部分やアイルランド部分を切り与えて末娘にイングランド部分をあげようとしてるのもなんかちょっとおかしかったり。この時点でのリア王は偏屈なおじいちゃんという感じで認知症というほどボケてはいない感じの演出。しかしわかりやすく偏屈なので正直最初は姉ふたりにちょっと同情しちゃう部分もありました。あんな父親だったらたしかに面倒みるの嫌だし、そら別の姉妹の家に押し付けたくなるよなあ、と思わせる展開でした。

ゴネリルとリーガンの女優さんも素敵。冒頭では同情したくなる感じではあったけれど、中盤からはほぼヒール。感情移入どころではない悪役ぶりに惚れ惚れ。特にリーガンはキレッキレで面白かったなあ。末娘のコーディリアも根が正直なんだろうけどもうちょっとものの言い方気をつけて?それじゃあ全然伝わらないよ??というほどのはっきりした物の言い方。嫁いだあとにフランス軍の迷彩服を着る姿にちょっとハッとしたり。フランスに嫁ぐっていうことは敵対するということなのだなあと思わせる視覚化。グロスター公の次男・エドマンド役も生き生きとした悪役で素敵でした。

リア王を見るのは久しぶりで、物語の発端と大枠の展開以外はすっかり忘れて見ていたので、コーンウォールとリーガンがグロスターの目をえぐる場面の残虐さに「ひぃー!」となりました。ほぼリアルに顔を覆って指の間から画面を見るくらいの状態でしたね。屠殺場みたいなセットの場面でこれをやるからもうほんと容赦がなさすぎる。あんなんR指定無しで子供にみせていいの???(まあリア王見たがる子どもがそういるとも思えないけれども)

リア王が雨の中を放浪する場面はなんと本水の雨。もうほんとやめたげて……おじいちゃんのライフはゼロよ……な気分になってしまうやつ。ああーイアン・マッケランの体力大丈夫なのこれ……80近いおじいちゃんが毎日こんな雨に打たれて平気なの……とか、ああーきっとあのスーツめちゃくちゃいい生地なのにあんなに濡らして……とか、雑念でいっぱいになってしまう場面でした。

ケント役を女優が演じること、コーディリアを黒人の方が演じることなど、そこに意味や解釈を求めてしまうのはまだ考え方が古いんでしょうかね。多様性に配慮したキャスティングについては、もうイギリスでは一般的で特に違和感はないのかな。これまでのNTLiveでも肌の色の違う親子のキャスティングは何度かありましたからね。慣れの問題なのかな。肌の色についてはだいぶ慣れてきたような気はするんだけど、女性ケントについてはやっぱりその演出意図や効果についてちょっと考えてしまうんですが。

4時間近い上演時間でありながら始まってしまえばがっつり集中して見ていられる役者力と演出力。いやー堪能しました。あんな遅い時間でもTOHOシネマズ川崎はまあまあ客席が埋まっていて、しかも客層の良さを感じましたよね、誰も上映中にスマホみたりしないし食べ物でガサガサ言わせたりしないし。「集中して見るぞ」という観客の気合すら感じる雰囲気でした(カーテンコールが始まった瞬間、エンドロールまで見ずに席をたつ人が相次いだのも事実なのだけど、これは時間的に仕方ない……。映画館の表示では23:40終映予定になってたのにカーテンコール始まった時点で23:47だったもの……。こんな日付変わるギリギリの時間に設定するんだったらもうちょっと正確におねがいしますと思いましたよね、下手すりゃこの数分で帰れなくなる人だっているんだから)

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