「キンキーブーツ」@シアターオーブ

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出典:BWミュージカル「キンキーブーツ」 on Instagram

 

待ちに待った再演です。初演の衝撃についてはこちらに描いたとおり。前回は比較的チケット取りやすかった記憶がありますが(開幕前にはまだシアターオーブのチケットが余っていたはず)、今回はまあ激戦でしたね。可能なら通いたい、の気持ちもありましたが、雪組通いつめた直後なので、厳選した1枚のチケットだけを持って初日を待ちました。

基本的にストーリーや楽曲の変更はなく初演通りではありましたが、セリフや歌詞がもしかしたら少し変わっていたのか、あるいは役者の表現が変わったのか、初演より伝わりやすくなった部分があちこちにあるように思いました。日本初演キャストがほぼそのまま今回も登場していて、カンパニーの結束力や、キャストが感じている充実感が強く伝わってくるような、そんな再演でした。初演の新国立劇場上演の頃はちょっとおとなしめだった客席も、今回は「よぉし声出していくぜえ!」といった感じで拍手や歓声で盛り上がり(しかも作品の邪魔にならない品のいい歓声で)、舞台と客席の関係もとても良い雰囲気だったと思います。

ローラの三浦春馬くん、いやもう本当に最高ですね。今やもう日本ではこのローラ役、彼しか考えられないのではないでしょうか。このハードルを超えるのは正直難しい。初演のときも見事なダンスのキレに驚いたけれど、今回はさらにパワーアップしてきたのがちゃんとわかりました。身体のラインが前回よりメリハリがあって、めちゃめちゃ鍛えたんだな、というのがわかる筋肉。上半身にはゴツさを、下半身には美しさをプラスし、動きのキレもマシマシでした。歌も正直前回は「もう少しパンチがあれば完璧……」と思った部分もあるのですが、今回はその声量も上がって迫力がありました。終盤のソロ「Hold me in your heart」の素晴らしさよ。泣きました。「Land of Lola」で一瞬にして観客をローラの虜にするあの表情と動き、「Sex in the Heel」のキレッキレのダンスも本当に素晴らしかった。映像に残してほしい。やはり今回も「三浦くんのヘドウィグが観たい……」と思ってしまいましたし、ドラァグクイーンではない他のミュージカル作品も見てみたいですね。

そしてこの作品のもうひとりの主演、小池徹平くん。この3年で何があった!? プライベートでしんどいことでもあった!? と思ってしまうほど、表情に影が。最初に出てきた瞬間、顔の陰影にちょっとハッとしたんですよね。初演と再演で一番印象がかわったのがこのチャーリーでした。眉間のシワの溝がだいぶ深くなったのでは……。初演のときはキラキラした若い好青年がいろんな障害に立ち向かっていく話に見えたんですが、今回みるとチャーリーのエゴや身勝手さなんかの人間臭さがすごくよく出つつも、そこに共感させてくれるものがあり、すごく表現力が増したんだな、と思いました。まだひよっこの青年から、人間味のある大人の男に変化した感じがあって、とても良かったです。ストーリーが変わったわけではないのに、前回は「チャーリーが好青年でニコラは勝手な女」にみえていた部分が、今回は「自分のことでいっぱいいっぱのチャーリーのエゴに振り回されるニコラ」に感情移入できるようになっていたのも、ちょっとおもしろい変化でした。

脇を固めるキャストのみなさんもそれぞれに表現を深めたように思いました。前述のニコラもそうだし、もちろんドンも。エンジェルスのみなさんも美しさとキレが増し、本当に見応えがありました(エンジェルスみんな一回り大きくなったように見えたけど気のせい???)。あのピンヒールでだれひとり足をくじくことなく、無事に故障者を出さず大阪の大千秋楽も迎えたようで一安心です。「次の再演」を楽しみにするキャストのコメントもあったので、具体的な話が動いているんでしょうね。何年後になるのかはわかりませんが、また、パワーアップしたカンパニーに会いに行きたいと思います。素晴らしいステージをありがとうございました!